豊砲台跡

豊砲台跡

長崎県対馬市(つしまし)上対馬町、対馬の北端、韓国展望所のさらに北にあるのが、豊砲台跡(とよほうだいあと)。朝鮮半島に臨む対馬は、本土防衛の最前線で、島内にはなんと30を超える砲台が築かれて要塞化していましたが、「世界最大の砲台」といわれたの砲台の遺構がこの豊砲台跡です。

世界最大級の巨砲が海を睨んだ砲台の跡

豊砲台は、対馬北端の標高50m内外の尾根筋に昭和4年5月に起工、昭和9年3月に竣工。
ワシントン海軍軍縮条約で空母「赤城」の主砲を外すこととなり(廃艦となった戦艦「長門」、戦艦「土佐」の主砲という説も)、当時は世界最大の40.6cm(16インチ)カノン砲2門を設置したのです(後に戦艦「大和」に搭載された主砲は18インチ砲=46cm)。
砲身長18.5m、砲身重量108t、実用射程距離は30.3kmという、世界最大級の巨砲が誕生したのです。
東京湾要塞の洲崎第1砲台には「生駒」の30cmカノン砲が配備されるなど、艦船から撤去した主砲は、陸上に転用したものも多くあったのです。

豊砲台は、実戦では一度も発射することがなく、「撃たずの砲台」ともいわれていますが、日本海側の主要都市が艦砲射撃(敵艦船からの砲撃)を受けることなく終戦を迎えたのは、この頑強な豊砲台など、対馬に砲台群があったからともいわれています。

第2次世界大戦後の昭和20年10月、アメリカ占領軍の爆破班が、武装解除後に爆破していますが、鉄筋コンクリートの厚みが2m(砲塔部は3m)もあったため、完全な破壊を免れ、遺構として現存しています(巨大な砲身などは解体されて八幡製鉄所で溶解)。

現在は豊砲台跡見晴公園として園地化され、砲台入口まで車で入ることができます。
またトンネルが張り巡らされた地下も、スイッチを押すと照明が30分間点灯し、砲座、砲具庫、巻揚機室、水圧用水槽などの内部を見学することができます(30分以上見学の場合は再度入り直せばOK)。

ちなみに豊砲台から朝鮮半島までは朝鮮海峡を隔て54km、福岡までは対馬海峡を隔て162kmの距離です。
豊砲台跡の沖合にある三ツ島(韓国に最も近い日本の島)にある三角点(北緯34度43分25.0820秒、東経129度26分39.3338秒)は、九州最北にある三角点。

国境の島・対馬には豊砲台を筆頭に、棹崎砲台、姫神山砲台、城山砲台、芋崎砲台、西泊砲台などの遺構が残されています。

豊砲台跡
名称 豊砲台跡/とよほうだいあと
所在地 長崎県対馬市上対馬町豊
関連HP 対馬観光物産協会公式ホームページ
電車・バスで 対馬空港からタクシーで1時間40分、厳原港からタクシーで2時間、比田勝港からタクシーで20分
ドライブで 対馬空港から約69km、厳原港から約80km、比田勝港から約8km
駐車場 あり/無料
問い合わせ 対馬市上対馬観光物産事務所 TEL:0920-86-4839
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

韓国展望所

韓国まで50㎞という上対馬町は、日本海を隔てて朝鮮半島を望む国境の町。その名の通り、晴れていれば遠く韓国を眺める展望地が、鰐浦地区の高台にある韓国展望所。韓国の古代建築様式を取り入れた展望台が建っています。標高は71.0mとさほどではありま

姫神山砲台跡

姫神山砲台跡

長崎県対馬市美津島町、国境の島・対馬の東岸の高台にあるのが、姫神山砲台跡。ロシア艦隊の来航に備え、明治34年11月に竣工し、日露戦争開戦時には28㎝榴弾砲(りゅうだんほう)6門が備えられた砲台の跡です。対馬要塞でも最大級の規模で、南東側の対

城山砲台跡

城山砲台跡

長崎県対馬市美津島町、対馬にある天智天皇6年(667年)に築城された古代山城の金田城(かなたのき/国の特別史跡)の城郭の一角に、日露戦争に備えて明治34年に築かれた砲台の跡が城山砲台跡(じょうやまほうだいあと)。山上までの道は、砲台構築時に

豆酘崎砲台

豆酘崎砲台跡

日清戦争直前の明治20年代から、終戦までの間、日本海に浮かぶ対馬(長崎県対馬市)は、高台に砲台が築かれ、島全体が要塞化していました。島の南端部、豆酘崎(つつさき)に築かれた砲台の遺構が、豆酘崎砲台跡。昭和11年11月に起工、昭和14年1月竣

棹崎公園(棹崎砲台跡)

棹崎公園(棹崎砲台跡)

長崎県対馬市上県町、対馬の北部、「日本最北西端の碑」が立つ棹崎(さおざき)背後の高台に整備されるのが棹崎公園。断崖の上に建つ現在の対馬棹埼灯台は、昭和13年3月に設置された棹崎砲台の跡。豊砲台、城山砲台、姫神山砲台などとともに対馬要塞の対馬

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

ABOUTこの記事をかいた人。

アバター画像

日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ