越後・塩沢と聞いて、越後上布(えちごじょうふ)、紬(つむぎ)と答える人は、かなりの織物ツウ。古来、塩沢といえば織物の町。越後上布は、奈良の正倉院にも保管されているという歴史ある織物で、な、なんと、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。そんな塩沢の織物を学ぶべく、酒井織物にお邪魔しました。
「越後上布と塩沢紬は、何が違う!? まずはそこから始めましょう」
「本来は、取材は受け付けないんだけど、今回は特別」(事前打ち合わせの際の酒井武社長の言葉)とのことで、取材班一行15名は、酒井社長のわかりやすい解説に、じっくりと耳を傾けたのです。
「まず、有名な越後上布は、麻の織物です。そして塩沢紬は絹織物。その違いをおわかりいただきたい!」
こう、酒井社長は切り出します。
国の重要無形文化財にも指定される越後上布の条件は、
一、すべて苧麻(カラムシ)を手うみした糸を使用すること。
二、絣模様を付ける場合は、手くびりによること。
三、いざり機(ばた)で織ること。
四、しぼとりをする場合は、湯もみ、足ぶみによること。
五、晒(さら)しは、雪晒しによること。
簡単にいえば、カラムシ(中世の越後国は日本一のカラムシの産地)の植物繊維を、手作業で細い繊維状に加工。
それをいざり機で織るのが越後上布なのですが、糸が細ければ細いほど薄く高級な越後上布に仕上がるということに。
「細い糸を作るには、根気と熟練の技が必要なんですが、もうそんな糸を作れる人がほとんどいなくなって・・・」
と徐々に幻になりつつあるのがこの越後上布です。
「雪は縮(ちぢみ=縮織の越後上布が越後縮)の親といふべし」とは、江戸時代の随筆家で江戸に雪国の暮らしを紹介した『北越雪譜』(ほくえつせっぷ)の著者、鈴木牧之(すずきぼくし)の言葉。
越後上布は、織り上がった反物を、最後に雪晒しをして漂白するという雪国ならではの工程で完成するのです。
1反1000万ともいう超の付く高級品のため、需要も少なく、酒井織物も普段織るのは絹織物。
国の伝統的工芸品に指定の塩沢紬(縦糸に生糸・玉糸を、横糸に真綿手紡糸を使用する織物)と本塩沢(生糸を使用し、横糸に強い撚りを掛け、織り上り後に湯もみによって撚りが戻る力を利用して「シボ」と呼ばれる風合いを生み出す織物)、夏塩沢(越後上布の技術を活かして織る、シャリ感のある涼感あふれる夏用の織物)の違いをマスターしました。
酒井社長の熱心な解説を聞いたのち、生糸の釜茹での工程(3時間ほど煮て、余分な成分を落とし、糸のツルツル感を引き出します)を見学。
さらに2階に上がって実際の工程(図案、染、織りなど)を見学しました。
ちなみに、酒井織物は、昭和8年創業。
最盛期には塩沢に45軒ほどあった織物工場も、現在は9軒のみ。
しかも従業員を雇うのは、酒井織物のみとなっています。
酒井織物 | |
名称 | 酒井織物/さかいおりもの |
所在地 | 新潟県南魚沼市塩沢41-2 |
関連HP | 酒井織物公式ホームページ |
電車・バスで | JR塩沢駅から徒歩10分 |
ドライブで | 関越自動車道塩沢石打ICから約7km |
駐車場 | あり/無料 |
問い合わせ | 酒井織物 TEL:025-782-0078/FAX:025-782-4314 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
取材協力/酒井織物、新潟県観光協会、雪国観光圏
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