鬼の舌震

島根県奥出雲町を流れる斐伊川(ひいかわ)の上流、大馬木川(おおまきがわ)の2kmにわたる大峡谷が鬼の舌震(おにのしたぶるい)。粗粒黒雲母花崗岩(そりゅうくろうんもかこうがん)の侵食によって誕生したV字谷で、国の名勝・天然記念物に指定されています。平成25年には「舌震“恋”吊橋」も完成しています。

奥出雲町にある奇勝には、サメと女神の伝説も

鬼の舌震は黒雲母花崗岩地帯にあるV字峡谷。
断層節理(岩盤の亀裂に沿って割れること)に沿って侵食が進んだために、節理面そのものの崖は、大天狗岩や小天狗岩などの岩壁に、そして谷底には崖から崩れ落ちた亀岩、畳石などの巨礫が累々と横たわっています。
河底には水の流れによって生み出される大小の甌穴群もあり、国の名勝および天然記念物、そして県立自然公園に指定されています。
渓流には特別天然記念物オオサンショウウオが棲息し、周辺の森はキセキレイやヤマガラなどの野鳥の住処(すみか)に。

河岸には遊歩道が整備され、下流側の宇根駐車場から上流側の下高尾駐車場まで全道がバリアフリー化されています。
宇根駐車場から下高尾駐車場を目指して歩けば、烏帽子岩、雨壺、子天狗岩、人面岩、鬼の落涙岩、はんど岩、畳岩、舟岩剣岩、大天狗岩、屏風岩、試刀岩、千畳敷と奇岩が連続(所要1時間30分)。
人面岩と鬼の落涙岩は、小岩が水流で花崗岩に穴を開けた甌穴(おうけつ)が人や鬼の目のように見える岩です。

鬼の舌震という風変わりな名前は、この地に住んでいたという女神・玉日姫命(たまひめのみこと)の伝説に由来します(奈良時代編纂の『出雲国風土記』に記載)。
その玉日女命を和仁(ワニ)が慕い、日本海から斐伊川を遡って夜な夜な通いましたが、それを嫌った玉日女命は巨岩で川をせき止めて阻んでしまいます。
和仁(ワニ)は一層激しく姫を恋い慕い、「和仁(ワニ)が慕った」(「和仁のしたぶる」)のが「鬼の舌震」に転訛したというもの。
山陰ではサメのことをワニというので、サメと女神の伝説ということに。

地元・島根県では、和仁はサメのことだとされていますが、4世紀に朝鮮半島・百済から日本に漢字と儒教を伝えたという王仁(わに)という可能性(つまりは帰化人)や、古代豪族である和珥(わに=その末裔が和仁氏)という可能性もあるのかもしれません。

鬼の舌震
名称 鬼の舌震/おにのしたぶるい
所在地 島根県仁多郡奥出雲町三成
関連HP 奥出雲町観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR出雲三成駅からタクシーで15分
ドライブで 中国自動車道東城ICから約59km
駐車場 宇根駐車場(無料)、下高尾駐車場(無料)
問い合わせ 奥出雲町観光協会 TEL:0854-54-2260
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
鬼の舌震・人面岩

鬼の舌震・人面岩

島根県仁多郡奥出雲町、斐伊川(ひいかわ)支流・大馬木川(おおまきがわ)沿いに延長2kmにわたって続く大渓谷が、鬼の舌震(おにのしたぶるい)。渓谷途中にあるのが人面岩で、花崗岩が浸食によって人の顔のような姿に。目の部分は小石が回転してできた甌

鬼の舌震・鬼の落涙岩

鬼の舌震・鬼の落涙岩

島根県仁多郡奥出雲町、斐伊川(ひいかわ)支流・大馬木川(おおまきがわ)沿いに延長2kmにわたって続く大渓谷が、鬼の舌震(おにのしたぶるい)。渓谷途中にあるのが鬼の落涙岩で、花崗岩が浸食によって鬼の顔のような姿に。そして水流が涙のように見える

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ