千葉県木更津市にある浄土真宗の寺、證誠寺(しょうじょうじ)。かつては、寺子屋として名高く、住職が庶民に読み書きを教えていました。そんな證誠寺に伝わるのが「日本三大狸伝説」にも数えられる『狸ばやしの伝説』で、童謡『証城寺の狸囃子』はその伝説がモチーフになっているのです。
「狸ばやしの伝説」は日本三大狸伝説のひとつ
JR木更津駅西口から600mほど、證誠寺は矢那川沿いの市街地に位置しているにもかかわらず、松や杉、檜などが生い茂った趣深い寺です。
『狸ばやしの伝説』は、月夜の晩に和尚さんとおはやしの競争をして、ついには腹の皮が破れて死んでしまった大狸のおかしくも哀れな伝説で、群馬県館林市茂林寺の『分福茶釜』、愛媛県松山市の『八百八狸物語』と並んで、「日本三大狸伝説」のひとつとして語りつがれています。
證誠寺は江戸時代初期の創建で、木更津では唯一の浄土真宗の寺(木更津市内寺院の半数以上が真言宗)。
当初は上方から海を渡ってやってきた海運関係者や商人が檀家になっていたとのこと。
雅楽などを用いた法要が村人たちの耳に不思議に聞こえて話題になり、いつしか『狸ばやしの伝説』が生まれたのではないかと推測されています。
大正14年、童謡『証城寺の狸囃子』発表
證誠寺を證城寺として、童謡『証城寺の狸囃子』(しょうじょうじのたぬきばやし)が発表されたのは大正14年のこと。
作詞・野口雨情、作曲は中山晋平という黄金コンビです。
明治38年、證誠寺門徒の松本斗吟(もつもととぎん)が地元の文芸誌『君不去』(きみさらず)にこの伝説を紹介。
大正8年、木更津町(現在の木更津市)と君津郡の教育委員会の招きで木更津の講演会に招かれた詩人・野口雨情は、ここで證誠寺の『狸ばやしの伝説』を知り、木更津尋常高等小学校発行の雑誌『きさらつ』第七号に『証誠寺の狸囃』としてまずは発表。
児童雑誌『金の星』大正13年12月号で再度発表(『証城寺の狸囃』)、その詩に中山晋平が曲を付けて大正14年1月号に童謡となったのです。
昭和4年、『証城寺の狸囃子』(日本ビクター蓄音器)として平井英子が歌い、ヒットしたことで一躍有名に。
本来は證誠寺なのに、なぜ証城寺となったのかは、あくまでも架空であることを強調したため、寺の和尚がタヌキと一緒に踊るのはけしからんという批判を考慮して名を換えたなど諸説あり定かでありません。
雑誌『きさらつ』発表時点では『証誠寺の狸囃』だったものが、『金の星』の段階で『証城寺の狸囃』となっているのは、イージーなミスなのか、意図的なものなのか。
うっかりミスという可能性も捨てきれません。
童謡『証城寺の狸囃子』 歌詞
證 證 證城寺
證城寺の庭は
ツ ツ 月夜だ
皆(みんな)出て 來い來い來い
己等(おいら)の友達ァ
ぽんぽこ ぽんの ぽん
負けるな 負けるな
和尚さんに 負けるな
來い 來い 來い
來い 來い 來い
皆出て 來い來い來い
證 證 證城寺
證城寺の萩は
ツ ツ 月夜に 花盛り
己等は浮かれて
ぽんぽこ ぽんの ぽん
證誠寺(木更津市)に伝わる『狸ばやしの伝説』とは!? | |
所在地 | 千葉県木更津市富士見2-9-30 |
関連HP | 證誠寺公式ホームページ |
電車・バスで | JR木更津駅西口から徒歩5分 |
ドライブで | 東京湾アクアライン木更津金田ICから約6km |
駐車場 | 門前駐車場(26台/無料)、證誠寺会館駐車場(26台/無料) |
問い合わせ | 證誠寺 TEL:0438-22-2018 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |