湯島天神

合格祈願で有名な学業の神、菅原道真を祀る通称「湯島天神」。正式名は湯島天満宮ですが神社の公式HPも今や「湯島天神」に。創建は5世紀半ばとも伝えられますが、1478(文明10)年、太田道灌が再建、家康が崇敬したことで学者・文人が参拝。5代将軍徳川綱吉が湯島聖堂を移し、一層当地が文教の中心として栄えるようになったとか。

南北朝時代に菅原道真を祭神に合祀

湯島天神・絵馬
湯島天神・絵馬

社伝によれば、雄略天皇2年に勅命により天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと)を祀る神社として創建されたと伝えられますが、西暦に直すと458年ということで、まさに神代(かみよ)の時代で、神話の世界。
南北朝時代の1355(南朝=正平10・北朝=文和4)年、菅原道真を勧請して合祀しています。
明治維新以前の神仏習合時代には、上野の寛永寺が別当(神社を管理するために置かれた寺)で、喜見院(明治維新で廃寺/現・心城院=湯島聖天)がその任に就いていました。

祭神は、力の神、スポーツの神として信仰されるパワフルな男神・天之手力雄命(あめのたぢからをのみこと)、学問の神様である菅原道真公(すがわらのみちざねこう)。

本殿、拝殿、幣殿は平成7年の再建で、総檜でつくられた威風堂々たる権現造り。表鳥居は、1667(寛文7)年建立で、都の有形文化財。

境内では梅園の白梅の美しさも名高く、宝物殿では江戸時代の富くじ箱や横山大観による絵馬などを展示。
毎月25日が天神様の縁日で、1月25日が初天神、5月25日が例大祭となります。
大祭では神輿や神楽奉納が行なわれるますが、2年に一度の神幸祭では、神輿や鳳輦(ほうれん)をくり出して歩く行列が総勢300人にもなり、圧巻。

湯島天神
湯島天神

男坂、女坂を上って天神様に祈願!

平成17年には「講談高座発祥の地」碑も建立されています。
湯島天神の境内で活動していた講談師・伊東燕晋(いとうえんしん)が1807(文化4)年、徳川家康の偉業を語る際に、高さ3尺の高座を設けたことが高座の始まりなのだとか。それまでは、粗末な小屋で聴衆と同じ高さで演じられていたのです。講談師で人間国宝・一龍齋貞水の建立。

湯島天神は、泉鏡花『婦系図』(『婦系図 湯島の白梅』などのタイトルで6度映画化)と『湯島詣』、荒俣宏『帝都物語』の舞台にもなっています。
『婦系図』では、湯島天神で主人公・お蔦と主税の別れの場面で、お蔦が天神男坂を下り、弁天様(心城院)におみくじを引きに行く場面があります。
昭和17年に、里見惇らが建立した泉鏡花の「筆塚」が唐門近くに配されています。

また、平岩弓枝『御宿かわせみ2』の「迷子石」の冒頭に、「湯島天神の別当寺、喜見院の境内に、奇縁氷人石というのがあった」と記されています。現在、この「奇縁氷人石」(きえんひょうじんせき=通称「迷子石」)は湯島天神境内にあります。
「奇縁氷人石」は、子供が迷子となった時、子の名を書いた紙を右側「たつぬるかた」に貼って探し、迷子がいた時、その子の特徴を書いた紙を左側「をしふるかた」に貼って知らせた「迷子しらせ石標」。
湯島天神境内にあるこの「迷子石」は、1850(嘉永3)年10月、江戸で初めて設置された歴史ある石。手水舎近くの梅園にあるのでお見逃しなく!

湯島天神
湯島天神・男坂
湯島天神
湯島天神の富くじ発行と「江戸の三富」
吉宗の治世だった享保年間(1716年〜1735年)以降、江戸では寺社に富くじ(「富籤」)の発行が許されました。現在の宝くじのようなシステムで、高額当選者には冥加(みょうが)として若干を奉納させ、売上額から当選者に渡す「褒美金」と興行費用とを差し引いた残高が興行主の収入となる仕組みです。1730(享保15)年、護国寺で始まり、目黒・滝泉寺(目黒不動)、湯島天満宮(湯島天神)、谷中・感応寺(現・天王寺)は「江戸の三富」と呼ばれるほど盛んとなりました。江戸では、牛込・寶泉寺、増上寺などでも行なわれました。価格は1朱(1両の分16の1)から1分(1両の4分の1)、当たりは当初100両でしが、後には1等「突き留め」が1000両、2等「二番富」が500両と、高額になりました。その後、富くじは、「富籤」、「富突」、「突富」、「富」などと呼ばれて隆盛しますが、「天保の改革」で、世上の風紀に関わるとして、1842(天保13)年に水野忠邦が突富興行を一切差止して途絶えました。復活したのは第二次世界大戦末期の昭和20年7月。「勝札」として発売されました。これが戦後の宝くじのルーツとなっています。

湯島天神(湯島天満宮)のおもな年中行事

1月1日=元旦祭・初詣/善男善女が参拝し、新年を多幸を祈念します
成人の日=成人祭/成人を迎える人たちの活躍と安寧、健康などを祈願
1月25日=初天神祭(鷽替え神事)/15:00〜木鷽(木彫りのウソ)を新しい「鷽」と取り替える神事。凶事を嘘(ウソ)にして幸運に替える開運、除災招福のお守りとして授与されます
2月3日=節分祭/豆まきが行なわれます
2月上旬〜3月上旬=梅まつり/境内が梅の香りに包まれます
5月25日=例大祭/大祭行事は直近の土・日曜に執り行なわれます
6月30日=夏越し大祓式(茅の輪くぐり神事)/17:00〜半年間、知らず知らずのうちに積もった罪と穢(けがれ)を形代(かたしろ)に託して祓います。茅の輪の設置期間は6月10日〜20日頃
11月1日〜11月23日=菊まつり/見事な菊人形や菊花が展示されます
11月15日=七五三祝祭/子供の健やかな成長を祈願します
12月25日=納天神祭/年の瀬に行なわれる最後の天神様の縁日です
12月26日=歳の市/お正月用品を販売する吉例の「歳の市」
12月31日=師走大祓式・除夜祭/17:00〜師走大祓式では、半年間、知らず知らずのうちに積もった罪と穢(けがれ)を形代(かたしろ)に託して祓います

湯島天神の梅
2月には梅も開花
湯島天神梅まつり
梅まつりには様々な行事が

江戸切絵図に見る湯島天神

江戸切絵図・湯島天神
湯島天神
名称 湯島天神/ゆしまてんじん
所在地 東京都文京区湯島3-30-1
関連HP 湯島天神公式ホームページ
電車・バスで 東京メトロ千代田線湯島駅から徒歩2分
ドライブで 首都高速神田橋ランプから約2.6km
駐車場 周辺の有料駐車場を利用
問い合わせ 湯島天神 TEL:03-3836-0753/FAX:03-3836-0694
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
江戸時代に大流行の宝くじ

【知られざるニッポン】vol.52 江戸時代に大流行の宝くじ(富くじ)

2020年2月7日
湯島天神『文京梅まつり』

湯島天神『文京梅まつり』

2020年1月8日
文京菊まつり

湯島天神『文京菊まつり』|東京都文京区|2024

2019年10月27日
五條天神社

五條天神社

2018年8月21日

亀戸天神社

2017年2月12日

広重の浮世絵に描かれた湯島天神

2017年1月7日

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ