大手町のビル街のなかにひっそりと眠っているのが将門塚(しょうもんづか)と通称される平将門(たいらのまさかど)の首塚。もともと神田明神の祀られていた地でもあり、東京を代表するパワースポット。江戸時代には江戸城・大手門を守る酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)の上屋敷跡で、有名な「伊達騒動」の終末の地にもなっています。
京の都からここまで将門の首が飛んできた!?
平将門は平安中期(10世紀前半)、関東で覇権を有した豪族。桓武天皇から出た桓武平氏の中心となる武将です。
父・平良将(たいらのよしまさ)は、宇多天皇の勅命で平姓を賜与され、898(昌泰元)年、上総介に任じられた祖父・平高望とともに坂東に下向。
その子・将門の時代に平氏一族の抗争が関東で発生。平将門は関東一円に勢力を及ぼし、ついに朝廷である朱雀天皇に対抗して「新皇」を自称するように。
東国の独立を標榜したことによって、遂には朝敵となるのですが、2ヶ月足らずで藤原秀郷、平貞盛らにより討伐されています(承平天慶の乱)。
将門の首は平安京まで送られ、都大路で晒されましたが、伝承ではこの首が江戸に飛び去り、この地(武蔵国豊嶋郡芝崎村)に落ちたのだとか。
その後、芝崎村では長らく将門の怨霊に苦しめられてきたのですが、1307(徳治2)年、時宗の僧・他阿(たあ)が、将門に「蓮阿弥陀仏」の法名を贈って首塚の上に自らが揮毫した板碑を建立しています。
関東大震災によって損壊し、その後大蔵省の仮庁舎の建設で、将門塚と称した塚、御手洗池と呼ばれる池は失われています。
現在は「都指定旧跡 将門塚」となって、東京都教育委員会が土地を所有しています。
将門の怨念で工事が二度も中止に!?
まず、関東大震災後の首塚跡地に大蔵省の仮庁舎を建設する際、建設関係者(屋橋営繕局工務部長・武田政務次官・荒川事務官ら計14人)に足の怪我が相次ぎ、時の大蔵大臣・早速整爾(はやみせいじ)が、就任3ヶ月にして病没など「不審な死」を遂げています。
大蔵省は、省内の動揺を抑えるため仮庁舎を取り壊わし、昭和2年4月27日に大鎮魂祭を行なっています。
さらに、将門没後1000年目にあたる昭和15年6月20日、大蔵省本庁舎が落雷により炎上。
次に、第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が周辺の区画整理を行なう際に、事故が多発したため中止に。
というわけで、現在では、東京都教育委員会が所有し、近隣の企業が参加した「史蹟将門塚保存会」が設立され、維持管理がされています。
昭和45年、史蹟将門塚保存会などの手によって、現在の墓碑的な姿になりました。
築土神社、神田明神、日輪寺のルーツでもある
千代田区九段に鎮座する築土神社(つくどじんじゃ)は、940(天慶3)年、平将門の首(頭蓋骨や髪の毛)を祀って津久戸村(上平川村/現:将門塚付近)に創建されたと伝えられる古社で、現在も将門を祭神にしています。
神田明神(神田神社)も将門を祀っていますが、社伝では、730(天平2)年、武蔵国豊島郡芝崎村に入植した出雲系の氏族が建立したとされ、14世紀初めに疫病が流行した際に、将門の霊を合祀したとしています。江戸城の増築まではこの地にあって、神田とは、神宮(伊勢神宮)の御厨(みくりや=神田/かんだ)に由来する社名とか。
台東区にある日輪寺も、将門に「蓮阿弥陀仏」の法名を贈った時宗の僧・他阿が、天台宗から時宗に改宗して時宗の念仏道場としたと伝えられます。
築土神社、神田明神、日輪寺などがあったことから推測すると、江戸湾の海岸に位置したこの地は、古くから開け、首塚と称するものも古墳ではないかと思われます。
大河ドラマ『樅ノ木は残った』の殺傷事件現場がここ!
将門塚のある場所は、江戸時代、酒井雅楽頭の上屋敷の中庭にあたります。山本周五郎の歴史小説で、NHK大河ドラマ(昭和45年放送)にもなった『樅ノ木は残った』の原田甲斐(大河ドラマでは平幹二朗が好演)の刃傷事件の舞台となったところです。
一般には「伊達騒動」(だてそうどう/寛文事件)として知られる事件で、仙台藩3代藩主・伊達綱宗(大河ドラマ:尾上菊五郎/当時は尾上菊之助)が遊興放蕩三昧で、吉原通いで藩政を顧みないため重臣たちの権力闘争に発展という話。
大老・酒井忠清邸(酒井雅楽頭上屋敷/大河ドラマ・酒井雅楽頭:北大路欣也)で行なわれたのが二度目の審問。
大目付らを前にして、伊達宗重(だてむねしげ=伊達安芸/大河ドラマ:森雅之)と伊達宗倫(だてむねとも=伊達兵部/大河ドラマ:佐藤慶)の両者から事情聴衆する直前、控え室で原田甲斐(平幹二朗)は、なんと伊達宗重を斬殺してしまいます。
この事件は、歌舞伎『伽羅先代萩』として江戸市中に知られ、さらに大河ドラマ『樅ノ木は残った』で全国区の歴史劇となっているのです。
その事件現場が、ここ!
古地図&絵図に見る将門塚(酒井雅楽頭上屋敷)
将門塚(平将門の首塚) | |
名称 | 将門塚(平将門の首塚)/しょうもんづか(たいらのまさかどのくびづか) |
所在地 | 東京都千代田区大手町1-2 |
関連HP | 東京都千代田区観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | 東京メトロ東西線・都営三田線大手町駅から徒歩2分。JR東京駅から徒歩10分 |
駐車場 | なし/周辺の有料駐車場を利用 |
問い合わせ | 千代田区観光協会 TEL:03-3556-0391 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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