立山(雄山)

「神の立つ山」立山は白山、富士山と並ぶ日本三大霊山に数えられ、立山修験(たてやましゅげん)と呼ばれる山岳信仰の場。立山信仰では浄土山は「過去」、雄山(立山)は「現在」、別山は「未来」でこの3つが立山三山。立山連峰で最高峰は、雄山の北にそびえる大汝山(おおなんじさん/3015m)ですが、主峰は雄山です。

一ノ越から登る道が「立山登拝道」

深田久弥の『日本百名山』にも選定の立山。
深田久弥は、『太刀(剱)を立ちつらねたようなさまであるから「たちやま」と名づけられた』のだから、越中に赴任した万葉歌人・大伴家持のいう立山とは、剣岳のことと類推していますが、立山は、「切り立つ山」、そして「神が立つ山」なので、雄山を主峰とする立山連峰というのが正解。

立山連峰の主峰、雄山は標高3003mで、雄山の右肩にあたる部分が一ノ越。雄山山頂へは、室堂ターミナルから一ノ越を経由する登り2時間30分、下り1時間30分の登山コースがあり、人気の高いルートです。

室堂平から一ノ越を経て雄山に登頂するのが宗教登山時代からの「立山登拝道」と呼ばれるメインルート。
「日本アルプス」の命名者であるウィリアム・ゴーランド(William Gowland)も明治12年にこの「立山登拝道」を使って雄山に登頂しています。
往時は、千手ヶ原、弘法坂、美女平、弥陀ヶ原、天狗平、室堂平と、足で登り、室堂で1泊して雄山に登拝していました。
現在は、立山黒部アルペンルートが通じており、室堂ターミナル(標高2450m/日本最高所の駅)を起点に登山をすることができます。
つまり標高差は、550mほどしかありません。

夏山なら初心者でも安全に登ることが可能(先行登山者の落石などに注意が必要)。
また、一ノ越までの間に8月までなら雪渓が残るので、雪の多い季節や年なら軽アイゼンなどの携行もおすすめです。

ただし、夏でも山頂の気温は15度くらい、山の天気は急変しやすいので、充分注意を。
そして装備と足回りはしっかりと。
途中、一ノ越(標高2700m)に「一の越山荘」が営業し、山小屋の前に公衆トイレ(有料)もあります。

夏とはいえ3000m峰だから疲労凍死の危険もあるから霧などで天候が悪い場合には登山を断念してミクリガ池一周コース、あるいは室堂平から天狗平へと下る水平歩道を歩きましょう。

雄山山頂から御前沢氷河を眼下に!

残雪の雄山と後立山連峰
後立山連峰から昇る日の出

雄山の頂には雄山神社の社務所が建ち、一等三角点「立山」も設置されています。
明治の神仏分離、廃仏毀釈で神社になっていますが、明治以前の神仏混淆(しんぶつこんこう)時代には、立山大権現が祀られていました。
浄土山=阿弥陀如来(過去)、雄山=釈迦如来(現在)、別山=弥勒菩薩(未来)を重ね合わせて、立山三山とし、室堂の地獄と浄土を対比させるという仏教哲学を具現化した場所だったのです。

現在は、雄山神社となり、立山頂上峰本社、芦峅中宮祈願殿(あしくらちゅうぐうきがんでん)・岩峅前立社壇(あしくらまえだてしゃだん)の3社殿にわかれていますが、雄山山頂が本社です。
お守り、お札、記念バッジなどを授与してもらえます。
701(大宝元)年、越中の国司・佐伯宿禰の子、佐伯有頼が開いたという立山ですが、文武天皇の勅命により開山されたという霊峰立山の現在に至る信仰的な中心がこの雄山神社です。

雄山の西側斜面には山崎圏谷(山崎カール)が!

室堂から眺めた立山連峰

雄山の西側斜面(室堂平側)にある大きな丸い谷は、山崎圏谷(山崎カール)。
明治時代に山崎圏谷を見た地理学者・山崎直方は、日本に氷河があったことを類推したのです。

雄山の東側斜面(黒部峡谷側)にある御前沢の雪渓は富山県立山カルデラ砂防博物館の研究チームの調査により剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓と同様に氷河であることが確認されています。
極東アジアではこれまでカムチャッカが南限とされていたので、「立山氷河」(御前沢氷河)は大発見(氷河=重力によって長期間にわたり連続して流動する雪氷体)。
眼下に見える日本唯一の氷河をじっくりと見学しましょう。
一帯は、立山黒部ジオパークの立山・剱岳ジオサイトになっています。

山崎圏谷(山崎カール)
飛騨山脈を調査したイギリス人鉱山技師のウィリアム・ゴーランド(William Gowland)は、明治14年に「Japanese Alps」(日本アルプス)という表現を初めて使っています。
ゴーランド(ガウランド)は、飛騨山脈(現・北アルプス)にヨーロッパアルプスに似た何かを感じたに違いありません。
明治35年、地理学者・山崎直方は、『地質学雑誌』にて論文「氷河果たして本邦に存在せざりしか」を発表。
さらに明治38年に立山を実地踏査して圏谷(カール)などの氷河地形を確認しています。
昭和17年、山崎が見つけた圏谷が山崎圏谷と命名され、昭和20年2月22日に立山の山崎圏谷(たてやまのやまさきけんこく)として国の天然記念物に指定されています。
山崎カールは立入禁止ですが、室堂平一帯、ミクリガ池北のエンマ台展望所などから眺望できます。
立山はまさに日本の氷河研究の出発点だったのです。


立山(雄山)
名称 立山(雄山)/たてやま(おやま)
所在地 富山県中新川郡立山町立山頂上
関連HP 立山町公式ホームページ
立山黒部アルペンルート公式ホームページ
電車・バスで 富山地方鉄道立山駅から立山開発鉄道立山ケーブルカーで7分、美女平駅下車。立山高原バスに乗り換え50分、室堂ターミナル下車、徒歩2時間で雄山山頂
ドライブで 北陸自動車道立山ICから約25kmで立山駅駐車場
長野自動車道安曇野ICから約40kmで扇沢駐車場
駐車場 立山駅駐車場(900台/無料、混雑時は臨時駐車場を600台/無料を開設)
扇沢駐車場(350台/有料、230台/無料、混雑時は臨時駐車場を600台〜800台/有料を開設)
問い合わせ 立山町商工観光課 TEL:076-462-9971
立山黒部貫光株式会社 TEL:076-432-2819
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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