7つの泉質が楽しめる鳴子温泉、実は活火山「鳴子」だった! 噴火の危険は!?

活火山「鳴子」

宮城県大崎市、栗駒国定公園内に湧く、鳴子温泉。福島県の飯坂温泉、宮城県の秋保温泉とともに奥州三名湯にも数えられる鳴子温泉ですが、実は「鳴子」として気象庁・火山噴火予知連絡会が認定する活火山111ヶ所のひとつに数えられています。活火山であるがゆえに7種もの温泉が湧出することに。

火口湖である潟沼を溶岩ドーム群が取り囲む!

活火山「鳴子」

温泉の泉質は、1.単純温泉、2.塩化物泉、3.炭酸水素塩泉、 4.硫酸塩泉、5.二酸化炭素泉、6.含鉄泉、7.酸性泉、8.含よう素泉、9.硫黄泉、10.放射能泉の10種類に分類されますが、鳴子温泉は二酸化炭素泉、含よう素泉、放射能泉の3種類を除く7種類が楽しめるという、温泉の総合デパート。

効能を目的にして療養泉で湯治するという人には、まさに「総合病院」といった存在です。
その意味もあって、鳴子温泉郷は、環境大臣から「国民保養温泉地」に指定されています。

なぜこれだけ泉質が豊富なのか、その理由のひとつが、鳴子エリアは地熱も高く、ほとんどの旅館、入浴施設が自家源泉ということにあります。
鳴子温泉郷観光協会によれば、源泉の数は370を数えるとのこと。

川渡温泉は、炭酸水素塩泉が主で美肌の湯など、「狭い範囲で多彩な泉質を楽しめる貴重な場所になっていて、お気に入りの湯を探す「鳴子でしかできない魅力」があるのです。

そんな多彩な温泉の背景にあるのが、活火山「鳴子」。
気象庁によれば、直径7km の不鮮明な輪郭をもつカルデラとその中央部の溶岩ド ーム群(胡桃ヶ岳、尾ヶ岳、鳥谷ヶ森、松ヶ岳)からなる活火山ということに。
火口湖である潟沼(かたぬま)を取り囲むのが溶岩ドーム群で、西側の溶岩ドーム・鳥谷ヶ森(とやがもり/標高394m)では今も活発な噴気が上がり、潟沼もpHは2.4の強酸性となっています。

気象庁・火山噴火予知連絡会の定める活火山は、過去1万年以内に火山活動のあった場所。
潟沼西部の溶岩ドームは砂礫層中の樹幹の年代測定で1万1800年ほど前から火山活動を開始したと判明し、火山の寿命(80万年〜100万年)を考えれば、まだできたてのほやほや。
人間に例えれば、1歳ほどの赤ちゃんということに。

山麓部の火山灰を分析すると5400年前以降の噴火が認められるので、明らかな活火山ということになります。
平安時代編纂の歴史書『続日本後紀』(しょくにほんこうき)には、承和4年(837年)に「玉造塞温泉石神、雷響振動、昼夜不止、温泉流河、其色如漿、加以山焼谷塞、石崩木折、更作新沼、沸声如雷」の記述があり、玉造郡は、鳴子温泉一帯のことなので、平安時代には潟沼周辺で水蒸気爆発があったことが推測されるのです。

噴火警戒レベルは1で「活火山であることに留意」ですが、多くの温泉ファンは、活火山であることにも気がついていません。
切迫した噴火の可能性はありませんが、火山防災協議会も未設置で、カルデラ内に温泉郷と鳴子温泉駅、鳴子御殿湯駅などの鉄道が通ることから、今後は、火山防災協議会等連絡・連携会議が設置、火山ハザードマップが作成される可能性があります(宮城県内では「栗駒山火山ハザードマップ」が作成されています)。

活火山「鳴子」
火口湖の潟沼
活火山「鳴子」
潟沼を空撮
7つの泉質が楽しめる鳴子温泉、実は活火山「鳴子」だった! 噴火の危険は!?
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
潟沼

潟沼

宮城県大崎市、鳴子温泉の南東1kmにある神秘的な湖が潟沼(かたぬま)。摩周湖、洞爺湖、十和田湖などと同様のカルデラ湖で、平安時代初期の承和4年(837年)に鳴子火山の火山活動の記録がありますが、その火山活動で誕生した湖だと推測されています。

鳴子温泉

鳴子温泉

宮城県大崎市にある鳴子温泉郷は374ヶ所の源泉を誇る大温泉郷。日本にある11種の温泉のうち9種類の温泉が揃い「温泉のデパート」とも呼ばれています。その中心的な温泉が鳴子温泉で、秋保温泉(宮城県仙台市)、飯坂温泉(福島県福島市)とともに「奥州

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