九龍島

九龍島

和歌山県東牟婁郡串本町にある「南方曼荼羅の風景地」として国の名勝に指定されるのが、九龍島(くろしま・くろうしま)。古座川の河口から1kmほど沖合に、鯛島と並ぶ無人島で、テレビ朝日系列『いきなり黄金伝説』の『無人島0円生活』のロケ地にもなっています。

南方熊楠は、オオタニワタリ自生地として注目

博物学者・南方熊楠(みなかたくまぐす)ゆかりの13ヶ所が名勝として選定される「南方曼陀羅の風景地」のひとつ。
明治45年2月9日に植物病理学者・白井光太郎に送った『神社合祀に関する意見』において、南方熊楠は、「わが国特有の天然風景はわが国の曼陀羅ならん」とし、「特有の天然風景」は大日如来を中心とする真言密教の曼陀羅(まんだら=空海は仏の悟りの境地である宇宙の真理を図解して表現)のように、自然・人文の総体が持つ有機的な体系の重要な部分であると指摘しています。

明治時代に神社の合祀が進められ、鎮守の森が失われていくことを生態系の破壊だと感じた南方熊楠ですが、鎮守の森の維持とともに、千古斧を入れざる神林の神島、エコロジーにもっとも有用な奇絶峡、山頂付近の池で珍しい藻を採集した龍神山などの生態系保存にも尽力しています。

南北160m、東西170m、標高31mという小さな九龍島に関して、南方熊楠は、オオタニワタリの群生地として注目したのです。
「古座浦の黒島も、この稲積と並んでタニワタリの名所なり。小生八年前行き、同島植物片っぱしから採りしに、そのころは一本もなく高芝、下里などいう村の旅宿などに栽えたるもの多少ありしのみ」(南方熊楠『南方二書』)
イヌマキ、スダジイ、タブノキなどが茂り、イワヒトデ、タマシダ、ヤブランなど紀伊半島南部を北限とする植物が自生する貴重な生態系が保たれた島。

オオタニワタリは常緑性のシダ植物で、伊豆諸島、紀伊半島、九州(西部・南部)、奄美諸島、沖縄などの暖地で生育し、紀伊半島では三重県北牟婁郡紀北町の大島(大島暖地性植物群落)が北限。
黒潮によって胞子や種子などが運ばれ、分布を広げたと推測でき、まさに黒潮文化を考える上でも貴重な植物なのです。
園芸目的の採集などにより、野生状態では絶滅した場所も多く、自生地は貴重な存在。

ちなみに九龍島は、紀州徳川家の祖・徳川頼信(とくがわよりのぶ=徳川家康の十男)が九龍島と命名するまでは、暖地性植物が黒々と繁茂する様子から、黒島と呼ばれていました。
島には「あかり穴」、「暗がり穴」という洞窟があり、熊野水軍の拠点だったとも伝えられています。

九龍島に上陸するには古座の藤田渡船を利用。

国の名勝「南方曼陀羅の風景地」に指定されるのは九龍島のほか、奇絶峡、神島、鬪雞神社、須佐神社、伊作田稲荷神社、継桜王子、高原熊野神社、龍神山、八上神社、田中神社、金刀比羅神社、天神崎です。

九龍島
名称 九龍島/くろしま・くろうしま
所在地 和歌山県東牟婁郡串本町西向
関連HP 南紀串本観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR古座駅から徒歩15分、藤田渡船を利用
問い合わせ 南紀串本観光協会0735-62-3171/FAX: 0735-62-1070
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
天神崎

天神崎

和歌山県田辺市にある岩礁の岬が天神崎(てんじんざき)。田辺湾の北側に突き出た小さな岬ですが、日本におけるナショナル・トラスト運動発祥の地として名高い。丸山と呼ぶ海岸部の小さな島、21haの平坦な海食台の岩礁地帯、日和山を中心とする20haの

高原熊野神社

高原熊野神社

和歌山県田辺市、熊野本宮へとつながる熊野古道・中辺路(なかへち)の高原(たかはら=不寝王子と大門王子の間)にある古社が高原熊野神社。応永年間(1394年~ 1428年)に若王子(にゃくおうじ)を熊野本宮から勧請して創建。朱塗り檜皮葺、春日造

継桜王子(野中の一方杉)

継桜王子(野中の一方杉)

和歌山県田辺市中辺路町、世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産でもある熊野古道(国の史跡「熊野参詣道」)・中辺路(なかへち)にあるのが継桜王子(つぎざくらおうじ)。熊野九十九王子社(くまのくじゅうくおうじ)のひとつで、社(江戸時代

闘鶏神社

闘鶏神社

和歌山県田辺市、紀伊田辺駅南東、仮庵山(かりおやま)の麓にある古社が闘鶏神社(鬪雞神社)。祭神は熊野十二神で、交通の要所でもあることから中世、近世には新熊野合権現として繁栄。平家を支援した熊野別当家との縁が深いのですが、熊野水軍を率いた湛増

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

ABOUTこの記事をかいた人。

アバター画像

日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ