富士五湖でもっとも小さな湖が山梨県富士河口湖町にある精進湖(しょうじこ)。「富士山域」として世界文化遺産富士山(「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」)の構成資産のひとつになっています。平安時代初期、富士山の貞観大噴火(じょうがんだいふんか)で流出した溶岩流で剗の海(せのうみ)が分断され誕生した湖です。
精進湖から眺める富士山は「子抱き富士」
貞観6年(864年)~貞観8年(866年)の貞観大噴火で富士山の北山腹・長尾山などから流れ出た青木ヶ原丸尾溶岩流は、剗の海(せのうみ)と呼ばれる巨大な湖を西湖(さいこ)と精進湖に分断。
こうして誕生した精進湖は、周囲7km、面積0.87平方キロメートルと、富士五湖ではもっとも小さな湖で、湖の青木ヶ原樹海側には押し寄せた溶岩流が残されています。
深さも最大深度11.2m、平均深度は3.7mと、富士五湖のなかではもっとも浅い湖です。
貯水量も山中湖に比べ、30分の1と少ないのですが、澄んだ湖水は、ワカサギの棲息に最適。
漕艇競技の練習コースがあるため、ロウボート、カヌー以外の湖上スポーツはできません。
その名の由来は生死(しょうじ)とも、精進口から富士登拝をする人がこの湖で身を清める精進潔斎(じょうじんけっさい)したからともいわれ、定かでありません。
精進湖の北岸に推定樹齢1200年という「精進の大スギ」があるのは、甲府(山梨県)と駿河(静岡県)を結ぶ中道往還が通るから。
貞観大噴火以前、巨大な剗の海があった時代から交易ルートとして使われ、古墳時代にヤマト王権の文化が甲府盆地へと流入したのもこの道を通ってということになります(甲府盆地に銚子塚古墳などの前方後円墳が築かれました)。
精進湖から富士山の眺めは、「子抱き富士」と通称され、手前に富士山の寄生火山である大室山(1468m)がミニ富士のように見えるから。
精進湖を生んだ貞観大噴火は、この大室山近くの長尾山・片蓋山周辺での割れ目噴火で、北の剗の海へと押し寄せたのです。
英国人が見出した「東洋のスイス」精進湖
明治27年に来日した英国人ハリー・スチュワート・ホイットウォーズ(Harry Stewart Whitworth/星野芳春)は、箱根のホテルなどで働きながら、富士山の美しく見える地を探し、明治28年、精進湖の高台、宇ノ岬(うのさき)に「精進ホテル」を開設。
英紙などに「世界一美しいショージコとその周辺」(The world’s most beautiful lake, Shojiko)、「東洋のスイス」(Oriental Switzerland)といった記事を投稿、こうして、Japan Shoji(「ジャパン・ショージ」)は、国際的なリゾート地として幕を開けています。
「精進ホテル」は、その後、上野精養軒直営で営業していましたが、平成20年に富士急行に売却された後、休業しています。
精進湖の魅力は、その景観で、実は湖畔からの富士山側のアングルにはほとんど人工物がありません(「精進ホテル」もその人工物のない視界が自慢でした)。
精進湖でカメラを構えたなら、その点もチェックしてみてください。
精進湖 | |
名称 | 精進湖/しょうじこ |
所在地 | 山梨県南都留郡富士河口湖町精進 |
関連HP | 精進湖観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | 富士急行線河口湖駅から富士急行バス本栖湖方面行きで35分、精進下車 |
ドライブで | 中央自動車道河口湖ICから約16km |
駐車場 | 県営精進駐車場(50台/無料) |
問い合わせ | 富士河口湖町観光課 TEL:0555-72-3168 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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