世界自然遺産に登録される北海道・知床。知床半島に位置する知床岬は、知床でも秘境中の秘境。岬への道はなく(徒歩道もありません)、しかも先端部の台地は上陸禁止。そんな知床岬ですが、人家がないのにもかかわらず、なんと「郵便番号」が付いています。知られざる知床岬の歴史をひもときましょう。
目梨郡羅臼町知床岬、〒086-1801で郵便が届く!?

知床岬の先端部の台地上(知床岬灯台の建つ草原部)は、環境省、林野庁、地元自治体(羅臼町、斜里町)の取り決めで、特別な許可がない限り、立ち入ることができません。
岬の原始性を保つための方策です(ただし、皮肉なことに現在はエゾシカによる食害で、先端部の高山植物は壊滅的な打撃を受けています)。
羅臼町側から海岸部の道なき道を、断崖をよじ登り、場所によっては海を泳いだりしながら2泊3日かかって到達する探検家もいますが、ヒグマも出没、携帯電話も通じないなど、一般にはまったく到達が困難なエリアとなっています。
そんな知床岬ですが、日本郵便の郵便番号検索の住所からの検索で、都道府県に「北海道」、そして市区町村・町名に「知床岬」と入力すると、なんと〒086-1801と表示されます。
逆に郵便番号からの検索で086-1801を入力すると、目梨郡羅臼町知床岬という地名が出てきます。
つまり、人家もない先端部に、なんと郵便番号が付いていることがわかるのです。
かつて知床岬・赤岩地区には56軒もの番屋があった

現在、知床岬先端部にある建物は、知床岬灯台と、ウトロ側に回り込んだ文吉湾の番屋のみ。
文吉湾の番屋は、斜里町なのでこの郵便番号が該当しません。
知床岬灯台は、羅臼町と斜里町の境界に建っていますが、昭和38年10月15日の初点灯から無人。
ディーゼル発電(自家発電)に使う経由は、知床岬灯台に近いアブラコ湾に接岸して補給していました(現在は太陽光発電、LED灯台に変更)。
というわけで灯台守用の郵便番号ではありません。
結論をいえば、かつて知床岬、羅臼町側の赤岩海岸には、夏の間、移住生活を送る昆布漁の番屋が建ち並んでいました。
家族総出で昆布漁を行なうため、子どもたちも番屋に暮らします。
そのため、学校の教師も船で赤岩地区を訪れ、出張授業を行なったほどです。
羅臼港から出向する観光船「知床ネイチャクルーズ」の長谷川正人船長は、もともと曾祖父から4代続く漁師で、30代半ばまで. 赤岩地区で昆布漁に従事。
相泊港〜知床岬・赤岩海岸を結ぶ交通船(生活物資や人を運ぶ船)もこの長谷川家が担っていました。
最盛期にはなんと56軒もの番屋が建ち並び、夏場には羅臼昆布を海岸の玉石の浜に干したりしていたのです。
櫓付きの帆船で8時間も費やして赤岩に到達した時代のため、夏の間はそこで暮らす方が便利だったのです。
現在は船外機が付けられた船で相泊港から移動できるため、日帰りでの昆布漁が可能となり、番屋で暮らすことはなくなりました。
つまり、知床岬の〒086-1801は、夏の間移住生活を送った時代の名残りということに。
こうした記憶がある人も今や60代以上に。
それでも郵便番号がその歴史をとどめています。
| 【知られざるニッポン】vol.82 地の果て・知床岬には「郵便番号」がある! | |
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