【知られざるニッポン vol.24】日本三名園に隠された「意外な事実」

日本人は日本三〇〇とか、三大〇〇が大好き。今回は「日本三名園」を紹介しましょう。金沢市の兼六園、岡山市の後楽園、水戸市の偕楽園が「日本三名園」。誰が、どんな基準で選んだのでしょう? 「The 3 Great Gardens of Japan」、いったいどんなドラマが隠されている!? 意外や意外、そこには日本の近代化への道が・・・

三名園は「歩いて楽しむ御庭」

江戸時代の初めからすでに「日本三景」は定着していました。
安芸(あき)の宮島、天橋立(あまのはしだて)、そして松島とすべてが海景です。
しかもその三景は、雪=天橋立、月=松島、花(紅葉を花に見立てる)=宮島と雪月花を割り当てているところが、いかにも日本的です。

もちろん、日本三名園にも「雪月花の割当」があって、雪=兼六園、月=後楽園、花(梅)=偕楽園といった感じになっています。

そもそも、いつ頃から三名園といわれていたのでしょうか?
この三名園に共通するのキーワードが「大名庭園」。
兼六園は加賀藩前田家の、後楽園は岡山藩池田家の、そして偕楽園は徳川光圀(水戸黄門)が築いた水戸徳川家の大名庭園なのです。
池を中心として、その回りを周回できるという池泉回遊式の庭園。

御殿や本堂から眺めるのではなく、「歩いて楽しむ御庭」なのです。

「雪」=兼六園
「月」=後楽園
「花」=偕楽園

三名園といわれるようになったのは明治24年頃

日本三名園が記録に登場するのは、実は、文明開化、富国強兵以降。
明治24年8月、岡山の後楽園を訪れた正岡子規が記念写真の裏に「岡山後楽園 日本三公園ノ一」とメモした写真がありますが、明治20年代前半にはすでに「三公園」とされています。

後楽園眞景及詳誌』(細謹舎/明治28年刊)の序に、「後楽園は日本三公園の一にして(中略)明治辛卯夏五月 豁堂居士しるす」とあり、明治辛卯は明治24年のことで、今のところ(ニッポン旅マガジンの調べでは)明治24年が最古の記録になっています。

注目したいのは、いずれも「三公園」で、「三名園」ではないこと。
実は、ここが大きなキーワードで、明治24年当時、大名庭園は、巴里(パリ)のボア・ド・ブローニュ、伯林(ベルリン)のチーアガルテン、紐育(ニューヨーク)のセントラルパーク、倫敦(ロンドン)のセントゼームス公園と並び、日本が誇るべく都市公園だとして教育されていたのです。
(記載の公園名は明治43年刊の『高等小学読本』記載のまま)

明治の教科書に載る「世界四大公園」
ボア・ド・ブローニュ/ブローニュの森(Bois de Boulogne)=フランス・パリ16区にある森林公園
チーアガルテン/大ティーアガルテン(Großer Tiergarten)=ベルリン中心部、ミッテ区のティーアガルテン地区に位置する広大な公園
セントラルパーク/セントラル・パーク(Central Park)=ニューヨーク市のマンハッタンにある都市公園
セントゼームス公園/セント・ジェームズ・パーク(St James’ Park)=バッキンガム宮殿とトラファルガー広場を結ぶザ・マルに隣接する公園
正岡子規いわく「岡山後楽園 日本三公園ノ一」

三名園より栗林公園が上!?

明治43年、
文部省から発行された『高等小学読本』(第2期)巻一「第六課 公園」の23頁には、
「・・・我ガ国ニテ風致ノ美ヲ以テ世ニ聞エタルハ、水戸ノ偕楽園、金沢ノ兼六園、岡山ノ後楽園ニシテ、之ヲ日本ノ三公園ト称ス。然レドモ高松ノ栗林公園ハ木石ノ雅趣却ツテ批ノ三公園ニ優レリ
と記されています。

つまり、偕楽園、兼六園、後楽園を「日本の三公園(三名園)」と紹介して、しかれども栗林公園は三公園(三名園)より優れりと、香川県民が読んだら大喜びの内容が記されています。

教師が使ったアンチョコ本『高等小学読本解説』(中野伝治・大杉謹一著、明治図書/大正10年刊)から、その中身を読み解くと、まず、都市の公園の重要性を強調し、パリ、ニューヨーク、ロンドンの公園事情を紹介。さらに、日本の公園事情と三公園(三名園)などを解説。

その上で、練習問題として、一、都会地に公園の必要を生ずるのは何故か。二、日本の主なる公園をあげよ。三、欧米の主なる公園をあげよ。四、日本の三公園とは何々か。

明治末〜大正初めとしてはかなりグローバルな内容になっているのです。
いずれにしろ、日本の近代化との関わりのなかに「三名園」(実は、三公園!)が生まれたのです。

『高等小学読本解説』の公園の項目

日本三名園に行こう!

日本三名園

日本三名園とは!?

2019年12月15日

偕楽園

2017年2月14日

兼六園

2017年2月14日

岡山後楽園

2017年2月14日

 

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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。

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