愛媛県新居浜市で別子銅山の採鉱本部跡のあった東平(とうなる)一帯が、マイントピア別子東平ゾーン。採鉱本部跡、貯鉱庫跡などが山中に残り、その雰囲気から東洋のマチュピチュとも呼ばれています。大正5年から昭和5年までの間、別子銅山の採鉱本部が置かれ、社宅・小学校・劇場・接待館が建てられた標高750mの鉱山都市の跡です。
別子銅山の近代化で採鉱本部を東平に移転
元禄4年(1691年)に住友家(泉屋)が開坑した標高1200mの山中の歓喜坑・歓東坑(別子本鋪=べっしほんじき)は、明治7年、フランス人技師、ブルーノ・ルイ・ラロックを雇い入れての近代化を実施。
採掘した鉱石を機械動力によって巻き上げる縦坑(シャフト)として東延斜坑を掘削し、明治23年には蒸気式巻き上げ機を設置して本格的な近代的採掘体制が確立。
山上の山道から人力と牛車で鉱石を運ぶといった輸送は、明治26年、日本初の山岳鉄道となる上部鉄道(角石原~石ヶ山丈)と下部鉄道(端出場~惣開)を開通させて改善。
さらに、精錬もそれまでは捨てていた含有率3%程度の「貧鉱」をも、洋式製錬を導入した高橋製錬所を建設して克服しています(明治32年の大水害で設備が壊滅、新居浜の惣開製錬所に統合)。
こうした、採掘、輸送、精錬の近代化を経て、大正5年に採鉱本部や主要な鉱山施設を標高1100mという山上の東延(とうえん)地区から標高750mの東平(とうなる)地区に移転し、明治後期から大正の別子銅山の中心地は東平となったのです。
端出場に移転する昭和5年まで、中心的な役割を果たした場所が銅山越の北側の東平で、それまでの採掘地だった東延斜坑の底を目指して、掘られた1795mのトンネルが第三通洞です。
別子銅山近代化を第三通洞に注目!
標高750mの東平には、明治35年完成の長さ1795mの主要運搬坑道「第三通洞」、東平第三変電所、東平火薬庫口、保安本部、東平貯鉱庫、東平索道停車場、インクライン跡の階段などの施設が現存しています。
観光に訪れても、あまり注目されませんが、明治27年に開削が始まった第三通洞こそ、別子銅山近代化を加速させた大トンネルだったのです。
坑口が標高747mの東平「第三」(地名)にあったことが名の由来です。
坑口にあたる東平に選鉱場(鉱石を選別する施設)を配置し、最新式の砕鉱機を導入。
通洞内を走る坑内電車が鉱石の搬出、物資の搬入を行なったのです。
坑道へと延びる坑内電車の軌道跡もあるので、じっくりと見学を。
標高750mの山中に栄えた鉱山都市跡を見学
選鉱場跡と貯鉱庫跡は、見上げるばかりの石積みが、山肌に沿って三段に築かれ、まさに城壁のよう。
第三通洞を経由して運び出された鉱石が選別されたのが選鉱場、一時的な保管場が貯鉱庫です。
鉱石は、ここから索道を使って(東平索道停車場の遺構が現存)、下部鉄道の黒石駅(後に端出場駅に変更)に降ろされ、新居浜港から船で今治の四阪島製錬所へと運ばれたのです。
第四通洞が貫通し、昭和5年に端出場に採鉱本部は移ってはいますが、その後も東平坑は、昭和43年に鉱量枯渇で休止するまで別子銅山の重要拠点として稼働しています。
レンガ造りの旧東平第三変電所、重厚な花崗岩造りの東平貯鉱庫跡などの石積みの巨大な遺構が山中にあることから、「東洋のマチュピチュ」とも称されているのです。
最盛期はこの東平に3700人が暮らしています。
観光坑道のあるマイントピア別子(端出場)ゾーンから車で30分ほど。
採掘本部跡まで車で入ることができ、東平歴史資料館、東平マイン工房、展望台、渓谷遊歩道などが整備され、山中に栄えた鉱都の雰囲気を味わうことができます。
園内遊歩道の一部、220段の階段は、索道で東平へと運ばれてきた物資を荷揚げするインクライン(傾斜鉄道=京都の蹴上インクラインが有名)の跡です。
東平第三変電所跡、マイントピア別子東平ゾーン(東平貯鉱庫跡・東平選鉱所跡・保安本部跡など)、東平歴史資料館の所蔵物は、別子銅山関連遺産として近代化産業遺産(「地域と様々な関わりを持ちながら我が国の銅生産を支えた瀬戸内の銅山の歩みを物語る近代化産業遺産群」)に認定されています。
マイントピア別子東平ゾーン(東洋のマチュピチュ) | |
名称 | マイントピア別子東平ゾーン(東洋のマチュピチュ)/まいんとぴあべっしとうなるぞーん(とうようのまちゅぴゆ) |
所在地 | 愛媛県新居浜市立川町654 |
関連HP | マイントピア別子公式ホームページ |
ドライブで | 松山自動車道新居浜ICから約16km |
駐車場 | 71台/無料 |
問い合わせ | マイントピア別子・本館事務所 TEL:0897-43-1801 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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