商売繁盛、芸能上達の神様として知られ、繁華街などにも祀られるのが「お稲荷さん」と通称される稲荷神(いなりのかみ、いなりしん)。日本三大稲荷は、伏見稲荷大社(京都市)、笠間稲荷神社(茨城県笠間市)、そして豊川稲荷(愛知県豊川市)ですが、祐徳稲荷神社(佐賀県鹿島市)、最上稲荷(岡山市)もその候補に。
「お稲荷さん」のなかには寺もある!
「お稲荷さん」といわれて連想するものは、赤い鳥居、狐(きつね)、いなり寿司。
神社のイメージですが、実は豊川稲荷(愛知県豊川市)は、円福山豊川閣妙厳寺(えんぷくざんとよかわかくみょうごんじ)という曹洞宗の禅寺、最上稲荷(岡山市)も最上稲荷山妙教寺(さいじょういなりざんみょうきょうじ)という日蓮宗の寺です。
さらにいえば、いなり寿司のルーツも禅寺である豊川稲荷とされ、「お稲荷さん」=神社というイメージは大きく覆ります。
明治維新の神仏分離、廃仏毀釈までは、日本の多くの寺社は神仏習合でした。
江戸時代までは神社を管理する別当寺があり、神社を寺が管理するというのが当たり前の時代でした。
有名な金毘羅(こんぴら)も大権現というように、江戸時代までは寺だったのです。
日本の八百万(やおよろず)の神々は、実は様々な仏が化身として日本の地に現れた権現(ごんげん)であるとする考えが本地垂迹(ほんじすいじゃく)で、天照大神=大日如来、熊野権現=阿弥陀如来、東照大権現(徳川家康)=薬師如来など神の正体とされる仏様が本地仏です。
稲荷神の本地仏とされるのが荼枳尼天(だきにてん)。
インド伝来の荼枳尼天は狐と結びつき、その後、神道の稲荷と習合したと推測されています。
この荼枳尼天、江戸時代には庶民に開運出世の福徳神として信仰されましたが、明治の神仏分離で稲荷神社へと転身したのですが、豊川稲荷(妙厳寺)、最上稲荷(妙教寺)は奇跡的に神仏習合の姿を留めたというわけなのです。
日本三大稲荷は諸説あり、当確は伏見稲荷大社のみ
全国に3万社以上あるという稲荷社ですが、その総本宮が伏見稲荷大社。
というわけで、日本三大稲荷の筆頭は、伏見稲荷大社ということで異論がある人は少ないはず。
ところが残りの2つに関しては百家争鳴状態。
伏見稲荷大社のHPでも「稲荷信仰の原点が、稲荷山」というだけで、日本三大稲荷に関しては触れていません。
豊川稲荷(妙厳寺)、最上稲荷(妙教寺)、祐徳稲荷神社(佐賀市)、笠間稲荷神社(茨城県笠間市)がその候補です。
豊川稲荷はHP上では現在、三大稲荷について触れていません。
最上稲荷(妙教寺)は、「伏見・豊川と並ぶ日本三大稲荷」と記載し、伏見稲荷大社、豊川稲荷(妙厳寺)、最上稲荷(妙教寺)が三大稲荷としています。
祐徳稲荷神社(佐賀市)は、HPで「日本三大稲荷の一つに数えられ」としていますが、残りの2社寺に関しては触れていません。
笠間稲荷神社(茨城県笠間市)も同様で、「笠間稲荷神社は日本三大稲荷のひとつとして広く人々に親しまれ」とありますが、残りの2ヶ所は不明です。
草戸稲荷神社(広島県福山市)、竹駒神社(宮城県岩沼市)、千代保稲荷神社(岐阜県海津市)なども日本三大稲荷に推す場合もあり、百家争鳴状態となっています。
日本三大稲荷の候補は、「日本五大稲荷」
伏見稲荷大社|確定
全国3万数千にものぼる稲荷社の総本宮
所在地:京都府京都市伏見区深草藪之内町68
創建年:和銅4年(711年)、渡来系・秦氏族の秦伊侶具(はたのいろぐ)が創建
主祭神:稲荷大神(宇迦之御魂大神ほか4柱の総称)
概要:『山城国風土記逸文伊奈利社条』には、秦伊侶具が餅を的にして矢を射ったところ、その餅が白鳥になって山の峰に飛び去り、 山に稲が生えたので、「伊禰奈利生」(いねなりおいき)、それが転じて稲荷となったと記されています
稲荷山の麓に本殿があり、稲荷山全体が神域
豊川稲荷(妙厳寺)|ほぼ確定
稲荷寿司のルーツで、初詣も東海地方では熱田神宮に次ぐ人出
所在地:愛知県豊川市豊川町1
創建:嘉吉元年(1441年)、東海義易(とうかいぎえき)禅師が妙厳寺を建立した際に、鎮守として豊川荼枳尼真天(とよかわだきにしんてん=豊川稲荷)を祀ったのが始まり
鎮守:吒枳尼真天
概要:円福山豊川閣妙厳寺が正式の名称
伽藍を整備したのは、戦国時代にこの地まで覇権をのばした駿河国・遠江国の守護大名・今川義元で、今川義元没後は徳川家康も尊崇
全国5ヶ所(東京別院、札幌別院、横須賀別院、大阪別院、九州別院=福岡)に別院がありますが、東京赤坂の豊川稲荷は大岡越前の勧請
笠間稲荷神社|ほぼ確定
境内で行なわれる『笠間の菊まつり』でも有名
所在地:茨城県笠間市笠間1
創建:白雉2年(651年)
主祭神:宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと)
概要:歴代の笠間藩主が厚く崇敬、側面に彫刻「三頭八方睨みの龍」のある現在の本殿は、万延元年(1860年)建立で、国の重要文化財
初詣は茨城県随一の人出
最上稲荷(妙教寺)|候補
宿坊「顕妙閣」で精進料理を味わうことも可能
所在地:岡山県岡山市北区高松稲荷712
創建:天平勝宝4年(752年)、修験道の流れをくむ行者・報恩大師が開山
鎮守:最上位経王大菩薩(稲荷大明神)
概要:正式名は最上稲荷山妙教寺という日蓮宗の寺
寺でありながら鳥居があり、神宮形式の本殿(霊光殿)が残されているなど神仏習合時代の名残りがあります(神仏分離、廃仏毀釈の嵐を奇跡的にくぐり抜けました)
「不思議なご利益がある最上さま」として、現在でも商売繁盛、交通安全など多くの信仰を集めています
祐徳稲荷神社|候補
その絢爛さから「鎮西日光」との別名も
所在地:佐賀県鹿島市古枝
創建:貞享4年(1687年)、京都御所内の花山院(かざんいん)邸に鎮座する稲荷大神を肥前鹿島藩主・鍋島直朝(なべしまなおとも)の夫人の花山院萬子媛(かさんいんまんこひめ)が勧請
主祭神:倉稲魂大神、大宮売大神、猿田彦大神、神令使命婦大神、萬媛命
概要:江戸時代には神仏習合の地でしたが、明治の神仏分離、廃仏毀釈で祐徳稲荷神社に
日本三大稲荷とは!? | |
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