千葉県南房総市白浜町、野島埼灯台のすぐ下の松林に建つ、蔵造り風の建物が白浜海洋美術館。柳八十一・和子夫妻が私財を投じて開館したプライベートミュージアムで、大漁を祝って着る漁師の晴れ着、大漁半纏(たいりょうはんてん)の「万祝」(まいわい)200着を中心に展示が行なわれています。
「万祝」の芸術性を後世に伝える貴重な美術館
三重県出身で、東京の百貨店に勤めていた柳夫妻は昭和37年、白浜を旅行中に偶然、海女達が休む小屋で万祝を見つけ、その美しさに魅せられ、失われていく万祝を後世に残したいとの思いで万祝(萬祝)と海関係美術工芸の塊集を始めました。
柳八十一さんは、白樺派の柳宗悦を師と仰ぎ、民芸に対する造詣が深く、房総沿岸中の漁師民家を「万祝ないですか?」と訪ね歩いて万祝を集めたのだとか。
万祝は、前年の大漁を祝い、今年の大漁祈願をするための寺社参詣用の半纏(はんてん)。
大漁だった年の暮れに、網元から漁師へ反物が配られ、漁師の妻や母が半纏(万祝)に仕立て、正月に万祝を着て網元の家に集合し、寺社に参詣、網元の家で正月2日から三日三晩の酒盛りをするという風習があったのです。
それでもひとりの漁師が手にすることができるの万祝は生涯に2、3着だったとか。
江戸時代から明治にかけて房総はイワシ漁で繁栄。
大きな網元は10万石クラスの大名に比肩するほどという財力を誇り、江戸から文化人を招いては逗留させていました。
こうした繁栄を背景に、房総で生まれたのが大漁半纏の万祝で、その後、太平洋沿岸沿いに東北などに伝搬しましたが、その豪華さ、芸術性は房総の万祝には及びません。
江戸の絵師に描かせたデザインなどもあって、その芸術性も高く評価されています。
「ハァ~ 鮪とらせて 万祝着せて 詣りやりたい 高塚へ キッタマッキの帆前船 上はデッキですべくるよ」(『安房節』)。
戦後は、第二次世界大戦の混乱もあって数々の下絵や万祝そのものが消滅、イワシの不漁が追い打ちをかけ、今では博物館に展示される品となったのです。
現在は息子・柳善夫さんの代になっていますが、万祝、船首につけられていた装飾品などをはじめ、大漁奉納絵馬、貝合せ道具、船徳利など、漁民たちの暮らしのなかで使われてきた生活用具など貴重な品々が展示されています。
房総半島発祥の大漁半纏、万祝コレクションは必見の価値があります。
また、参勤交代の大名達が乗った御座船の屏風なども貴重。
館内には福禄寿が祀られ、安房七福神(天津小湊・妙の浦恵比寿堂、清澄寺・布袋尊、天津小湊・多聞寺毘沙門天、鴨川・厳島神社弁財天、仁右衛門島・寿老人、南房総市市久保・真野寺大黒天)のひとつになっています。
白浜海洋美術館 | |
名称 | 白浜海洋美術館/しらはまかいようびじゅつかん |
所在地 | 千葉県南房総市白浜町白浜628-1 |
関連HP | 白浜海洋美術館公式ホームページ |
電車・バスで | JR館山駅からJRバス安房神戸回り白浜行きで33分、野島崎灯台口下車、徒歩10分、またはJRバスフラワーライン経由安房白浜行きで51分、灯台前下車、徒歩3分 |
ドライブで | 富津館山道路富浦ICから約18km |
駐車場 | 130台/無料 |
問い合わせ | 白浜海洋美術館 TEL:0470-38-4551 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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