熊本県人吉市大野町にある肥薩線の駅が大畑駅(おこばえき)。日本でも唯一のループ線・スイッチバック駅になっています。加久藤カルデラの外輪山である矢岳高原の北側に位置し、大畑駅(294m)と矢岳駅(537m)との高度差243mを直径600mのループ線とスイッチバック、さらに最大33.3‰という急勾配で克服しています。
駅周辺には人家のない秘境駅
青森から鹿児島までが鉄路で結ばれたのは明治42年のことですが、その最大ともいえる難所がこの肥薩線の矢岳越え(当時は鹿児島線、昭和2年までは鹿児島本線)。
人吉駅から矢岳駅(当時は矢嶽駅)までは直線距離では12.9kmしかありませんが、高低差はなんと426.7mもあり、1000分の25(25‰)の上り勾配が連続して、蒸気機関車は横平隧道(502.9m)を抜けると、ようやく大畑駅に入線しました。
実は、この大畑駅、信号所と給水所としての機能が大部分の駅で、駅から最寄りの大畑集落までは徒歩1時間。
いわゆる秘境駅にもなっているのです。
傾斜地に駅を設けるため、平坦地をつくってホームを設け、スイッチバックにしたもの。
乗客は、蒸気機関車が給水する間(人吉駅〜大畑駅間は標高差186m、急坂の連続のため、1分間に250リットルもの水を消費)、駅のホームにある湧水の洗顔場で顔についた煤(すす)を洗い流したのです。
往時には大畑駅で石炭と水を供給し、スイッチバックをしてループ線に入り、谷間を埋める高さ35.1mもの築堤、33.3‰の急勾配で、矢岳駅を目指しました。
大畑駅前にある石造りの円筒は、往時の蒸気機関車の給水塔です。
また、ホームにも洗顔用の湧水盆が現存し、駅舎、給水塔、湧水盆などは経済産業省の近代化産業遺産「九州南部における産業創出とこれを支えた電源開発・物資輸送の歩みを物語る近代化産業遺産群」(南九州近代化産業遺産群)「全国に遍く人と物を運び産業近代化に貢献した鉄道施設の歩みを物語る近代化産業遺産群」にも選定されています。
肥薩線・大畑駅(ループ線・スイッチバック駅) | |
名称 | 肥薩線・大畑駅(ループ線・スイッチバック駅)/ひさつせん・おこばえき(るーぷせん・すいっちばっくえき) |
所在地 | 熊本県人吉市大野町 |
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