大田神社(大田ノ沢のかきつばた群落)

大田神社(大田ノ沢のかきつばた群落)

京都市北区上賀茂本山に鎮座する平安時代編纂の『延喜式神名帳』記載の式内社が大田神社(おおたじんじゃ)。上賀茂神社(賀茂別雷神社)の東500mにあり、現在は上賀茂神社の境外摂社のひとつですが、参道脇のカキツバタ群落は、「大田ノ沢のかきつばた群落」として国の天然記念物に指定されています。

平安時代からカキツバタの名所だった!

天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祭神にする大田神社。
現存する本殿、拝殿は、寛永5年(1628年)の築。

大田ノ沢は、平安の昔からカキツバタが自生し、名所だったと伝えられ、平安時代後期〜鎌倉時代初期の公家・歌人の藤原俊成(ふじわらのとしなり=『千載和歌集』の撰者)も、「神山(こうやま)や 大田の沢の杜若 ふかきたのみは色にみゆらむ」と詠っています(伊勢・賀茂・春日・日吉・住吉の五社に奉納された、堀川百首題に基づく俊成自詠の作品集『五社百首』)。

実は、この大田ノ沢は、深泥池(みどろがいけ)同様に、古代の京都が湖だった面影を残す泥炭地のひとつで、かつては深泥池とつながっていたのだと推測できます。

尾形光琳(京の高級呉服商に生まれ、俵屋宗達に私淑)の六曲一双屏風『燕子花図屏風』(かきつばたずびょうぶ/根津美術館蔵・国宝)のモチーフも、この大田ノ沢だという説も(『燕子花図』自体はその情景に『伊勢物語』に語られたカキツバタの名所、三河八橋が潜んでいます)。
もともと、尾形光琳の『燕子花図屏風』は、京都・西本願寺に伝わる寺宝だったので、大田ノ沢に咲くカキツバタを眺め、平安時代、在原業平(ありわらのなりひら)が眺めた三河八橋のカキツバタをイメージしたのかもしれません。

「大田ノ沢のかきつばた群落」は、例年、上賀茂神社の『賀茂祭』(葵祭)の時期に合わせるかのように、5月上旬〜5月中旬に、2万5000株が花開きます。
東へ600mほどの深泥池にも白っぽいカキツバタが花を咲かせるので、時間があればあわせて見学を。

平安の昔からのカキツバタの名所「大田ノ沢のかきつばた群落」は、「小堤西池のカキツバタ群落」(愛知県刈谷市)、「唐川のカキツバタ群落」(鳥取県岩美町、唐川湿原)と並び、日本三大カキツバタ自生地のひとつに数えられています。

大田神社(大田ノ沢のかきつばた群落)
名称 大田神社(大田ノ沢のかきつばた群落)/おおたじんじゃ(おおたのさわのかきつばたぐんらく)
所在地 京都府京都市北区上賀茂本山340
関連HP 上賀茂神社(大田神社)公式ホームページ
電車・バスで 地下鉄北山駅から徒歩20分
ドライブで 名神高速道路京都南ICから約13km
駐車場 2台/無料
問い合わせ 大田神社 TEL:075-781-0907
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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