【マンホールで知る町自慢】No.032 沼津市

沼津市のマンホールには駿河湾越しの愛鷹山(あしたかやま)と富士山、「市の花」ハマユウと「市の木」マツがデザインされています。愛鷹山は遙か昔は南方の島だったという伊豆半島が本州にぶつかった、その衝突現場・沼津という地形的な要件から、沼津のシンボル的な存在になっています。

マンホールに描かれた愛鷹山は西浦あたりの眺望

愛鷹山1187.5mは、一等三角点を有する沼津市内で最も高い山です。
富士山の南麓に連なる愛鷹山塊(黒岳、越前岳、呼子岳、鋸岳、位牌岳、前岳、袴腰岳、大岳、愛鷹山)のピークのひとつ。愛鷹山塊の最高峰は越前岳で1504.2mです。富士山信仰の盛んな時代には、富士山を中心に愛鷹山(足高山)、山梨県の足和田山、箱根の足柄山を合わせて「富士三脚」と呼びました。
今では山脈のように連なる愛鷹山ですが、実は富士山と同じで、フィリピン海プレートと、ユーラシアプレートの境界に誕生した成層火山(伊豆半島が本州に衝突以降に噴火した火山)。黒岳1087mは、溶岩ドームです。
沼津市内には富士山を眺望するビューポイントが各地にありますが、秀峰・富士は必ず愛鷹山を従えています。

「駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹の山」(若山牧水)

西浦からの富士山と愛宕山
マンホールに描かれた愛鷹山の姿を探すと、西浦あたりがそれに近い姿
 

「市の花」に指定されたハマユウ(浜木綿)

昭和45年4月に沼津市の「市の花」に指定されたハマユウ(浜木綿)は、ヒガンバナ科の植物で、暖地の海岸に自生する多年草。
楮(こうぞ・和紙の原料)の皮の繊維を蒸して水にさらし、細かく割いて作った糸を木綿(ゆう)といい、その木綿(ゆう)に似た花を咲かせることからハマユウ(浜木綿)と名付けられ、万葉集にも歌われました。

沼津市では、御用邸記念公園や、御浜岬公園(戸田岬)、大瀬崎の砂地に群生しています。別名ハマオモト(浜万年青)とも呼ばれ、花のない時期にも観葉植物に変身。7月上旬~8月上旬に香りのある白い花をつけます。このハマユウ、そのルーツは海流に乗って南国から漂着、西伊豆に根付いたものと推測されています。

ハマユウ
祖先は海流で運ばれたというハマユウ
 

若山牧水が伐採に反対した千本松原

沼津の市の木がマツなのは、誰もが異存のない話。沼津市の狩野川河口から、富士市の田子の浦港にかけての10kmは、有名な千本松原。
大正15年に、歌人・若山牧水が「幾らの錢のために増譽上人以来幾百歳の歳月の結晶ともいふべきこの老樹たちを犠牲にしようといふのであらうか」と、静岡県の伐採計画に反対する文を『時事新報』に寄稿し、それがきっかけで松林が守られたというエピソードも残されています。実は牧水は、千本松原の景観をこよなく愛し、大正9年8月、一家を挙げて沼津へ移住したほどなのです。
千本とはいうものの、それは数が多いという意味で、実際には30万本と推定されています。

「日に三度來り來飽かぬ松原の松のすがたの靜かなるかも」(若山牧水)

千本松原のマツ
美しく茂る千本松原のマツ

 

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