中村邸

中村邸

長野県塩尻市、中山道木曽路で最大の宿場町、奈良井宿。櫛問屋中村家の建物を、古民家の特徴がわかる資料館として公開するのが中村邸です。建てられたのは、天保8年(1837年)の奈良井宿の大火の直後に建てられた建物で、間口が狭く、奥行きが深く、2階部分が少しせり出した出梁造り(だしばりづくり)という奈良井宿独特の造り。

町並み保存運動のきっかけを生んだ櫛問屋

中村邸
2階部分が少しせり出した出梁造り

入口のくぐり戸を入ると、家の裏側まで通りの土間が続いています。
囲炉裏とかまどの両方がある「勝手」は、いわば江戸時代のダイニングキッチン。
木曽谷の古民家に多く見られる形式で、暖房効果を高めて冬の寒さをしのぐ雪国ならではの知恵となっています。

江戸時代、木曽谷は尾張藩領で、「木一本、首一つ」といわれるほどの厳しい「留山・留木制度」でヒノキ、アスナロ(アスヒ)、コウヤマキ、ネズコ(クロベ)、サワラの木曽五木の伐採が禁じられていました。
そのため、尾張藩からは木曽谷住民に御免白木(ごめんしらき)といって、使用が許可された材木を割って半製品にした材料が与えられていました。
奈良井宿には許された6000駄のうち1500駄が与えられており、それを原料にして、曲物(まげもの)、漆器(しっき)、お六櫛(おろくぐし)などの木材加工業が盛んに行なわれました。
渓斎英泉の描いた『木曽街道六拾九次』岐阻街道奈良井宿名産店之図にも「名産店」として「名物お六櫛」を売る店が描かれていますから、街道時代のみやげ品だったことがよくわかります。

中村邸は、櫛問屋で、櫛職人だった中村利兵衛の住居兼店舗で、ここでお六櫛などを商っていました。
「普通の生活をしていると、不具合が出てくるので改築してしまいますが、中村邸は手をつけずに往時のままに残されているため、外観も内部も昔のままの状態で見学できるのは、奈良井宿でもここだけ」(塩尻市教育委員会)とのこと。
昭和44年、中村邸を日本民家園(神奈川県川崎市)に移築する話が持ち上がり、それを機に奈良井宿の町並み保存の機運が高まり、現在では町並み全体が塩尻市奈良井重要伝統的建造物群保存地区(国の重伝建)に指定されています。

『木曽街道六拾九次』岐阻街道奈良井宿名産店之図(渓斎英泉画)
『木曽街道六拾九次』岐阻街道奈良井宿名産店之図(渓斎英泉画)
中村邸
名称 中村邸/なかむらてい
所在地 長野県塩尻市奈良井
関連HP 奈良井宿観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR奈良井駅から徒歩12分
ドライブで 長野自動車道塩尻ICから約25km
駐車場 西駐車場(51台/無料)・東駐車場(12台/無料)・道の駅奈良井宿橋駐車場(28台/無料)
問い合わせ 中村邸 TEL:0264-34-2655
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
奈良井宿(塩尻市奈良井重要伝統的建造物群保存地区)

奈良井宿(塩尻市奈良井重要伝統的建造物群保存地区)

長野県塩尻市にある、中山道(なかせんどう)の宿場町が奈良井宿。街道時代には、鳥居峠を越える旅人を泊める旅籠が軒を連ねた木曽路最大の宿場町。塗りや細工などの職人も多く、全盛期には「奈良井千軒」とうたわれるほど繁栄。家並みは、塩尻市奈良井重要伝

上問屋史料館

上問屋史料館

長野県塩尻市、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定される中山道の宿場町、奈良井宿。奈良井宿で幕府の役人や諸大名の旅用に、伝馬(てんま)、徒役(かちやく)を管理した上問屋の建物を公開するのが上問屋史料館(かみといやしりょうかん)です。近世末期

木曽の大橋

木曽の大橋

長野県塩尻市、中山道奈良井宿を流れる奈良井川に平成3年に架けられた太鼓橋が木曽の大橋。橋脚を用いない木橋では日本一(架橋時)という、長さ33m、幅6.5m、水面からの高さ7mの大橋です。樹齢250年~300年の地元の木曽ヒノキを使用した豪華

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

ABOUTこの記事をかいた人。

アバター画像

日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ