稲荷山古墳

行田市にある埼玉古墳群(さきたまこふんぐん)で最初に築造されたと推測される古墳が稲荷山古墳。5世紀後半に造られた全長120mの前方後円墳で、古墳の上に小さな稲荷社があったのがその名の由来。前方部は昭和12年の沼地の干拓工事による土石採取で破壊されていましたが、現在では復原整備され、往時のかたちを取り戻しています。

埼玉古墳群で最初に築かれた前方後円墳は埼玉の大王の墓!?

稲荷山古墳は、宮内庁から「百舌鳥耳原中陵(もずのみみはらのなかのみささぎ)」として第16代仁徳天皇の陵に治定される大仙陵古墳(大阪府堺市)とかたちが酷似していることからも注目されています。
大仙陵古墳を4分の1に縮小すると、稲荷山古墳となるので、5世紀前半〜5世紀半ばに築かれたヤマト王権の陵墓を参考に、当時の埼玉(さきたま)の大王(大首長)が陵墓を築いたというストーリーができあがるのです。

稲荷山古墳の周囲には2重の堀が巡らされていますが、墳丘の頂上に上がることも可能。
埼玉古墳群で、墳頂に立つことができるのは、稲荷山古墳と石田三成が忍城の水攻めの際に陣を敷いた丸墓山古墳だけです。

晴れていれば墳頂部から100km先の富士山を眺望。

稲荷山古墳からは国宝「金錯銘鉄剣」が出土

昭和43年に行なわれた後円部の発掘調査から2基の主体部(埋葬施設)が発見され、表面に57、裏面に58の金象嵌(きんぞうがん)の銘文が刻まれた金錯銘鉄剣(きんさくめいてっけん)や甲冑、馬具などの副葬品が出土しています。

刻まれた文字には獲加多支鹵大王(ワカタケル大王=雄略天皇/ゆうりゃくてんのう)に仕えた乎獲居(ヲワケ)の功績などが記されており、考古学上も非常に貴重なことから国宝に指定。
出土品はさきたま史跡の博物館の国宝展示室に展示されているからお見逃しなく。

ちなみに乎獲居臣(おわけのおみ)は、金錯銘鉄剣に記された銘文から、意富比垝(比定されるのが大彦命/おおひこのみこと)の子孫で、雄略天皇の命で鉄剣を作ったことがわかります。
乎獲居臣は、当時、現・埼玉県北部を領有する豪族だったとも推測できます。
銘文には「辛亥年七月」と刻まれ、単純に西暦に直せば471年になり、5世紀後半という稲荷山古墳の築造年にも一致します。

乎獲居臣を畿内に住むヤマト王権の有力首長で、その配下の埼玉の大王(大首長)が剣を下賜された可能性、あるいは東国に派遣されて死没し陵墓に埋葬された可能性もあり、埋葬者は定かではありません。

国宝「金錯銘鉄剣」(表面)
国宝「金錯銘鉄剣」(裏面)
稲荷山古墳
名称稲荷山古墳/いなりやまこふん
Inariyama Burial Mound
所在地埼玉県行田市埼玉
関連HP行田市公式ホームページ
埼玉県立さきたま史跡の博物館公式ホームページ
電車・バスでJR吹上駅から朝日バス佐間経由行田車庫行きで15分、産業道路下車、徒歩15分。JR北鴻巣駅からさきたま緑道を徒歩1時間
ドライブで東北自動車道羽生ICから約14km
駐車場さきたま古墳公園駐車場(295台/無料)
問い合わせ行田市観光協会 TEL:048-556-1111/FAX:048-553-5063
埼玉県立さきたま史跡の博物館 TEL:048-559-1111
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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