旧八十五銀行本店本館

旧八十五銀行本店本館

埼玉県川越市、川越市川越伝統的建造物群保存地区に選定される蔵造りの町並み(川越一番街商店街)の一画に建つレトロな洋館が、旧八十五銀行本店本館。現存する建物は、明治26年の川越大火で焼失後、大正7年の竣工で、国の登録有形文化財に指定。

商都・川越の繁栄を背景に建てられた銀行の本店

旧八十五銀行本店本館

明治5年に国立銀行条例が制定されたのを受け、埼玉県随一の商都として繁栄していた(人口も当時は埼玉県一)川越の豪商たちは渋沢栄一に銀行設立を請願。
さらに明治11年、川越藩の御用商人だった豪商の綾部利右衛門(あやべりうえもん/屋号「麻利」)、黒須喜兵衛(呉服商)、横田五郎兵衛(よこたごろべえ/米穀商)、山崎豊(やまざきゆたか/菓子商、4代目山崎嘉七)たちは、大蔵卿・大隈重信に国立銀行設立願を提出し、12月17日、川越町南町177の横田五郎兵衛邸屋敷の一角を借りて、第八十五国立銀行が誕生します。
これが、埼玉県初の国立銀行で、筆頭株主は綾部利右衛門と黒須喜兵衛のふたり。

綾部利右衛門は、綾部家の10代目。
先代は新河岸川の運河の開削に巨費を投じた川越藩御用達の豪商で、文明開化とともに、川越商業会議所の初代会頭に就任、川越馬車鉄道、川越電灯を設立するなど川越の近代化に尽力し、川越市の初代市長を務めています。

横田五郎兵衛は、新河岸川の舟運で財を成し、幕末に川越藩の藩財政を支えた豪商に生まれ、銀行設立後は頭取に就任。

山崎豊は、武蔵国川越藩の御用達の菓子商「亀屋」で、明治25年に第八十五国立銀行頭取、明治33年には埼玉県で最初の川越商業会議所(現在の川越商工会議所)を発足させ、初代会頭に就任しています。

明治11年開業の第八十五国立銀行は、明治31年に民営化されて八十五銀行となり、昭和18年に武州銀行、飯能銀行、忍商業銀行と大合併し、埼玉銀行(現・埼玉りそな銀行)となっています。

ネオルネサンスリバイバル(ネオルネッサンス/銀座の和光本館が有名)を基調に、ゼブラ模様の付け柱やアーチ部分がサラセン風にデザインされた洋風銀行建築。
設計は、「三菱一号館」など三菱の丸の内赤レンガ街の設計を担当した保岡勝也(やすおかかつや)、施工は印藤順造。
国内に現存する早期の鉄筋コンクリート建築物としても貴重で、3階建て、八角柱の塔屋と、銅板葺きのドーム形屋根がシンボルとなっています。

2階の応接室には大正時代の照明やソファなど調度品も残されていますが、旧八十五銀行本店本館の建物は令和2年6月19日に銀行としての使用を終え、無人ATMコーナーのみを残し、埼玉りそな銀行蔵の街出張所として営業しています。

保岡勝也の設計は、川越市内では旧山崎家別邸(国の重要文化財)、旧山吉デパート(保刈歯科医院)が現存しています。

旧八十五銀行本店本館
旧八十五銀行本店本館
名称 旧八十五銀行本店本館/きゅうはちじゅうごぎんこうほんてんほんかん
所在地 埼玉県川越市幸町4-1
関連HP 川越市公式ホームページ
電車・バスで 西武新宿線本川越駅から徒歩15分
ドライブで 関越自動車道川越ICから約6kmで市内観光用駐車場
駐車場 市内観光用駐車場(157台/無料)、川越駅東口公共駐車場(286台/有料)、土・日曜、祝日のみ市庁舎南側駐車場(120台/有料)、市庁舎北側駐車場(90台/有料)を利用可能
問い合わせ 川越市観光課 TEL:049-224-5940
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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