【重要文化財】美保関灯台

美保関灯台

島根県松江市美保関町、島根半島最東端の地蔵崎に建つのが美保関灯台。美しい石造灯台は明治31年11月8日に点灯した山陰最古のもので、国の重要文化財、Aランクの保存灯台に指定され、「日本の灯台50選」、「歴史的灯台世界100選」(国際航路標識協会選定)、近代化産業遺産にも選ばれています。

明治31年11月に初点灯した山陰最古の灯台は素敵な石造り

美保関灯台
美保関灯台
美保関灯台マップ

明治32年に浜田港、境港が開港場となり、外国貿易の船が入出港することが決まったため、経ヶ岬灯台、出雲日御碕灯台とともに建設された灯台。

地蔵崎という名は、沖を行く船の安全を願って地蔵様がたくさん奉納されていたことが由来で、灯台もかつては地蔵埼灯台と呼ばれていました(昭和10年2月11日に地蔵埼灯台から美保関灯台に名称変更)。
岬の沖合が古くから交通の要衝であったことがよく分かります。

明治31年11月8日初点灯。
山陰地方最古の石造灯台で、明治初期のブラントン設計の近代灯台を踏襲し(ブラントンは明治9年に離日)、日本人技師が設計、地元・片江村(現・美保関町片江)の石工・寺本常太郎が施工しています。
設計者はブラントンに学んだ航路標識管理所技手・大澤正業ともいわれていますが、定かでありません。

石造りの灯台は、地元で採れる森山石(凝灰質砂岩)を石材として使用(青石畳通りの敷石にも使われています)。
美保関灯台の壁に郵便マークが付けられていたのは、当時、逓信省が建設管理していたから。
併設の旧吏員退息所主屋、倉庫、便所、さらには灯台施設を取り囲む石塀も現存し、いずれも国の重要文化財に指定されています。

また、美保関灯台は、「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」として経済産業省の近代化産業遺産にも認定されています。

塔高(地上〜塔頂)14.0m、灯火標高(平均海面〜灯火部分)82.91m、光達距離は23.5海里(44km)で、毎12秒に1閃光。

旧吏員退息所は「美保関灯台ビュッフェ」に

美保関灯台

旧吏員退息所は、「美保関灯台ビュッフェ」として再生され、喫茶、食事が可能。
カウンター席を含む全席から目の前に広がる日本海の絶景を堪能できます。
看板メニューのイカめし、イカ丼は絶品で、大ヒット商品に。

明治31年から昭和28年まで官舎として使用され、その後も滞在所としては昭和37年まで利用され、べ20名の看守長と延べ51名の補員とその家族が暮らした場所です。
灯台から最寄りの集落となる美保関港までは、山道を2km以上も歩く必要がありましたが、それでも当時の灯台としては便利な方だったとか。
水を天水(雨水)に頼ったため、「入浴等は全く思いも依らぬにて候」と改善の要望が出され、昭和7年に貯水槽が完成しています。
灯台職員の生活はほぼ自給自足だったため、周囲に畑を開墾していました。

灯台の建つ美保関へは、昭和5年5月29日に与謝野晶子・鉄幹夫妻が訪れ、「地蔵崎 波路のはての 海の気の かげろうとのみ 見ゆる隠岐かな」(与謝野晶子)、「地蔵崎 わが乗る船も 大山も 沖の御前も 紺青のうへ」(与謝野鉄幹)という歌を残しています(灯台横に与謝野鉄幹・晶子の歌碑が立っています)。
昭和6年に灯台を訪れた人は年間5000人もいたことがわかっています。
昭和7年には高浜虚子が訪れ、「烏賊(いか)の味 忘れで帰る 美保の関」と詠んでいます。

参観灯台ではないため、内部の公開は海の日のみとなっています(参観が目的の場合は事前に確認を)。

美保関灯台

山陰海岸に残る歴史的灯台

明治時代には124基の沿岸灯台が、全国各地に建設されましたが、現存するのは64基のみ。
山陰海岸周辺の日本海側(第八管区海上保安本部管内)には、経ヶ岬灯台(京都府京丹後市/明治31年12月25日初点灯/近代化産業遺産認定、国の重要文化財)、出雲日御碕灯台(島根県出雲市/明治36年4月1日初点灯/近代化産業遺産認定、国の重要文化財)、馬島灯台(島根県浜田市/明治31年5月1日/山陰海岸最古のレンガ造り灯台)、少し離れて立石岬灯台(福井県敦賀市/明治14年7月20日/第八管区管内でもっとも古い灯台、国の登録有形文化財)が残されています。

【重要文化財】美保関灯台
名称美保関灯台/みほのせきとうだい
所在地島根県松江市美保関町美保関
関連HP松江観光協会公式ホームページ
ドライブで米子自動車道米子ICから約33km
駐車場美保関灯台駐車場(200台/無料)
問い合わせ松江観光協会 TEL:0852-27-5843/FAX:0852-26-6869
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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