肥前浜宿酒蔵通り(鹿島市浜中町八本木宿伝統的建造物群保存地区)

肥前浜宿酒蔵通り(鹿島市浜中町八本木宿伝統的建造物群保存地区)

佐賀県鹿島市、旧長崎街道の多良往還(多良海道)が町を貫く浜中町八本木宿。浜川左岸に位置し、右岸の浜庄津町浜金屋町(庄金地区)と並び、重要伝統的建造物群保存地区(鹿島市浜中町八本木宿伝統的建造物群保存地区)に指定されているのが肥前浜宿酒蔵通り一帯です。

酒造業で栄えた町並みを探勝

茅葺きの町家が連なる庄金地区(鹿島市浜庄津町浜金屋町伝統的建造物群保存地区)とは異なり、いかにも商人の町といった白壁土蔵が軒を連ねていますが、これは元禄年間に始まる醸造業の影響によるもの。
最盛期には十数軒を数えて酒造業で栄えましたが、度々大火に見舞われ、防火・耐風機能を備えた居蔵造(いぐらづくり)の町家や昭和初期には真壁造(しんかべづくり=柱や梁などの建物の軸組が表面に見える壁)の町家が造られるようになりました。

現在、肥前浜宿酒蔵通りと呼ばれる道沿いには富久千代酒造、光武酒造場、峰松酒造場という3つの酒蔵が製造を続けており(峰松酒造場では試飲もできます)、近代に建てられた旧魚市場、下見板張りの洋館もあり、レトロな街並みを形成しています。
中島酒造場では現在酒造りは、唐津市の鳴滝酒造に委託製造していますが明治18年築という建物で試飲が可能。
飯盛酒造も酒造りはやめていますが、酒蔵で酒粕を使って粕漬を製造販売しています。

水路もよく整備され、大正期のレンガ蔵、茅葺きの民家など、近世後期から昭和に至る様々な時代の多様な建築が残され、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

伝統的建造物のうち、肥前浜宿継場(ひぜんはましゅくつぎば)、富久千代酒造(ふくちよしゅぞう)、呉竹酒造、飯盛酒造、中島酒造場、旧中島政次家住宅は、国の登録有形文化財に指定されています。

佐賀県内には浜中町八本木宿のほか、鹿島市浜庄津町浜金屋町伝統的建造物群保存地区、嬉野市塩田津伝統的建造物群保存地区、有田町有田内山伝統的建造物群保存地区の合計4ヶ所の国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)があります。

肥前浜宿とは!?

肥前浜宿とは、鹿島市山中から有明海に注ぐ、浜川河口近くに栄えた港町と宿場町を総称する造語。
肥前国(佐賀県)の浜町の宿場という意味から「肥前浜宿」と名付けられたもの。
2つの重要伝統的建造物群保存地区からなり、浜川右岸の海側に位置するのが、中世から河港(津)として知られた漁師町・庄津(南舟津)地区と職人商人の町・金屋地区をあわせた鹿島市浜庄津町浜金屋町伝統的建造物群保存地区、通称「庄金地区」。

一方、浜川左岸が、浜中町八本木宿地区で、おもに近世以降、長崎街道多良往還(多良海道)が縦断する宿場町として発展。
なかでも鹿島藩の高札場があった浜大橋のたもと・浜中町(中町)から、本陣や継場が置かれた八木本宿(八宿)にかけての450mほどが、通称「酒蔵通り」と呼ばれる往時のメインストリートです。

17世紀末に始まった酒造業で町が潤い、土蔵造りの酒蔵や文政11年(1828年)の大火以降は漆喰(しっくい)で防火・耐風機能を施した居蔵造(いぐらづくり)の町家が築かれました。
昭和初期のピーク時には、その数17軒にものぼったほど。

現在酒蔵は3軒を残すのみですが、今も酒蔵通りには白壁土蔵の町家、洋館などが軒を連ねており、往時の面影を色濃く残しています。
川にしじみがいたほどという、多良山系の清冽な湧水と良質な米に加え、有明海の海産物も豊富かつ用意に手に入る肥前浜宿は、かまぼこの製造業も盛んで、最盛期には13軒ものかまぼこ屋がありました(現在もかまぼこは肥前浜宿名物)。

そんな歴史を背景に、酒蔵通りの中町には、昭和39年まで営業を続けていたという旧魚市場の建物も残されており、ここに鹿島中の鮮魚が集まっていたのです。
通りに面した建物妻面の白壁には、漆喰で「魚市場」と描かれた文字が今も残されているので、お見逃しなく。

肥前浜宿酒蔵通り(鹿島市浜中町八本木宿伝統的建造物群保存地区)
名称 肥前浜宿酒蔵通り(鹿島市浜中町八本木宿伝統的建造物群保存地区)/ひぜんはまじゅくさかぐらどおり(かしましはまなかまちはちほんぎしゅくでんとうてきけんぞうぶつぐんほぞんちく)
所在地 佐賀県鹿島市浜町一本松
関連HP 鹿島市観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR肥前浜駅から徒歩5分
ドライブで 長崎自動車道武雄北方ICから約19.4km。または、嬉野ICから約17.5km
駐車場 まちなみ駐車場(無料)
問い合わせ NPO法人肥前浜宿水とまちなみの会 TEL:0954-69-8004
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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