大井川鐵道井川線・日本一の急勾配(90‰)

大井川鐵道井川線・日本一の急勾配(90‰)

静岡県榛原郡川根本町、大井川鐵道井川線のアプトいちしろ駅〜長島ダム駅間は、最大90‰(パーミル)という日本一の急勾配。その急勾配をラックレールを敷いたアプト式で克服しています。アプトいちしろ駅を出発すると、いきなり最初のカーブから90‰の登坂となります。

日本の鉄道技術を結集して90‰をアプト式で克服

長島ダム(平成14年完成)の建設に伴って、井川線の一部区間が水没するための線路の架替えで、アプトいちしろ駅(標高396m)〜長島ダム駅(標高485m)の間は、わずか1.5kmですが89mも標高差があるため、その標高差を克服するために、ループ線ではなく、アプト式が採用されたもの。

井川線ではディーゼル機関車(DD20)が客車を牽引していますが、アプト式の区間のみ、専用の電気機関車(ED90)に付け替えられます。

しかもアプトいちしろ駅〜長島ダム駅の間には90‰の登坂だけでなく、橋梁、トンネルさらには半径 100m(R100)のカーブも混在する区間で、アプトいちしろ駅のホームから長島ダム駅方面の線路を眺めてみると、R=100(半径 100mの急曲線)90‰の急勾配、市代橋梁という3つの標識が立っており、いきなり「難所」が待ち構えていることがわかります。

昭和38年までアプト式が採用されていた信越本線の最大勾配が66.7‰。
粘着式と呼ばれる通常の鉄道の最大勾配は箱根登山鉄道の80‰なので、90‰という数字が鉄道にとってどれほど大きな数字なのかがよくわかります。
90‰は、1000m走るうちに90m上ることを意味し、長編成の列車の先頭と後端とでは10mの高低差が生まれます。
電気機関車は常に坂下から押し上げる形で付けられますが、客車を坂下側に滑走させないようにブレーキの役割も担っているのです。

このアプト式を復活させるにあたっては、交通土木工学の重鎮、東京大学の八十島義之助名誉教授を委員長に、「アプト式鉄道調査委員会」を発足し、当時の国鉄の鉄道総合技術研究所、大井川鐵道の親会社である名古屋鉄道、ED90形電気機関車の製作を担当した日立製作所、川崎製鉄、日本製鋼所などの技術の粋を結集し、古い技術の復元ではなく、新しい技術を凝縮させて、昭和57年に建設が決まったのです。

ED90形アプト式直流電気機関車は、この井川線のアプト式区間のためだけに開発された機関車で、台車に装備されたピニオン(歯車)が、ラックレールと噛んで、制動力を生み出しています。
ブレーキは、停電しても問題がないように十分な実績のある旧来のブレーキシステムを採用しています。
アプト式導入にあたり、先進国のスイスからの技術導入はなく、橋梁部分なども国内の技術だけ克服した、日本の鉄道技術を象徴する路線にもなっています。

大井川鐵道井川線・日本一の急勾配(90‰)
アプトいちしろ駅ホームからの眺め
大井川鐵道井川線・日本一の急勾配(90‰)
名称 大井川鐵道井川線・日本一の急勾配(90‰)/おおいがわてつどういがわせん・にほんいちのきゅうこうばい(90ぱーみる)
所在地 静岡県榛原郡川根本町犬間
関連HP 大井川鐵道公式ホームページ
問い合わせ 大井川鐵道南アルプスアプトセンター TEL:0547-59-2137/FAX0547-59-2143
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
箱根登山鉄道・日本一の急勾配(80‰)

箱根登山鉄道・日本一の急勾配(80‰)

箱根登山鉄道は小田原~強羅間15kmを約50分で登る日本で唯一の登山鉄道で、最大傾斜は1000分の80(1000m走る間に80m登る)、つまりは80‰(パーミル)で日本一の急勾配。箱根湯本駅(神奈川県箱根町)を強羅に向けて出発すると、いきな

アプトいちしろ駅

アプトいちしろ駅

静岡県榛原郡川根本町にある大井川鐵道井川線の駅が、アプトいちしろ駅。井川線は南アルプスあぷとラインとの愛称がありますが、実際にラック式鉄道(アプト式)を採用しているのは井川線で唯一の電化区間でもあるアプトいちしろ駅〜長島ダム駅間のみで、

長島ダム駅

長島ダム駅

静岡県榛原郡川根本町にある大井川鐵道井川線の駅が、長島ダム駅。平成13年に大井川の上流部に完成した長島ダムの最寄り駅で、このダムの建設によって井川線は一部が水没するため、架替えが行なわれ、アプトいちしろ駅〜長島ダム駅間が日本で唯一のラック

南アルプスあぷとライン(大井川鐵道井川線)

南アルプスあぷとライン(大井川鐵道井川線)

静岡県榛原郡川根本町の千頭駅から静岡市葵区の井川駅までの25.5kmを1時間50分で結ぶトロッコ列車。正式名は大井川鐵道井川線で、日本で唯一のアプト式鉄道(ラック式鉄道)。大井川の電源開発のダム建設の際に物資輸送に築かれた鉄道が観光向けに転

長島ダム(接岨湖)

長島ダム(接岨湖)

静岡県榛原郡川根本町を流れる大井川の上流部、南アルプス山中に築かれた多目的ダムが、長島ダム。大井川総合開発事業の中核施設で、誕生したダム湖が接岨湖(せっそこ)です。ダム建設で大井川鐵道井川線がアプト式に転換され、「南アルプスあぷとライン」の

日本国内に1ヶ所しかない! 珍しい交通システム 11選+2

乗り物好きだけでなく、旅好きなら一度は乗ってみたいのが、「日本で唯一の乗り物、「日本で唯一の交通システム」です。アプト式鉄道、浮上式リニアモーターカー、2階建て絶景ゴンドラ、線路と道路の両方を走るDMV(デュアル・モード・ビーグル)などその

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ