【地図を旅する】vol.12 日本一標高の高い中央分水界は、北アルプス南部に!

日本一標高の高い中央分水界

川の水は中央脊梁山脈で日本海と太平洋に分かれて流れますが、それが中央分水界。標高の高い山であることが多いため中央分水嶺と呼ばれるのが一般的ですが、日本最高所にある分水界が、北アルプス南部の乗鞍岳です。山頂の標高は3025.7mで、三角点は岐阜県高山市にあります。

長野県、岐阜県は中央分水界が県内を横断!

日本一標高の高い中央分水界

日本山岳会の百周年記念事業で行なわれた中央分水嶺踏査は、宗谷岬から佐多岬に至る日本列島の中央分水嶺を調査しています(実際の踏破は平成16年に実施)。
その結果、最低標高の場所は北海道千歳市の新千歳空港で標高20mにも満たない場所(滑走路などになっているため立ち入ることができません)、そして最高所は乗鞍岳だということが、実際の踏破調査からも判明しています。

『安曇節』に、「槍で別れた梓と高瀬めぐりあうのは押野崎(おしのさき)」という山男の間では比較的に有名な歌詞がありますが、槍ヶ岳を水源とする梓川(上高地側に流れています)と高瀬川(北の大町側のダムへと流出)は、穂高神社のお水取り神事が行われるロマンチックな聖地・押野崎で合流、信濃川となって新潟市街で日本海に注いでいます。
つまりは分水嶺ではないことに。

乗鞍岳を水源とするのは日本海側に流れる神通川の支流・高原川(たかはらがわ)、『安曇節』にも登場の梓川、その支流の小大野川(こおおのがわ)、そして伊勢湾(太平洋)に注ぐ木曽川の上流である飛騨川で、まさに中央分水嶺ということに。
南アルプスの北岳(日本第2の高峰)も富士川水系早川の支流である野呂川の源流なので、太平洋側の山ということに。

日本の最高峰・富士山も当然、太平洋側ということに。
伊那谷と木曽谷を隔てる中央アルプス周辺では、野麦峠、鳥居峠、権兵衛峠、善知鳥峠(うとうとうげ)、塩嶺峠(えんれいとうげ=塩尻峠)が中央分水界で、いずれもかつての街道の峠越えの場所です。

もし乗鞍岳でなければ、可能性としては乗鞍岳の東西に位置する高峰ということになりますが、美ヶ原、霧ヶ峰など乗鞍岳を超える3000m峰がないため、地図から判別しても乗鞍岳ということがわかります(長野県県郡長和町にある長門牧場から長野県松本市、上田市、 小県郡長和町にまたがる美ヶ原高原までの全長38kmの「霧ケ峰・美ヶ原中央分水嶺トレイル」も整備されています)。

意外なのは、南北で気候や文化の異なる中央脊梁山脈は、旧国境や県境であることが多いのですが、岐阜県と長野県は県の中央に東西に中央分水界が通る地になっているのです。
岐阜県、長野県を旅する際に、中央分水界(中央分水嶺)を意識してみるのも面白いかもしれません。

日本一標高の高い中央分水界
【地図を旅する】vol.12 日本一標高の高い中央分水界は、北アルプス南部に!
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ラジオ・テレビレジャー記者会会員/旅ソムリエ。 旅の手帖編集部を経て、まっぷるマガジン地域版の立ち上げ、編集。昭文社ガイドブックのシリーズ企画立案、編集を行なう。その後、ソフトバンクでウエブと連動の旅行雑誌等を制作、出版。愛知万博公式ガイドブックを制作。以降、旅のウエブ、宿泊サイトにコンテンツ提供、カーナビ、ポータルサイトなどマルチメディアの編集に移行。

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