鳥取県西伯郡大山町、大山山麓ににある天台宗の別格本山が、大山寺(だいせんじ)。奈良時代の養老2年(718年)、金蓮上人(きんれんしょうにん)が創建したと伝えられる古刹で、中国三十三観音第二十九番。大神山神社と並び大山信仰の中心的な存在です(明治以前は神仏混淆でした)。
地蔵信仰は牛馬市も生み出した!
出雲国玉造(現・島根県松江市玉湯町玉造)の出身という猟師・俊方が大山山中で猟をした際、地蔵菩薩に出会い、これまでの殺生を悔い改めて修行を行なって金蓮上人となったというのが開山の由来(『大山寺縁起』)。
そして大山の地蔵信仰の始まりです(俳優・長谷川博己はその末裔とも)。
当初は修験の地として栄えましたが、貞観8年(866年)m円仁(慈覚大師)が顕密両教(顕教と密教)を伝え、天台宗とし、西日本の天台宗の拠点となりました。
平安時代、村上天皇(在位946年〜967年)から大山に祀られる大山権現(地蔵権現)を大智明菩薩とする勅(みことのり)が下され、御本尊を本殿権現社(現在の大神山神社奥宮)に祀って智明権現(ちみょうごんげん)というようになりました。
山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神で、地蔵菩薩が本地仏です(山岳信仰に基づく神体そのものである大山を地蔵菩薩の垂迹としています)。
往時には数十の塔頭(たっちゅう=子院)を擁し、僧兵3000人を抱えていた天台宗の一大拠点として繁栄しました。
大山寺の建つ大山山麓は、山陽と結ぶ交通の要衝であったことからも、山陽方面の農民が牛馬を連れて地蔵詣りするという信仰も生まれました。
享保11年(1726年)には門前の博労座(ばくろうざ=現在の博労座駐車場)で、牛馬市が開かれるまでになり、牛馬市は、備後の「杭の牛馬市」、豊後の「浜の牛馬市」と並んで、「日本三大牛馬市」に数えられるまでに発展しています(牛馬市は、昭和12年に廃絶)。
大山寺は、日本遺産「地蔵信仰が育んだ日本最大の大山牛馬市」の中心的な構成資産にもなっています。
神仏混淆時代の名残にも注目
明治8年の廃仏毀釈で、本殿を大神山神社(現在の奥宮)に譲り、本尊の地蔵菩薩を当時の大日堂(現在の本堂)に遷しています(大山寺は廃寺となり、明治36年に復活)。
その後の火災で仮本堂は焼失し、昭和26年に現在の本堂が再建。
山内各所に残る神仏混淆時代の名残りにもぜひ注目を。
本堂下に建つ下山観音堂の本尊である十一面観音菩薩は白鳳期の金銅仏で国の重要文化財(現在は宝物館霊賓閣に安置)。
円仁(慈覚大師)の創建と伝えられる阿弥陀堂は国の重要文化財。
阿弥陀堂内に安置される阿弥陀三尊も国の重要文化財となっています。
現在残る大山寺支院十ヶ院の一院である圓流院(えんりゅういん)は、水木しげるの天井画110枚で知られ、拝観が可能。
108枚は水木しげる奉納の妖怪の絵ですから、こちらも必見です。
取材協力/鳥取県、大山寺、大山観光局
大山寺の年中行事
1月1日/修正会=国家安穏を祈願します。
2月3日/節分会=除災招福を祈願し、家畜の祈願も行ないます(現在ではペットも)。
春の彼岸/彼岸会=中日に法要を実施。
4月8日/仏生会=花まつり(旧暦の4月8日にも甘茶のお接待を実施)。
5月24日/春季大祭=御輿行幸(みゆき)3年に1回。
8月14日/盂蘭盆会=お盆の行事。
8月15日/施餓鬼会=阿弥陀堂で餓鬼(餓鬼道におちた亡者)へ施しを行なう法要。
秋の彼岸/彼岸会=中日に法要を実施。
9月24日/慰霊祭=過去大山山系で遭難された人の慰霊法要。
10月24日/秋季大祭=『大山紅葉まつり』のメイン行事。
12月31日/除夜の鐘=一般参詣者も撞くことができます。
大山寺の行事は、5月24日が『春季大祭』、10月24日は『大山紅葉まつり』のメイン行事でもある秋季大祭で稚児行列、採灯護摩法会などが行なわれます。
『春季大祭』では、神仏混淆時代の名残である『大山寺御幸』(だいせんじみゆき=御輿行幸)が3年に1回執り行なわれます。また、毎月18日には阿弥陀堂御開帳が行なわれています。
大山寺・御輿行幸(みこしぎょうこう)
平安時代に始まった大山寺の祈願法要で、僧兵・猿田彦・カラス天狗たちの先導で、巨大な御輿が大山寺参道を練り歩きます。
2017年5月24日、2020年5月24日(コロナ禍で中止)、2023年5月24日 という具合に御輿行幸は、3年に一度、5月に斎行されています。
大山寺 | |
名称 | 大山寺/だいせんじ |
所在地 | 鳥取県西伯郡大山町大山9 |
関連HP | 大山寺公式ホームページ |
電車・バスで | JR米子駅から日交バス大山寺行きで50分、大山寺下車 |
ドライブで | 米子自動車道米子ICから約13km |
駐車場 | 博労座駐車場(600台/無料、スキーシーズンは有料) |
問い合わせ | 大山寺 TEL:0859-52-2158/FAX:0859-52-2728 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |