常念岳「常念坊」雪形

常念岳「常念坊」雪形

白馬岳、蝶ヶ岳など、北アルプスには雪形が山名になっているものがありますが、安曇野から眺めるピラミッド型の山容が印象的な常念岳(2857m/長野県安曇野市・松本市)もその派生。春先に前常念岳(2661.9m/安曇野市)の東面に常念坊が現れますが、由来ではないものの山名にリンクした雪形です。

袈裟を着た僧が、徳利を下げる姿が出現

常念岳「常念坊」雪形

常念岳(2857m)の雪形は、前常念岳(2661.9m)東面にできるため、安曇野市豊科から穂高地区一帯から確認できますが、山名の由来にリンクする常念坊は、例年、4月中旬〜5月初旬に出現と、田植えには少し早い時期(早生は田植えをしますが、旧来の米だと田植えの準備を整える時期)。
前常念岳北側の谷に、袈裟を着た僧が、徳利を下げているような姿の黒い岩肌が雪形となって現れます。

常念岳の山名は、江戸時代、正保年間(1644年〜1648年)の『国絵図』には、乗鞍岳と記され、享保9年(1724年)の『信府統記』には常念岳とあるので、江戸時代半ばに常念岳となったことがわかります。
『南安曇郡誌』には、田尻村(現・長野県安曇野市堀金三田田尻)の正福院の常念坊という修験者が登山したことで常念岳となったと記されています。
雪形の常念坊が徳利を手にする姿なのは、毎年、年の暮れになると五合徳利を手にした山姥が里に酒を買いに現れ、2升、あるときは5升入れてくれと要求。
入るはずがないと押問答の後、実際に五合徳利には5升がすっかり入ってしまうので、常念岳の精か、鬼神の仕業だろうと考え、その後、常念坊だったといわれるようになったという伝承から。

ウォルター・ウェストン『日本アルプスの登山と探検』には、ガイドから聞いた山名の由来が記されています。
それによると、昔、常念岳で盗伐をしていた樵(きこり)が、山中で常に念仏が聞こえてくるので、罪の意識に耐えかね、討伐を止めて山を逃げ出したことから常に念仏を唱える山ということで常念岳となったということです。

ガイドブックや、ネットでこの常念坊の雪形が、農作業の合図と記されていますが、実は、春の農作業の始まりを告げるのは、前常念岳南側の谷に5月中旬〜下旬に雪渓となって現れる万能鍬(ばんのうくわ)の方で、常念坊は、農作業の準備を整えよという合図です。

常念岳「常念坊」雪形
常念岳
名称 常念岳/じょうねんだけ
所在地 長野県松本市安曇上高地
関連HP 安曇野市公式ホームページ
問い合わせ 安曇野市観光交流促進課 TEL:0263-71-2000/FAX:0263-72-1340
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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