千葉県銚子市の外川漁港(とかわぎょこう)の西方、名洗(なあらい)から刑部岬(ぎょうぶみさき/旭市)にかけての10kmにわたる海岸沿いには、高さ40m〜50mの断崖絶壁が連なリますが、これが屏風ヶ浦。水郷筑波国定公園に指定され、イギリスとフランスを隔てるドーバー海峡の白い崖を思わせることから、「東洋のドーバー」との別名がある絶景の地です。
国の名勝、天然記念物に指定の断崖を眺めよう
太平洋の海食によって年々陸地が後退しているさまを、崖下、そしてポイントを探せば崖上から眺望可能。
ドーバー海峡は石灰岩質の白亜の崖ですが、「東洋のドーバー」と自称する屏風ヶ浦は下から順に名洗層、飯岡層、香取層、関東ローム層で、屏風ヶ浦の下部を占める飯岡層は灰白色。
地表部の赤褐色は富士や箱根火山の火山灰からなる関東ローム層となっていて、海岸部から見上げれば地層の観察も可能。
草彅剛(SMAP)主演のテレビドラマ『僕の生きる道』(平成15年)のエンディングのシーンにこの断崖が登場し、注目を浴びたことも。
また、映画『県庁の星』のロケ地にもなっています。
名洗港から屏風ヶ浦遊歩道を歩こう
長大な断崖は、崖の上を「銚子ドーバーライン」(千葉県道286号愛宕山公園線)が並走していますが、途中から崖下へと下る道はすべて閉鎖されています。
というわけで、銚子市の名洗港や旭市側の飯岡漁港から眺望するのが無難。
名洗港海浜公園・銚子マリーナ海水浴場からは西の屏風ヶ浦へとのびる遊歩道も整備されています(高波時などは歩行不可)。
公共交通機関利用の場合は外川駅〜名洗バス停(千葉交通バス名洗線で銚子駅に戻る)というのが一般的。
現在は海岸に消波ブロックが配されていますが、このブロックがなければ毎年5〜6mも浸食で海岸が後退すると推測され、鎌倉時代にははるか数キロ沖に海岸線があったと想像されています。
波によって海面近くの高さに穴(海食窪)ができる、穴の上面が崩壊する、崩壊した土砂が波に運ばれるというプロセスを繰り返し、侵食が進むことで草の生えない断崖が生まれたのだとか。
現在、消波ブロックが置かれたことで、浸食のスピードが抑えられ、草が茂るようになりましたが、土砂の供給量が減少したため、九十九里浜の砂浜が減少しているというマイナス面も生まれています。
ちなみに屏風ヶ浦の断崖上を走る千葉県道286号愛宕山公園線は、かつての銚子有料道路。
ドライブには絶好の道です。
広重『六十余州名所図会』に見る 屏風ヶ浦
銚子ジオパークのジオサイトにもなっている屏風ヶ浦。
こんな絶景を江戸時代の文人や絵師が放っておくはずもありません。
江戸時代には、利根川の水運などを使い成田山詣や、東国三社詣(香取神宮・鹿島神宮・息栖神社の巡拝)の延長線上に隆盛を迎えた「銚子磯めぐり」のゴールにもなっていました。
そんなわけで、あまり知られていませんが、当時、下総国では随一の景勝地として知られ、銚子界隈は江戸からの物見遊山の旅人で賑わっていました。
広重が描いたこの絵は、銚子の犬若海岸(銚子市犬若浦)で、右側が屏風ヶ浦、左の岩は、源義経が岩の洞窟に千騎の兵を隠したという伝説を有する千騎ヶ岩です。
『六十余州名所図会』では、銚子周辺の海岸では安房小湊内浦(安房国)、九十九里矢さしが浦 (上総国)、常陸鹿嶋太神宮(常陸国)が描かれています。
屏風ヶ浦 | |
名称 | 屏風ヶ浦/びょうぶがうら |
所在地 | 千葉県銚子市小浜町 |
関連HP | 銚子市公式ホームページ |
電車・バスで | JR銚子駅から千葉交通バス千葉科学大学行きで千葉科学大学マリーナ前下車、徒歩6分で屏風ケ浦遊歩道入口。または、JR銚子駅から千葉交通バス名洗行きで10分、終点下車、徒歩3分 |
ドライブで | 銚子連絡道路横芝光ICから約30.6km。または、東総有料道路大角ICから約30.3km。東関東自動車道潮来ICから約38km |
駐車場 | 20台/無料(名洗港) |
問い合わせ | 銚子市観光商工課 TEL:0479-24-8707 |
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
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