本場のナイアガラの滝が有名なせいか、日本のナイアガラ、東洋のナイアガラなどと通称される滝は、なんと全国に15瀑もあります。ナイアガラの滝にスケールははるかに及ばないものの、岩質の軟らかい部分が削られて硬い部分が残る差別侵食という成因は同じものが多数あり、まさにミニナイアガラといった感じ。
まずは、本物のナイアガラの滝をチェック!
カナダのオンタリオ州とアメリカのニューヨーク州とを分ける国境に懸かる大瀑布が有名なナイアガラの滝(Niagara Falls)。
カナダ側の国境を挟んだカナダ滝(落差56m、幅675m)とアメリカ側のアメリカ滝(落差58m、幅330m)からなり、アメリカ側はさらにルナ島を挟んでブライダルベール滝(落差55m、幅15m)が落ちています。
最終氷期(最後の氷期)の後退期に、氷河が台地を削り形成された崖を五大湖の水が流れ落ちるもので、ナイアガラ断崖は上部30mは、非常に固い石灰岩で、下部30mが頁岩(けつがん=粘土が固まってできた水成岩)。
日本のナイアガラ 15瀑
大滝ナイアガラの滝|北海道伊達市
所在地:北海道伊達市大滝区上野町
規模:落差3m、幅80m
ナイアガラ度:★★☆
太古に海底火山の噴火で誕生した緑色凝灰岩(green tuff/グリーンタフ)の岩盤を流れ落ちる滝。
ナイアガラの15分の1〜20分の1スケールほど規模。
乙字ヶ滝|福島県須賀川市・玉川村
所在地:福島県石川郡玉川村竜崎滝山・須賀川市前田川深田
規模:落差6m、幅100m
ナイアガラ度:★★☆
梅雨時や雨後なら100mの川幅いっぱいに落下する様子が「ミニナイヤガラの滝」のように(「日本の滝百選」選定)。
『奥の細道』途中の芭蕉も増水した滝を見学し、「五月雨(さみだれ)の滝降りうづむ水(み)かさ哉」と歌っています。
幕末の文久2年(1862年)には、舟運のため、川の中央部に通船掘割を設置。
ナイアガラの10分の1スケールほどの規模。
龍門の滝|栃木県烏山市
所在地:栃木県那須烏山市滝414
規模:落差20m、幅60m
ナイアガラ度:★★☆
JR烏山線滝駅から徒歩5分の位置にあり、滝のすぐ上流を烏山線が通過。
浸食により砂岩、頁岩層が削られ、中新世に堆積した火砕岩が残されたもの。
落差はナイアガラの3分の1、幅は15分の1ほどで、知名度はないものの東日本を代表する「日本のナイアガラ」です。
吹割の滝|群馬県沼田市
所在地:群馬県沼田市利根町追貝
規模:落差7m、幅30m
ナイアガラ度:★☆☆
片品川が、岩質の軟らかい部分を浸食し、多数の割れ目を生じ、割れ目の両面から、水が豪快に流れ落ちるもので「日本の滝百選」に選定。
「東洋のナイアガラ」の別名もあり、NHK大河ドラマ『葵 徳川三代』のオープニングにも使われています。
落差はナイアガラの8分の1ですが、幅が30分の1ほどで少しスケール感が足りないのが残念。
鮎壺の滝|静岡県沼津市・長泉町
所在地:静岡県沼津市大岡3294ほか
規模:落差10m、幅90m
ナイアガラ度:★★☆
1万年前に富士山から流出した三島溶岩流と、愛鷹ローム層の境界に位置し、柔らかいローム層が先に浸食され、残された固い溶岩流が滝を形成。
通常は2条、増水時には最大4条となり、ナイアガラ度を増します。
落差的にはナイアガラの5分の1ほどですが、幅は10分の1。
宮島峡・一の滝|富山県小矢部市
所在地:富山県小矢部市名ケ滝
規模:落差3m、63m
ナイアガラ度:★★☆
地元で「富山のナイアガラ」と呼ばれる滝で、幅はナイアガラの15分の1スケールとなかなかの健闘。
十二ヶ滝|石川県小松市
所在地:石川県小松市布橋町・沢町
規模:落差5m、幅36m
ナイアガラ度:★☆☆
12本の筋となって郷谷川の水が落ちるのがその名の由来。
4月〜6月には雪解けで増水し、春から初夏が滝も迫力を増し、ミニナイアガラと化します。
落差はナイアガラの10分の1、幅は30分の1で、もっと注目されてもいい滝であることは間違いありません。
蔦の渕|愛知県東栄町
所在地:愛知県北設楽郡東栄町下田花田
規模:落差10m、幅70m
ナイアガラ度:★★☆
地元では「奥三河のナイアガラ」と呼ばれる滝。
珪化安山岩(火成岩)の断崖に懸かる滝で、滝壺部分は柔らかい黒色泥岩で、ナイアガラの滝と同じ差別浸食で誕生した滝。
愛知県民でも知る人の少ない滝ですが、今後、注目度アップは確実。
金引の滝|京都府宮津市
所在地:京都府宮津市滝馬
規模:落差40m、幅20m
ナイアガラ度:★☆☆
数条に分かれ、岩肌を滑るように流れ落ちる優美な滝は右側が男滝、左側が女滝と2つに大別されています(その点はナイアガラと同じ)。
6000万年ほど前に誕生した宮津花崗岩(黒雲母花崗岩)に発達する垂直な節理(断層)面に沿って形成されたもので、京都府では唯一、「日本の滝百選」に選定。
落差はかなりいい線ですが、幅が50分の1とスケール感が不足しています。
黒滝|兵庫県三木市
所在地:兵庫県三木市吉川町金会142地先
規模:落差4m、幅30m
ナイアガラ度:★☆☆
泥岩が地殻変動を受けず水平のまま一枚岩となり、段差を生じたもので、地元ではミニナイアガラと呼ばれています。
幅はナイアガラの30分の1スケール。
沈堕の滝(雄滝)|大分県豊後大野市
所在地:大分県豊後大野市大野町矢田
規模:落差17m、幅93m
ナイアガラ度:★★★
地質的には柱状及び水平節理が発達した、溶結凝灰岩の滝(阿蘇火砕流堆積物が生み出した滝)。
文明8年(1476年)には、雪舟が沈堕の滝を訪れ『鎮田瀑図』を描いています。
150年前の滝の位置は、現在よりも約240m下流にあったと推測され、水流の豊富さが裏付けられます。
落差はナイアガラの3分の1スケール、幅は10分の1スケールで、地元では「豊後のナイアガラ」と呼ばれています。
三日月の滝|大分県玖珠町
所在地:大分県玖珠郡玖珠町小田中泊里
規模:落差10m、幅150m
ナイアガラ度:★★★
玖珠川が逆U字形に蛇行した場所に落ちる滝で、周辺は三日月の滝公園が整備されています。全国的にはまだまだ無名の滝ですが、スケール的にもナイアガラの6分の1ほどで、ナイアガラ度では日本でもトップクラス! 恐るべし、大分県といった感じです。
原尻の滝|大分県豊後大野市
所在地:大分県豊後大野市緒方町原尻
規模:落差20m、幅120m
ナイアガラ度:★★★(ナイアガラ度日本一)
阿蘇山大爆発で流れた溶岩の台地が削られたものと推測される滝で(超巨大火砕流の痕跡)、その姿は「東洋のナイアガラ」とも(「日本の滝百選」選定)。
落差はナイアガラの3分の1、幅は9分の1ほどですが、その美しい姿から九州ではナイアガラ的な滝として有名です。
曽木の滝|鹿児島県伊佐市
所在地:鹿児島県伊佐市大口宮人635
規模:落差12m、幅210m
ナイアガラ度:★★★
千畳岩の岩肌を削るように流れ落ちる様から「東洋のナイアガラ」と称される名瀑。
地質的には加久藤カルデラ形成に伴う大規模な火砕流(加久藤火砕流)の溶結凝灰岩が浸食されたもの。
本場ナイアガラの5分の1スケールで、実は日本で一番ナイアガラ度の高い滝です。
サンガラの滝|沖縄県竹富町(西表島)
所在地:沖縄県八重山郡竹富町上原
規模:落差3m、幅30m
ナイアガラ度:★☆☆
サンガラの滝は通称で、地元では単に「西田川の滝」と呼ばれています。
西表島は隆起準平原で、島中心の台地(準平原)の縁(へり)に懸かる滝。
沖縄の滝では珍しい「裏見の滝」です。
スケールは小さく、まさに箱庭的なナイアガラ。
日本のナイアガラ 15瀑 | |
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