雲仙地獄

雲仙地獄

雲仙温泉街の中心にあり、最も噴気活動が激しい大叫喚地獄をはじめお糸地獄、清七地獄、八万地獄、泥火山など30あまりの地獄が点在する地熱地帯が雲仙地獄。キリシタン殉教の地でもあり殉教碑が立てられています。また、映画『君の名は』(昭和28年公開)のロケ地にもなった場所で、主人公・氏家真知子の名が付いた「真知子岩」もあります。

「体感する地獄」へと変身した雲仙地獄で自然観察

雲仙地獄
江戸時代に噴出した清七地獄
雲仙地獄
今も噴気を上げる清七地獄
雲仙地獄
大叫喚地獄の展望台
雲仙地獄
間近だと音も轟く大叫喚地獄

雲仙地獄一帯は、島原半島ジオパークを代表するジオスポットにもなっており、自然観察、さらには江戸時代のキリシタン処刑の地、明治以降国際的なリゾート地として発展した雲仙の歴史を学ぶにも絶好の地になっています。

島原の乱以降の鎖国時代、島原半島の隠れキリシタンは、キリシタンだとわかると雲仙で処刑されました。長崎に住む清七という男が捕えら、処刑されたときに湧き出したのが清七地獄なんだとか。
島原城下のお糸という悪女が不義密通の上、夫を殺害した罪で処刑された際に湧き出したのがお糸地獄。
お糸地獄近くに純愛映画『君の名は』第3部のロケ地「真知子岩」があるのも歴史の皮肉でしょうか。

旧八万地獄は、映画『君の名は』のロケ時を含め、50年ほど前までは活発な噴気が見られましたが、現在では活動が終焉し、ススキやアカマツなどの植物が茂り始めています。
別府の地獄もかつては地獄だった場所が公園になっている部分もあり、一周30分ほどの遊歩道を歩けばそうした地熱活動の変遷を観察することもできます。

逆に今も活発な地熱活動があるのが東端の大叫喚地獄。
噴気口から聞こえてくる低音が地獄からの叫び声や喚き声(わめきごえ)に聞こえるというのがその名の由来です。

実は、雲仙地獄の火山活動は西側が衰え、東側が盛んという傾向があり、西の旧八万地獄、さらにカキツバタの咲く原生沼もかつては地獄だった場所です。
旧八万地獄はちょっぴり月面を連想させるため、月面地獄とも呼ばれています。

雲仙地獄
雲仙地獄めぐりMAP

「体感する地獄」へと変身した雲仙地獄で自然観察

雲仙地獄
島鉄バス雲仙営業所の正面にある八万地獄
雲仙地獄
八万地獄全体を眺望する八万地獄展望台

国道57号を挟んで東側が地熱活動が活発なエリア。
八万四千の煩悩によってなされた悪行の果てに落ちる地獄というのが八万地獄。
逆に西側が火山活動が弱まったエリアで、旧八万地獄があります。

雲仙地獄のエネルギー源は橘湾の海底のマグマ溜りだと推測され、高温高圧の火山ガスが地下水などに触れて高温熱水の噴気となって空気中に放出。
これがシューシューと音を立てて吹き出している噴気の正体です。
噴気の最高温度は120度もあるのでくれぐれも近づかないように。

平成27年のリニューアルで、「見る地獄」から「体感する地獄」へと変身し、足をつけて地熱パワーを体感する「雲仙地獄 足蒸し」(裸足や長時間同じ場所に足を置くなどの利用は火傷の原因となるのでご注意を)、地獄の蒸気を使って蒸し上げる名物の温泉たまごを販売する「雲仙地獄工房」、購入した温泉たまごを持参すれば地獄を眺めながら味わえるという東屋「雲仙地獄見台」が用意されています。

「雲仙お山の情報館」が雲仙地獄のビジターセンターとして入り口に建ち、昭和9年に日本で最初の国立公園に制定された雲仙の歴史や自然を解説しています。

雲仙の地名は、大宝元年(701年)、僧行基によって開山した温泉山(うんぜん)満明寺の山号から由来。
当初は温泉と書いて「うんぜん」と読んだのですが、風流な文人らが「雲仙」という字を当てたのだとか。
明治44年には、長崎県営温泉(うんぜん)公園に指定されています。
昭和9年、雲仙が日本初の国立公園に指定された際、ほかの温泉地と混同しないように、現在の表記「雲仙」に改められました。

雲仙地獄
「体感する地獄」へと変身
雲仙地獄
温泉たまご

映画『君の名は』と雲仙地獄

もともとは菊田一夫の原作で昭和27年〜昭和29年にNHKラジオで放送されたラジオドラマ。
「番組が始まる時間になると、銭湯の女湯から人が消える」と映画化した松竹宣伝部はPRし、昭和28年9月15日、3部作となる『君の名は』第1部が公開されました。
主人公・氏家真知子を岸惠子が演じ、相手役が後宮春樹は佐田啓二(中井貴一の父)。
雲仙が登場するのは、昭和28年12月1日公開の第3部。
全国を転々とする主人公・真知子が勤めるという設定の「雲仙観光ホテル」(建物は当時と変わっていません)。
クライマックスで後宮春樹(佐田啓二)が真知子に会いに来るシーンで「雲仙観光ホテル」が登場。
さらに雲仙地獄でロケが行なわれ、お糸地獄近くの岸恵子が手をついた岩は主人公の名をとって「真知子岩」と名付けられています。
「忘却とは忘れ去ることなり。忘れ得ずして忘却を誓う心の悲しさよ。菊田一夫」の「真知子岩の碑」は国立公園指定50周年記念に建てられたもの。

真知子岩
真知子岩(真知子岩の碑)
雲仙地獄
名称雲仙地獄/うんぜんじごく
所在地長崎県雲仙市小浜町雲仙
関連HP雲仙観光局公式ホームページ
電車・バスでJR諫早駅から県営・島鉄雲仙行きバスで1時間20分、雲仙ビジターセンター前下車、徒歩5分
ドライブで長崎自動車道諫早ICから約34km
駐車場第一〜第五駐車場(186台、※第三駐車場は閉鎖中)、雲仙温泉神社駐車場(21台)、満明寺駐車場(13台)/有料
問い合わせ雲仙温泉観光協会 TEL:0957-73-3434
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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