国東半島(くにさきはんとう)の南西部、大分県豊後高田市の田染盆地(たしぶぼんち)にあるのが、中世の荘園、田染荘(たしぶのしょう)。時代とともに景観を変えることが多い現代にあって、地名、地割、水路が、中世と変わぬ状態で今もほぼ保たれており、「田染荘小崎の農村景観」として、国の重要文化的景観にも選定されています。
もともとは宇佐神宮の荘園
国東半島を形成する両子火山群。
標高は最高峰での両子山(ふたごさん)で標高720.6mですが、中央部の溶岩台地・溶岩ドームとその周りにある侵食された火砕流堆積物の台地で、丘陵地と谷が山麓、海岸に向かって放射状に伸びるという複雑な地形を生み出しています。
古代にはこの谷筋に沿って六郷と呼ばれる集落が開かれ、仁聞菩薩(にんもんぼさつ)は、宇佐八幡神の化身(生まれ変わり)として六郷満山(ろくごうまんざん)と呼ばれる神仏習合の山岳宗教文化が花開きました。
小崎川左岸の台地に広がるこの田染荘小崎地区は、11世紀前半頃に開墾された水田で、中世には宇佐神宮のもっとも重要な荘園「本御荘十八箇所」の根本荘園として栄えていました。
鎌倉時代に元寇を宇佐神宮の祈祷により撃退したとされることもあり、以降は、宇佐神宮の神官の子孫が田染氏を名乗り、田染荘を領有していました。
中世のままに農村風景が現存!
なかでも田染小崎地区は荘官・田染氏の屋敷跡などがあり、田染荘の中心であったことが知られています。
僧侶達の修行場だったという夕日岩屋からは、圃場改良されない美しい曲線の水田や、鎌倉時代の屋敷跡が多数特定できる台薗集落の様子が一望できます。
江戸時代、元禄年間に描かれた村絵図と比べてもほとんど変化がないことが判明しています。
水田では、岩盤や大岩を利用したイゼ(井堰)など、荘園時代に遡る水利慣行が現代に残されています。
また富貴寺大堂、熊野磨崖仏などの仏教文化も根付いています。
「田染荘小崎の農村景観」(たしぶのしょうおさきののうそんけいかん)として国の重要文化的景観に選定されています。
さらに、「クヌギ林とため池がつなぐ国東半島・宇佐の農林水産循環」として国際連合食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems:Giahs)にも認定されています。
現在その一帯を「荘園の里」と称し、景観保持のため毎年、荘園領主(水田オーナー)を募集しています。
『御田植祭』(6月第2日曜)や案山子コンクール、『収穫祭』(10月第2日曜)などのイベントや農作物の宅配も行ななわれている。
また農家に泊まって農作業や田舎暮らしを満喫できる、グリーンツーリズム「農家民泊」も実施。
田染荘 | |
名称 | 田染荘/たぶのしょう |
所在地 | 大分県豊後高田市田染小崎 |
関連HP | 田染荘公式ホームページ |
電車・バスで | JR宇佐駅からタクシーで25分 |
ドライブで | 宇佐別府道路宇佐ICから約28.2km |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag