近江八景(おうみはっけい)は、中国の「瀟湘八景図」(北宋時代成立)になぞらえて、琵琶湖の湖南の名称を8つ選んだもの。江戸時代の初め、公家の近衛信尹(このえのぶただ)の選と推測されています。近年発見された史料から、琵琶湖畔の膳所城(ぜぜじょう)からの眺望を和歌で詠み、選んだものだということがわかっています。
『東海道五十三次』のヒットを背景に『近江八景』を描いた!
歌川広重が描いた錦絵による名所絵(浮世絵風景画)揃物『近江八景』は、広重の代表作にもなっています。
『保永堂版 東海道五十三次』の大ヒットを背景に、同じ版元・保永堂によって1834(天保5)年頃、刊行されています。
広重は、生涯で20種類あまりの『近江八景』シリーズを手がけていますが、傑作とされるのが、この『保永堂』版。
「雨と雪と霧の芸術家」と海外で称賛された広重の真価が発揮された作品です(縦23.3cm×横35.3cm=横位置)
また広重最晩年の傑作で、ゴッホが模写した『名所江戸百景』と同時期に、同じ版元の魚屋栄吉から出版されたものが安政4年の魚栄版。
こちらは、縦36.0cm×横24.5cmの縦位置の画面。
石山秋月
石山秋月(いしやまのしゅうげつ)=石山寺/大津市
石山や 鳰(にお)の海(=琵琶湖)てる 月かげは 明石も須磨も ほかならぬ哉(かな)
瀬田夕照
瀬田夕照(せたのせきしょう)=瀬田の唐橋/大津市
露時雨(つゆしぐれ) もる山遠く 過ぎきつつ 夕日のわたる 勢多の長橋
粟津晴嵐
粟津晴嵐(あわづのせいらん)=粟津原/大津市
雲はらふ 嵐につれて 百船も 千船も浪の 粟津に寄する
矢橋帰帆
矢橋帰帆(やばせのきはん)=矢橋/草津市
真帆ひきて 八橋に帰る 船は今 打出の浜を あとの追風
三井晩鐘
三井晩鐘(みいのばんしょう)=三井寺(園城寺)/大津市
思うその 暁ちぎる はじめとぞ まづきく三井の 入あひの声
唐崎夜雨
唐崎夜雨(からさきのやう)=唐崎神社/大津市
夜の雨に 音をゆづりて 夕風を よそにそだてる 唐崎の松
堅田落雁
堅田落雁(かたたのらくがん)=浮御堂/大津市
峯あまた 越えて越路に まづ近き 堅田になびき 落つる雁がね
比良暮雪
比良暮雪(ひらのぼせつ)=比良山系
雪ふるる 比良の高嶺の 夕暮れは 花の盛りに すぐる春かな
広重の描いた近江八景 | |
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