高月観音の里歴史民俗資料館

高月観音の里歴史民俗資料館

「観音の里」といわれる滋賀県長浜市、国宝十一面観音を祀る渡岸寺観音堂(向源寺)がある高月地区の観音信仰を紹介するミュージアムが高月観音の里歴史民俗資料館。観音様(観音菩薩)とは何なのかから、高月の観音信仰の歴史と宗教的文化的特質までを詳しく解説しています。

観音の里のビジターセンターで、観音信仰を学ぶ

常設展示は、「観音さまとは」、「高月町の歴史と民俗」、「郷土の先覚者」の3テーマに分かれ、「観音さまとは」では観音菩薩とは、さまざまな姿をした観音菩薩、十一面観音とは(頭上面の配置とその意味)、さらに観音像の伝来(インドからの伝来)、観音信仰の歴史、各時代における代表的な観音像を詳細に解説しています。

「高月の歴史と民俗」コーナーでは、仏教伝来以前の古代の高月(畿内・東海・北陸とのつながり)、白山十一面観音信仰・天台文化との習合、己高山仏教文化圏などを紹介。
木造十一面観音坐像(江戸時代、冷水寺所有)など、実際の仏像も収蔵展示され、観音の里めぐりに出かける前に、予備知識を仕入れるにはもってこいの施設になっています。

2階は、ユネスコ「世界の記憶」展示コーナー。
近江国伊香郡雨森村(現・長浜市高月町雨森)出身の江戸時代の儒学者、雨森芳洲(あめのもりほうしゅう=対馬藩に仕えて李氏朝鮮との通好実務を担当)の関係資料を含む外交資料「朝鮮通信使に関する記録」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」に登録されたことを記念して設置されたコーナーです。

湖北「観音の里」で育まれた独自の仏教文化とは!?

奈良時代に南都(平城京)を中心に栄えた仏教文化、北陸・白山の十一面観音信仰(山岳信仰と修験道が融合した神仏習合の神・白山権現は十一面観音菩薩が本地仏)、そして平安時代に比叡山天台宗勢力の影響を受けた密教系の観音信仰をベースにした、独自の習合文化圏が湖北の「観音の里」に伝わる観音像に秘められた仏教文化(神仏習合の文化)です。

向源寺の十一面観音は平安前期の観音像の代表的な作例にとどまらず、日本の仏像の中でもとくに有名な作品ですが、その誕生の裏には実はこうした湖北特有の文化的な背景があったのです。
現在、長浜市は、浄土真宗の勢力が強く、多くの寺が浄土真宗に改宗していますが、往時にはこの地では、対岸の比叡山延暦寺の影響を受け、天台系の密教が栄えていました。

奈良と白山を結ぶルート途上にあり、しかも北陸修験(白山信仰)の最西端にも位置し、向源寺の創建にも白山を開いた泰澄が関与しているとも伝えられています。
また、こうした文化圏が誕生した背景には日本海交流の玄関口で、先進の文化を誇った若狭や能登との交流という側面も見逃すことができません。

集落の数に匹敵するほど多くの観音像が、今も里人に大切に守られている独特の「観音の里」文化は、こうした歴史と風土に育まれているのです。

高月観音の里歴史民俗資料館
名称 高月観音の里歴史民俗資料館/たかつきかんのんのさとれきしみんぞくしりょうかん
所在地 滋賀県長浜市高月町渡岸寺229
関連HP 高月観音の里歴史民俗資料館公式ホームページ
電車・バスで JR高月駅から徒歩10分
ドライブで 北陸自動車道木之本ICから約5km
駐車場 30台/無料
問い合わせ 高月観音の里歴史民俗資料館 TEL:0749-85-2273/FAX:0749-85-2273
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
医王寺

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木之本地蔵院

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