おんせん県のイメージが強い大分県ですが、意外に知られていないのが、絶景の豊富さと、多様さ。わざわざ訪れる価値がある絶景が至るところにある県で、ここでは、ニッポン旅マガジンの視線で、季節、時間帯、気象現象、歴史文化など様々なテーマから取材班が選んだ10景を紹介しましょう。
金鱗湖の朝靄|由布市
由布院の金鱗湖は、湧水と温泉が流れ込んでいるため、年間を通じて水温が高いのが特徴。そのため、放射冷却で冷え込む秋や厳冬期には、朝靄(あさもや)が期待できます。
金鱗湖の湖中にある鳥居がアクセントを添えますが、実はこの鳥居、江戸時代の神仏習合時代には由布岳信仰(山岳信仰)で栄えた佛山寺の鳥居だったもので、明治初年の神仏分離で、金鱗湖畔の天祖神社に移され、湖中に建てられたもの。
慈恩の滝の光芒|玖珠町
大分県日田市と玖珠郡玖珠町の境を流れる山浦川(玖珠川支流)に懸る滝が、慈恩の滝。滝の裏側まで延びる遊歩道もあり、滝裏から落ち口を眺められることから「裏見の滝」とも呼ばれる、異色の滝です。紅葉の美しさも格別で、夜間はライトアップされ、いっそう美しさもアップ。
カメラマンが狙うのが、「慈恩の滝の光芒」。
滝の落口に朝日が差し込み、幻想的な光景を演出(とくに紅葉と光芒のコラボは人気の被写体)。
奈多海岸の朝日|杵築市
九州の東海岸、九州(大分県)と四国(愛媛県)に挟まれた豊後水道(豊後灘)に臨む大分県の海岸線は、各所で朝日を眺めることができますが、元旦の初日の出のスポットとしても人気の場所が、奈多海岸。
日本の白砂青松100選にも選定される風光明媚な海岸ですが、300mほど沖に市杵島浮かび、鳥居アクセントを添えています。
初日の出はこの島から上がりますが、実は、この市杵島は、宗像三女神降臨の地という伝承の島で、神々しい風景なのもうなづけます。
真玉海岸の夕日|豊後高田市
国東半島の北西部、粟嶋神社近くにある遠浅の海岸が真玉海岸(またまかいがん)。潮が引くと干潟が誕生し、そこを夕日が照らして美しい夕暮れを演出します。
一帯(国東半島西海岸)の海岸線は、「大分県内で唯一水平線に沈みゆく夕陽を見ることができる場所」でもあり、落日の時間帯は「ウユニ塩湖のよう」、「日本のウユニ塩湖」という人もいて、SNSで話題になっています。
白水ダム(白水溜池堰堤)|竹田市
秋田市の藤倉水源地、愛知県新城市の長篠堰堤とともに日本三大美堰堤に数えられるのが、昭和13年に完成した白水ダム(白水溜池堰堤)。
「日本一美しいダム」ともいわれ、国の重要文化財に指定されています。
河川法では、堤高が15m以上のものをダムとしているため、堤高が13.9mの白水溜池堰堤は、厳密にいえばダムではないことになりますが、白水ダムと呼ばれています。
普光寺磨崖仏|豊後大野市
大分県で磨崖仏といえば、国宝の臼杵石仏(磨崖仏)が有名ですが、絶景といえば、普光寺磨崖仏。凝灰岩の巨大な岩盤に刻まれた普光寺磨崖仏は、鎌倉時代の磨崖仏で、刻まれる不動明王像の像高11.4mは、国東半島の熊野磨崖仏とともに大分県内最大、日本でも最大級の磨崖仏なのです。
大不動明王を中央に、左に制多迦童子(せいたかどうじ)、右に矜羯羅童子(こんがらどうじ)の脇仏。さらに岩壁が掘り窪められ、仏像が納められている龕(がん)、そのまた右側には龕の中に護摩堂(ごまどう)が並び、圧倒的な迫力で迫ります。
青の洞門・ネモフィラと競秀峰|中津市
本耶馬溪(ほんやばけい)の代表的な景勝地、競秀峰の山裾に江戸時代に手掘りされたのが「青の洞門」(あおのどうもん)。越後高田(現・上越市)出身の僧・禅海(ぜんかい)が、享保15年(1730年)から30年以上もの歳月をかけて、ノミと槌だけでくりぬいたという洞門です。
「樋田の刳抜」(ひだのくりぬき)が正式名ですが、青地区の洞門ということで、青の洞門と呼ばれるようになり、菊池寛『恩讐の彼方に』で知名度は全国区に。
近年、青をモチーフにした町おこしというわけで、青の洞門対岸にネモフィラ畑をつくり、ゴールデンウィーク前後(4月中旬〜5月上旬)の誘客に務めています。
東椎屋の滝・氷瀑|宇佐市
安心院町(あじむまち)にある落差85mの巨瀑で、「九州華厳」(九州の華厳の滝)の別名があるのが、東椎屋の滝(ひがししいやのたき)。
「日本の滝百選」にも選定される滝は、新緑、紅葉の名所ですが、厳冬期には九州では珍しい氷瀑となります。
暖冬の際には凍らない場合もありますが、逆に寒気が押し寄せた時には滝壺まで凍ることもあります。
タデ原湿原の天の川|九重町
大分県道11号(別府一の宮線)・やまなみハイウェイ途中の絶景スポットが、長者原(ちょうじゃばる)にあるタデ原湿原。
中間湿原(泥炭層の発達で、低層湿原と、高層湿原の中間の位置する湿原)としては、くじゅう山中にある坊ガツルとともに国内最大級の面積を誇ります。
長者原ビジターセンターを起点に、車椅子でもOKのタデ原木道が整備されているので、星空を見上げるのにも絶好です。
湯けむり展望台の夜景|別府市
湯けむりたなびく鉄輪温泉(かなわおんせん)を一望にする展望台で、平成13年3月にNHKが募集した「21世紀に残したい日本の風景」で富士山に次いで全国第2位に選ばれています。
気温の下がった冬季などに湯けむり展望台に立てば、モクモクと湯けむりを上げる様を目にすることができるのは、源泉総数、湧出量日本一の別府ならでは(ちなみに2位はともに由布院です)。
大分県の絶景スポット 10景 | |
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