黒部ダム・殉職者慰霊碑

殉職者慰霊碑

富山県中新川郡立山町、北アルプス立山連峰と後立山(うしろたてやま)連峰に挟まれた秘境・黒部川に建設された黒部ダム(黒四ダム)。その建設には、途中で一時期完成を諦めるというほどの難工事が待受、ダム堰堤東側の一角には世紀の大工事で犠牲となった殉職者171名の名前が刻まれた慰霊碑が設置されています。

ダムサイトにある黒部ダム工事殉職者の慰霊碑

殉職者慰霊碑
富山出身の彫刻家・松田尚之の制作

ダム建設にあたっては、北アルプス・黒部奥山の秘境地帯ということで、物資の輸送手段の確保が最重要課題となりました。
下流は黒部下の廊下と呼ばれる峡谷で、宇奈月ルートは、仙人谷ダムで行き止り、長野県大町ルートはトンネル掘削必要、建設当初唯一の選択肢は、立山越えルートでしたが、ヘリコプター輸送と人力輸送には限界がありました。
宇奈月ルートも人ひとりが精一杯の岩壁の桟道のみで、歩荷(ぼっか)の背による物資輸送に頼ることになります。

そこで考案されたのが後立山連峰を貫く大町トンネル(現在の関電トンネル)。
映画『黒部の太陽』の題材ともなった難工事で、大町側の入口から1600mの地点で毎秒660リットルもの地下水と大量の土砂が吹き出す破砕帯(はさいたい)に遭遇。
わずか80mの破砕帯を突破するのに苦闘7ヶ月。
一時は開通が絶望視されるほどの難工事となったのです。

水抜きのトンネルを掘るなど当時の土木技術の粋を結集し、現場の労働者の熱い思いで破砕帯を突破し工事は完成。
黒部ダム駅のレストハウス3階には「くろよん記念室見学」がありダム工事の詳細を紹介しているのであわせて見学を。

殉職者慰霊碑

映画化された新聞連載小説『黒部の太陽』

ちなみに映画の原案となった小説『黒部の太陽』は、昭和39年5月27日〜9月19日、毎日新聞に160回にわたって連載された同名の記録小説に、数十枚の加筆を行なったもの。
「工事で殉職した171人の人々のために紙碑を立てたい」との思いから当時の毎日新聞編集委員・木本正次氏が執筆したもの。

間組(大町トンネル・ダム側迎え掘り)、熊谷組(大町ルート道路・大町トンネル・扇沢側掘削)、大成建設(発電所・変電所・開閉所建設)、鹿島建設(コンクリート骨材製造・運搬)、佐藤工業(黒部ルートトンネル・水路トンネル)の5社が黒部ダム建設を担当。
延べ作業員は、1000万人を数え、請け負った建設会社は5工区に分担し、各社の社運をかけて難工事に挑戦したのです。

殉職者171名の内訳は、転落事故60名、落盤事故49名、車両事故31名、その他雪崩など31名となっています。
ちなみに黒部第三ダム(昭和15年完成)の殉職者は2度にわたる泡雪崩(ほうなだれ)事故による108名、ダイナマイトの自然発火事故8名など300名ともいわれています。

黒部ダム・殉職者慰霊碑
名称 黒部ダム・殉職者慰霊碑/くろべだむ・じゅんしょくしゃいれいひ
所在地 富山県中新川郡立山町芦峅寺
関連HP 黒部ダム公式ホームページ
電車・バスで 富山地方鉄道立山駅、または、関電トンネル電気バス扇沢駅から立山黒部アルペンルート利用
ドライブで 北陸自動車道立山ICから約25kmで立山駅駐車場。長野自動車道安曇野ICから約40kmで扇沢駐車場
駐車場 立山駅駐車場(900台/無料、混雑時は臨時駐車場を600台/無料を開設) 扇沢駐車場(350台/有料、230台/無料、混雑時は臨時駐車場を600台〜800台/有料を開設)
問い合わせ くろよん総合予約センター TEL:0261-22-0804
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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