青岸渡寺

青岸渡寺

那智熊野大社の拝殿右奥にある天台宗の古刹が那智山青岸渡寺(せいがんとじ)。山号は那智山、本尊は如意輪観世音菩薩で、西国三十三所第1番札所。神仏習合時代には熊野那智大社と一体で、花山法皇の西国三十三所観音霊場巡礼の旅はここが出発点となっているのです。「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録。

熊野詣の重要拠点として栄えた古刹は、西国三十三所第1番札所

青岸渡寺
青岸渡寺

寺伝によれば創建は仁徳天皇時代ともいわれ、天竺(インド)から漂流した裸行上人が、那智の滝の滝壺から如意輪観音を得て安置したのが始まりという。
中世以降、隣接する熊野那智大社とともに神仏習合の修験道場となり、熊野詣の重要拠点として栄えました。

戦国時代、織田信長の兵火で焼失しましたが、天正18年(1590年)、豊臣秀吉が再建。
最盛時には7ヶ寺36坊を有しましたが、明治初年の神仏分離、廃仏毀釈で入母屋造の本堂(如意輪堂)を残し、ほとんどが失われてしまっています。

同じ熊野詣の聖地である熊野本宮大社、熊野速玉大社では、仏堂は全て廃されていますが、那智山では如意輪堂(神仏習合時代は「那智の如意輪堂」)が破却を免れ、後に信者の手で青岸渡寺として復興したのです。

本堂と宝篋印塔は国の重要文化財。
現存する本堂は、熊野三山のなかで、廃仏毀釈の荒波を乗り越え、神仏習合時代の姿を今に伝える唯一の建物になっています。

また高さ25mの朱塗りの三重塔は、『那智参詣曼荼羅』などを参考に昭和47年に復元されたもの。
横の展望台は、今も那智滝の全貌を眺望する絶景スポットです。

青岸渡寺境内にある尊勝院(宿坊)は、天皇、皇族の熊野詣での宿泊所だった場所だとか。
尊勝院と本堂の間を熊野古道が通じています。
藤原氏の摂関政治により19歳で皇位を奪われた花山法皇は、出家して那智の滝の上流の二の滝に庵を結び(安倍晴明を呼び寄せたとも)、千日修行を行なっています。
千日修行を終えた花山法皇は、西国三十三所観音霊場巡礼の旅に出たので、青岸渡寺が第1番札所になっているのです。

青岸渡寺
『那智参詣曼荼羅』には神仏習合時代の様子が描かれています

『観音霊験記』に描かれる 如意輪堂(現・青岸渡寺)

青岸渡寺
『観音霊験記 西国巡礼第一番紀州那智山 和泉式部』(広重・豊国)

上段に2代広重の挿絵で如意輪堂(現・青岸渡寺)と二の滝、しめ縄、さらに御詠歌「ふだらく(補陀洛)や岸うつ波は三熊野(みくまの)の那智のお山にひびく滝つ瀬」が描かれています。

下段は3代豊国の挿絵で杖と神歌を記す短冊を手にした和泉式部参詣の姿と、その際の霊験の逸話を記していますが、実は、この絵は和泉式部とともに那智の滝を仰ぐような視線となるトリックが。

和泉式部は熊野参詣のおり、その麓で月の障(つきのさわり=生理)となり、「晴やらぬ身のうき雲のたなびきて 月のさはりとなるぞかなしき」と嘆いたところ、その夜の夢に熊野権現が現れて、「もとよりもちりにまじはる神なれば 月のさはりは何かくるしき」(仏が衆生を救うため、汚れた俗世に身を現しているのだから、月の障りが参詣のさまたげとなることなどあろうか)と告げたという霊験が記されています。

西国三十三所霊場間の距離・時間

1番・那智山青岸渡寺(和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8) — (165km/3時間10分) — 2番・紀三井山金剛宝寺/紀三井寺(和歌山県和歌山市紀三井寺1201) — (29km/1時間) — 3番・風猛山粉河寺(和歌山県紀の川市粉河2787)
※距離と時間はルートや交通状況により変動するため、およその目安です

青岸渡寺
名称 青岸渡寺/せいがんとじ
Seigantoji Temple
所在地 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8
関連HP 那智勝浦町観光協会公式ホームページ
電車・バスで JR紀伊勝浦駅から熊野交通バス那智駅経由那智山行きで28分、神社・お寺前駐車場下車、徒歩15分
ドライブで 阪和自動車道南紀田辺ICから約106km
駐車場 神社お寺前駐車場(30台/神社防災道路通行料が必要)
問い合わせ 青岸渡寺 TEL:0735-55-0404
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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