熊野古道伊勢路 荷坂峠道

熊野古道伊勢路 荷坂峠道

三重県度会郡大紀町(たいきちょう)と北牟婁郡紀北町の境に位置する峠越えの道が熊野古道伊勢路 荷坂峠道(にさかとうげみち)。江戸時代、紀州藩の街道整備に伴って急峻なツヅラト峠道を諦め、東寄りの荷坂峠道を藩道としたものです。世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産にもなっています。

江戸時代初期から公の街道となった新道

ツヅラト峠(標高357m)、荷坂峠(標高241m)ともに伊勢国と紀伊国の国境に位置しますが、紀州藩が荷坂峠を藩道と定めたことで、荷坂峠が紀伊国の正式な玄関口となりました。
ツヅラト峠道に比べはるかに勾配が緩く、道路も広いので歩きやすい街道になりました。

中世、「伊勢へ七度熊野で三度」、「蟻の熊野詣で」といわれた熊野詣は、伊勢の神宮から熊野三山へ、遠く険しい熊野街道(熊野古道伊勢路)を旅する難行苦行を乗り越えて、そして参詣を重ねることで、念願が叶うとされていました。
近世になって、物流の重要性が増したことで、紀州藩は道路改良を行ない、荷坂峠道を整備したのです。

旅人が腰掛けて休んだ憩い石、4月〜5月に咲くオンツツジの群生、海の見える沖見平(現在はヒノキや杉の植林のため、眺望は広がりません)、猪や鹿から田畑を守るために積み上げられた猪垣(ししがき)など見どころも豊富です。

荷坂峠で、旅人は初めて熊野の海を目にし、『北越雪譜』で知られる江戸時代後期の随筆家・鈴木牧之(すずきぼくし)が詠んだ「長嶋や世を遁るなら此のあたり」、「嶋山や霞もこめず千々の景」の句碑も立っています。
鈴木牧之の吟行記『西遊記神都詣西国巡礼』には、「ニサカ峠に見渡せば、海上の絶景筆に尽しがたく、世の人の只熊野路は恐ろしき噂のみ聞へけるにさはなくて、長嶋の町まで一目に見おろす風情いわむかたなし」と記されています。

荷坂峠では、旅籠を兼ねた峠の茶屋「越後屋」が営業していましたが、昭和5年4月29日に紀勢線大内山駅〜紀伊長島駅間が開業し、峠を越える人も減少し、昭和10年頃に廃業しています。

JR梅ヶ谷駅〜JR紀伊長島駅は7.5km、2時間30分ですが(梅ヶ谷駅〜荷坂トンネルは国道を歩く部分があります)、国道42号荷坂トンネル脇から熊野古道に入れば300mほどで荷坂峠に到達できます。

熊野古道伊勢路 荷坂峠道
名称 熊野古道伊勢路 荷坂峠道/くまのこどういせじ にさかとうげみち
所在地 三重県北牟婁郡紀北町東長島
関連HP 三重県立熊野古道センター公式ホームページ
問い合わせ 三重県立熊野古道センター TEL:0597-25-2666/FAX:0597-25-2667
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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