【新・南都八景】薬師寺「南大門付近からの白鳳伽藍全景」

薬師寺「南大門付近からの白鳳伽藍全景」

奈良市の世界文化遺産「古都奈良の文化財」は令和5年で登録から25年の節目を迎えましたが、奈良市観光協会では、12月1日、SNS映えする「新・南都八景」を発表。そのうちのひとつが、薬師寺「南大門付近からの白鳳伽藍全景」。東西に塔を配した「薬師寺式伽藍配置」(白鳳伽藍)が特徴です。

左に西塔、右に東塔という白鳳伽藍をワンフレームに!

薬師寺「南大門付近からの白鳳伽藍全景」
回廊越しに眺める東西の塔

南都七大寺のひとつで、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成資産にもなっている薬師寺は、天武天皇が開基し、その名の通り、薬師如来を中尊とし、日光菩薩を左脇侍、月光菩薩(がっこうぼさつ)を右脇侍とする薬師三尊を本尊とする古刹。

もともとは飛鳥にありましたが、和銅3年(710年)の平城京遷都で、は飛鳥から平城京に移転しています。

中央に本尊・薬師三尊像を祀る金堂、東西に2基の塔を配する日本初となる伽藍配置(白鳳伽藍)は「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれるもので、数次の火災にあって奈良時代に建てられた建築物は東塔
(国宝)のみですが、その他の堂宇も往時のままに復元されています。

入口(玄関)となる南大門をくぐると中門。
中門を入ると正面に金堂、左に西塔、右に東塔がそびえ立ち、金堂の真後ろに講堂が配され、中門から講堂へと伽藍を囲んで回廊がめぐらされるかたちです。
ここで大切なのは、白雉4年(653)第二次遣唐使で入唐した道昭(どうしょう)が、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう=『大唐西域記』で有名)から直接瑜伽唯識(法相教学)の教えを学び、そして日本に伝えた「経塔」(法舎利塔)信仰。
釈迦の遺骨を祀る「舎利塔」だけではなく、「経塔」建立もという教えに沿って、2基の塔を建立する様式が確立し、最初に具現化したのが「薬師寺式伽藍配置」だったのです。

聖武天皇が薬師寺を建立した目的は、皇后(後の持統天皇)の病気治癒の祈願がきっかけとされていますが、薬師寺の村上太胤管主は、薬師如来の東方浄瑠璃浄土を東の果ての国、日本に見立てたと推測しています。
東西の三重塔の各階層にある軒下には、裳階(もこし)と呼ばれる庇(ひさし)が配され、一見すると六重塔のような華やかな雰囲気に。
実は、平城京で、唐に倣い国家建設を進めるダイナミズム(国造りへの熱意)が、この三重塔の躍動感にも反映しているのです。

広大な薬師寺式伽藍配置(白鳳伽藍)のため、ベストショットポイントは悩むところですが、一般に撮影されるのは中門を入った場所で、中央に金堂、左に西塔、右に東塔という構図。
今回、奈良市観光協会が「新・南都八景」を選定するにあたって、あえて「南大門付近からの白鳳伽藍全景」としたのは、複廊と呼ばれる2重構造の回廊を入れなければ薬師寺式伽藍配置(白鳳伽藍)とはいえないからなのでしょう。

【新・南都八景】薬師寺「南大門付近からの白鳳伽藍全景」
所在地 奈良県奈良市西ノ京町457
場所 薬師寺
関連HP 薬師寺公式ホームページ
電車・バスで 近鉄橿原線西ノ京駅から徒歩2分。またはJR奈良駅から奈良交通バス六条山行きで18分、薬師寺下車すぐ
ドライブで 西名阪自動車道郡山ICから約7.5km。第二阪奈道路宝来出口から約5km
駐車場 薬師寺駐車場(100台/有料)
問い合わせ 薬師寺 TEL:0742-33-6001/FAX:0742-33-6004
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
新・南都八景

奈良市で「新・南都八景」が誕生

奈良市の世界文化遺産「古都奈良の文化財」は令和5年で登録から25年の節目を迎えますが、奈良市観光協会では、12月1日、「新・南都八景」を発表。江戸時代に流布していた「南都八景」の令和バージョンで、SNSでの発信を期待し、「映える」場所が選定

薬師寺

薬師寺は680(天武天皇9)年、藤原京に天武天皇が菟野讃良皇后(うののさららひめみこ=のちの持統天皇)の病気平癒のため発願し創建された法相宗の寺で、平城京遷都とともに奈良に移されたもの。日本に仏教が伝えられた時代のままの伽藍(薬師寺式伽藍)

薬師寺・西塔

薬師寺西塔は、1528(享禄元)年の兵火により焼失、礎石のみが残されていたものを昭和56年に453年ぶりに再建。国宝の東塔とほぼ同じ形で、白鳳様式を用いて建てられています。よく見ると東塔は裳階(もこし=軒下壁面に付いた庇状構造物)部分が白壁

薬師寺・東塔

薬師寺・東塔は、730(天平2)年に造営されたと伝わる三重塔。高さ33.6mで各層に裳階(もこし)を付けているため六重に見えるのが特徴。薬師寺は、数度の災害と1528(享禄元)年の兵火により多くの堂宇は焼失していますが、東塔は当時の建造物で

薬師寺・回廊

薬師寺の金堂、大講堂、西塔、東塔を取り囲むのが東西の回廊。薬師寺式と呼ばれる伽藍配置は白鳳時代そのままなのです。回廊のエンタシス風の列柱はヘレニズム文化の影響を残したものともいわれてきましたが、現在では否定的な意見が多いのも事実。昭和43年

薬師寺・金堂

世界遺産「古都奈良の文化財」に登録される薬師寺の伽藍のうち、昭和51年に再建された白鳳伽藍の一部が金堂。金堂は1528(享禄元)年、土地の豪族の戦火で焼失。豊臣秀吉が再建を計画しましたが叶わず、復興は長年の悲願だったもの。国宝・薬師三尊像を

 

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