開国間もない明治時代に、重要な航路を守るために建造され、現役で活躍している灯台は全国で67基。海上保安庁では、そのうちとくに歴史的に重要性が高く、文化資産的にも保存が望まれるものをAランクとして23基を選定。Bランク(10基)、Cランク(16基)、Dランク(18基)と4段階に区分しています。
東北・関東・北陸
尻屋埼灯台(しりやさき)|青森県
所在地:青森県下北郡東通村尻屋崎
初点灯:明治9年10月20日/「日本の灯台の父」ブラントンが設計、東北初の近代的灯台
内容:レンガ造りの灯台としては日本一の高さを誇り、周辺の草原には有名な寒立馬(かんだちめ)が放牧されています
参観灯台で見学が可能
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の登録有形文化財
金華山灯台(きんかさん)|宮城県
所在地:宮城県石巻市鮎川浜金華山
初点灯:明治9年11月1日/「日本の灯台の父」ブラントンが設計、東北では尻屋埼灯台に次ぐ歴史を誇る
内容:灯塔は花崗岩の布積(ぬのづみ)で、上部に青銅製灯室、ドーム型鋼製灯籠を設置し、半円形の付属舎が付いています
昭和20年、太平洋戦争中の空襲で破壊され、昭和21年に電化して復活
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
金華山は島全体が黄金山神社の神域です
文化財:国の登録有形文化財
犬吠埼灯台(いぬぼうさき)|千葉県
所在地:千葉県銚子市犬吠埼9576
初点灯:明治7年11月15日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:灯火部分まで上ることのできる参観灯台
国産のレンガを使っていますが、国際の灯台を二重構造にして強度をもたせています
備考:「世界灯台100選」、「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の登録有形文化財
姫埼灯台(ひめさき)|新潟県
所在地:新潟県佐渡市両津大川
初点灯:明治28年12月10日
内容:現存する日本最古の鉄造りの灯台で、4層からなる6角形の櫓型
敷地内に昔の灯台職員用庁舎・宿舎模した「姫崎灯台館」が建ち、灯台レンズや回転灯器、佐渡の灯台写真などの貴重な資料を展示
備考:「世界灯台100選」、「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:とくに指定なし
禄剛埼灯台(ろっこうさき)|石川県
所在地:石川県珠洲市狼煙町イ-51
初点灯:明治16年7月10日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:建設は日本人の手による最初の洋式灯台で、灯塔入口上部に掲げられた菊の紋章も、全国の灯台でも唯一のもの
円形の灯台の基部に半円形の部分がありますが、これは建築当初、燃料油貯蔵室に使われた部分です
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:とくに指定なし
東海
神子元島灯台(みこもとしま)|静岡県
所在地:静岡県下田市
初点灯:明治3年11月11日(1871年1月1日)/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:江戸幕府とアメリカ、イギリス、フランス、オランダの4ヶ国との間で結ばれた改税約書(江戸条約)に基づき建設された、条約灯台8基(観音埼灯台、野島埼灯台、樫野埼灯台、神子元島灯台、劔埼灯台、伊王島灯台、佐多岬灯台、潮岬灯台)ひとつで、紀伊大島の樫野埼灯台(和歌山県串本町)に次いで建設
神子元島灯台の灯台守は、昭和7年から島での常駐をやめ、昭和51年には完全に無人化
備考:「世界灯台100選」、「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の史跡
清水灯台(しみず)|静岡県
所在地:静岡県静岡市清水区三保
初点灯:明治45年3月1日
内容:日本で最初の鉄筋コンクリート造りの灯台で、八角形の灯台は、建設当時の姿をそのままとどめています
備考:土木遺産、経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の重要文化財
御前埼灯台(おまえさき)|静岡県
所在地:静岡県御前崎市御前崎1581
初点灯:明治7年5月1日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:現在でも基本的な構造は当時のままで、内部の見学も可能(参観灯台)
レンガ造りの灯台として参観できる日本最古の灯台
らせん階段で灯火部分に上ると晴れていれば、伊豆半島、富士山、南アルプス、遠州灘という大展望が広がります
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の重要文化財
菅島灯台(すがしま)|三重県
所在地:三重県鳥羽市菅島町122
初点灯:明治6年7月/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:現役では日本最古のレンガ造り灯台で、現役で現存する日本最古の洋式灯台
渡鹿野島(わだかのじま/現・三重県志摩市)の瓦師・竹内仙太郎が製造した国産のレンガを使用
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の重要文化財
近畿
経ヶ岬灯台(きょうがみさき)|京都府
所在地:京都府京丹後市丹後町袖志
初点灯:明治31年12月25日/逓信省航路標識管理所の設計
内容:明治時代に建設された石造の灯台
灯台のレンズは全国5ヶ所にしかない1等レンズで、高さ2.8m、重さ5tという大きなもの
木下惠介監督、加藤剛・大原麗子共演による映画『新・喜びも悲しみも幾年月』(昭和61年)の舞台
近畿地方最北端の灯台
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
経ヶ岬はユネスコ世界ジオパーク登録の「山陰海岸ジオパーク」のジオサイト
文化財:国の重要文化財
潮岬灯台(しおのみさき)|和歌山県
所在地:和歌山県東牟婁郡串本町潮岬
初点灯:明治6年9月15日/「灯台の父」ブラントンの設計
当初の灯台は、八角形で日本初の洋式木造灯台でしたが明治11年石造灯台に改築
内容:徳川幕府が慶応2年(1866年)、アメリカ、イギリス、フランス、オランダの4ヶ国と結んだ江戸条約(改税条約)で設置が決定した8灯台(観音埼、野島埼、樫野埼、神子元島、剱埼、伊王島、佐多岬、潮岬)のひとつ
本州最南端に位置する灯台は標高49.47mの灯火部分まで上ることができる参観灯台で、灯台資料館も併設
備考:「日本の灯台50選」
経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:とくに指定なし
友ヶ島灯台(ともがしま)|和歌山県
所在地:和歌山県和歌山市加太沖ノ島
初点灯:明治5年6月27日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:瀬戸内海国立公園に指定される沖ノ島の西端、淡路島との間にある友ヶ島水道にある灯台
徳川幕府と英国公使が兵庫開港に備えて結んだ大坂条約によって建設された5基(江埼、六連島、部埼、友ヶ島、和田岬)の洋式灯台のひとつ
備考:経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の登録有形文化財
江埼灯台(えさき)|兵庫県
所在地:兵庫県淡路市野島江崎小磯17
初点灯:明治4年4月27日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:徳川幕府と英国公使が兵庫開港に備えて結んだ大坂条約によって建設された5基(江埼、六連島、部埼、友ヶ島、和田岬)の洋式灯台のひとつで、国内でも8番目に建設された近代的な灯台
旧退息所(灯台職員宿舎/国の登録有形文化財)が「四国村(四国民家博物館)」に移築復元されています
備考:経済産業省の近代化産業遺産(「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」)にも認定
文化財:国の重要文化財
中国
美保関灯台(みほのせき)|島根県
所在地:島根県松江市美保関町美保関
初点灯:明治31年11月8日/ブラントン設計の近代灯台を踏襲したフランス人技士の設計
内容:山陰最古の灯台で、美しい石造灯台
併設の旧吏員退息所主屋、倉庫、便所、さらには灯台施設を取り囲む石塀も現存し、国の重要文化財に指定
旧吏員退息所は、「美保関灯台ビュッフェ」として再生され、喫茶、食事が可能
備考:「日本の灯台50選」、「歴史的灯台世界100選」(国際航路標識協会選定)に選定されるほか、経済産業省の近代化産業遺産にも認定
文化財:国の重要文化財
出雲日御碕灯台(いずもひのみさき)|島根県
所在地:島根県出雲市大社町日御碕
初点灯:明治36年4月1日
内容:灯塔の高さ43.65mは日本一を誇るのっぽな灯台
地震に耐えるために外壁が石造、内壁がレンガという2重構造
参観灯台で、内部も見学も可能で、灯台入口には「灯台資料展示室」(入場無料)も併設
備考:「日本の灯台50選」、「歴史的灯台世界100選」(国際航路標識協会選定)に選定、経済産業省の近代化産業遺産に認定
文化財:国の重要文化財
角島灯台(つのしま)|山口県
所在地:山口県下関市豊北町角島2343-2
初点灯:明治9年3月1日/ブラントンの設計による最後の灯台
内容:灯塔は総御影石造りで、しかも無塗装(男木島灯台と2ヶ所しかない石造・無塗装灯台)
国の重要文化財に
灯台一帯は下関市立の角島灯台公園として整備され、灯台守が家族で生活した退息所は、灯台資料館として整備
備考:日本の灯台50選に選定、経済産業省の近代化産業遺産に認定
文化財:国の重要文化財
四国
男木島灯台(おぎしま)|香川県
所在地:香川県高松市男木町1063−2
初点灯:明治28年12月10日/鍋島灯台などを参考に日本人が設計
内容:男木島の北側の備讃瀬戸には、備讃瀬戸東航路(航路の中央から右側航行)が設定され、明石海峡に次いで全国第2位の海上交通ラッシュ
備考:旧庵治町(現・高松市)で採れる石材「庵治石」を使用、総御影石造りで無塗装の灯台は角島灯台(つのしまとうだい/山口県)と全国2ヶ所だけという貴重な存在
参観灯台ではありませんが、隣接して職員の官舎(吏員退息所)を改造して平成6年に公開された「男木島灯台資料館」があります
日本の灯台50選、土木学会の選奨土木遺産、「安全な船舶航行に貢献し我が国の海運業等を支えた燈台等建設の歩みを物語る近代化産業遺産群」として経済産業省の近代化産業遺産にも認定
文化財:国の登録有形文化財
鍋島灯台(なべしま)|香川県
所在地:香川県坂出市与島町1016
初点灯:明治5年11月15日(1872年12月15日)/「日本の灯台の父」ブラントンの設計
内容:石造の退息所(灯台職員宿舎)など付帯施設は四国村(四国民家博物館)(香川県高松市)に移築保存されています
備考:経済産業省の近代化産業遺産にも認定
文化財:国の重要文化財
釣島灯台(つるしま)|愛媛県
所在地:愛媛県松山市泊町1456(釣島)
初点灯:明治6年6月15日/「日本の灯台の父」ブラントンの設計
内容:釣島海峡は来島海峡(くるしまかいきょう)へと続く海の難所の入口
建設年代順で日本で9番目の西洋式灯台となりますが、今も往時のままに現役なのは釣島灯台のみ
備考:経済産業省の近代化産業遺産に認定
文化財:国の重要文化財
室戸岬灯台(むろとみさき)|高知県
所在地:高知県室戸市室戸岬町6939-2
初点灯:明治32年4月1日
内容:日本一の光達距離、光度160万カンデラも日本一、現存する鉄造の灯台としては姫埼灯台(佐渡島・明治29年点灯)に次ぐ古いもの
備考:日本の灯台50選に選定、経済産業省の近代化産業遺産に認定
文化財:とくに指定なし
九州
部埼灯台(へさき)|福岡県
所在地:福岡県北九州市門司区白野江
初点灯:明治5年1月22日/「灯台の父」ブラントンの設計
内容:大坂条約で設置を約束した5灯台のひとつ
関門航路の東端を守る灯台として今も現役
花崗岩による石造灯台ですが、白色に塗装されています
備考:日本の灯台50選
文化財:国の重要文化財
水ノ子島灯台(みずのこじま)|大分県
所在地:大分県佐伯市鶴見大島水の子2-1559
初点灯:明治37年3月20日
内容:灯塔は、内側に煉瓦を積み、その外側に徳山産の花崗岩を装石積みに
塔高39.25mは、離島の灯台としては日本一、石造の灯台としては島根県の出雲日御碕灯台に次いで日本で2番目の高さを誇る
備考:日本の灯台50選、経済産業省の近代化産業遺産に認定
文化財:とくに指定なし
鞍埼灯台(くらさき)|宮崎県
所在地:宮崎県南那珂郡南郷町
初点灯:明治17年8月15日
内容:目井津港沖3kmに位置する大島(日向大島)に建つ日本最古の無筋コンクリート造り灯台
全国23灯台あるAランク灯台のうち、最南に位置
備考:経済産業省の近代化産業遺産
文化財:国の登録有形文化財
| 海上保安庁の「保存灯台Aランク」 全23基完全ガイド | |
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