ホテルニューオータニ東京 日本庭園

ホテルニューオータニ東京の建つ場所は、江戸時代の初めには熊本藩・加藤清正の下屋敷。その後は彦根藩井伊家の中屋敷となりました。周囲には紀州藩、尾張藩の下屋敷があり、紀尾井町という名を生んでいます。明治維新で伏見宮邸宅となり、戦後、ホテルニューオータニが建てられて、大名庭園を起源とする日本庭園が造られたのです。

江戸時代には彦根藩井伊家中屋敷大名庭園だった地

庭園に落ちる落差6mの大滝
庭園の随所に置かれた赤玉石

第二次世界大戦までは伏見宮(ふしみのみや)家の邸宅でしたが、戦後、GHQの指示による皇籍離脱に伴って維持が困難となり、外国人の手に渡ろうとしたのを、ホテルニューオータニ創業者である大谷米太郎が「由緒ある土地を外国に売り渡すのは惜しい」と購入して、自邸としたのがホテルの始まり。

昭和39年、政府の依頼に応じて、東京オリンピックの客室不足を解消するため、ホテルニューオータニを建設したのです。
その後、タワー(現:ガーデンタワー)や、ガーデンコートが建設されてはいますが、日本庭園は江戸時代の大名庭園の雰囲気を、巨木などに残しています。

ホテルニューオータニの日本庭園のシンボルともいえる迫力ある滝は、ガーデンタワーが建設、赤坂側と四谷側の5階層分の高さの違いを活かし、巨岩86個を使って落差6mもの滝を懸けたもの。

晩秋から咲き始めるジュウガツザクラ、そして春には河津桜を皮切りに、遅咲きの大江戸彼岸桜など4月下旬まで花見が楽しめますが、これもホテル創業以降に植えられたものがほとんどです。

探せば大名庭園時代の遺構も!

庭園の入口にある「近江彦根藩井伊家屋敷跡」の碑

イヌマキとカヤの巨木は、井伊家中屋敷時代からの木。池にある松の木の化石は、加藤清正時代のものと伝えられています。
立派な石灯籠(いしどうろう)もまさに井伊家ゆかりと思われるのですが、実はこの灯籠の多くは、ホテル創始者の大谷米太郎が戦後、上野・寛永寺が放出したときに買い求めたもの。

記された戒名をみると3代将軍・徳川家光、11代将軍・徳川家斉の灯籠もあるので、お見逃しなく。

ホテルの庭園ゆえに、花が植栽されたり、結婚式の記念撮影用のスペースが設けられたりと手は加えられています。
安全管理上、深夜だけはしまっていますが、ホテル利用者以外でも無料で自由に出入りできます。

ホテルのレストランではランチメニューや喫茶メニューも充実しているので、日本庭園の散策とホテルでの飲食を組み合わせるのがおすすめです。

大谷米太郎
富山県西砺波郡正得村水落(現・富山県小矢部市)出身の実業家。もともとは大相撲の力士でしたが、廃業後、酒屋に転身。国技館一手扱いの酒屋となり、関東大震災後に震災復興に伴う鉄鋼需要に注目して大谷鉄鋼所を設立。戦前には「鉄鋼王」と呼ばれるまでに躍進。
ホテルニューオータニのほか、蔵前国技館の建設にも尽力。浅草寺の寶蔵門を寄進しています。
富山県高岡市にホテルニューオータニ高岡があるのも創業者が富山出身のため。

庭園の見どころ
1 大名庭園時代の巨木、イヌマキとカヤ

庭園西側、山茶花荘近くにあるのが天明年間(1781年〜1789年)から彦根藩藩邸内に生育していたものと推測されるイヌマキとカヤの巨木です。イヌマキは防風に、カヤの実は食用となる実用的な常緑樹です。

カヤとイヌマキの巨木

庭園の見どころ
2 寛永寺灯籠

上野・寛永寺から第二次世界大戦後に放出された灯籠を大谷米太郎が購入したもの。寛永寺最後の放出品。
西の比叡山に対し、東叡山と呼ばれた天台宗の名刹、寛永寺も、明治の廃仏毀釈、そして第二次世界大戦という度重なる荒波をくぐり抜けてきたのです。
大猷院(だいゆういん)は、徳川3代将軍・家光の諡(おくりな)。
文恭院は、徳川11将軍・家斉(いえなり)の諡です。

3代将軍・徳川家光を追善した灯籠
文恭院(11代将軍・徳川家斉)の名が刻まれた寛永寺の灯籠

庭園の見どころ
3 佐渡の化石

池の中にある、江戸時代からの大木の化石。熊本藩加藤清正の屋敷だった時代から残っているものなのだとか。
「木の化石」は、地中に埋もれた木の中に、高い圧力によって石の成分が入り込んで石化したもので珪化木が正しい名称。
佐渡(新潟県)では貝の化石のほか、こんな珪化木も産します。

佐渡の化石

庭園の見どころ
4 佐渡赤玉石

佐渡の赤玉地区でしか採れないという赤い石が日本三大銘石に数えられる佐渡赤玉石。
庭園内の随所にこの石が配され、大谷米太郎が好んだ石だったことがよくわかります。
庭園にある一番大きいものは重量22トンもあり、これは日本一の大きさといわれています。
昭和57年以降、産出が枯渇し、現在はジオパークとなった佐渡から持ち出しが禁止となっています。

「あかい佐渡石が棄てたやうに 小径のわきに置いてある
これひとつだけが この林泉の俗をうけない」
(高村光太郎『石くれの歌』)

庭園の見どころ
5 山茶花荘

庭園内にある懐石料理のなだ万が経営する「山茶花荘」は、ホテルニューオータニの開業前には、創業者・大谷米太郎の自邸だった建物。
古くからあった日本家屋を村野藤吾が数奇屋風の建物に改築したもの。

庭園の見どころ
6 濡鷺型灯籠VS春日灯籠

庭園内には寛永寺灯籠のほか、江戸時代の形式の貴重な「濡鷺型灯籠」(ぬれさぎがたとうろう)、鎌倉時代の灯籠の形式である春日灯籠もあります。
濡鷺型灯籠は、楕円を半分に切ったような笠が雨のなかにたたずむ鷺(さぎ)のような雰囲気という風雅な灯籠。
春日灯籠はよく見ると6角形の部分に、十二支の動物が刻まれ、それぞれの方角を示すように設置されています。

ぬれさぎ灯籠
春日灯籠

庭園の見どころ
7 十三重の塔

寛永寺灯籠の近くにあるのが十三重の塔。
南北朝時代の型で、「四角大層坊塔」が正式名。

庭園の見どころ
8 清泉池

清泉池には緋鯉、真鯉合わせて350匹の鯉が泳ぎ、サギや鴨も姿をみせます。外国人旅行者にも人気の場所で、散歩する姿を見かけます。

江戸切絵図に見る 彦根藩井伊家中屋敷

ホテルニューオータニ東京 日本庭園
名称 ホテルニューオータニ東京 日本庭園/ほてるにーおーたにとうきょう にほんていえん
所在地 東京都千代田区紀尾井町4-1
関連HP ホテルニューオオタニ東京公式ホームページ
電車・バスで 東京メトロ銀座線・丸ノ内線赤坂見附駅、東京メトロ半蔵門線・南北線永田町駅から徒歩3分
駐車場 760台/有料
問い合わせ ホテルニューオータニ東京 TEL:03-3265-1111/FAX:03-3221-2619
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。

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