富山県砺波市庄川町小牧にある水力発電用のダム(重力式コンクリートダム)が小牧ダム。昭和5年、庄川に築かれたアーチ曲面の美しい重力式ダムで、堤高79.2mで完成当時は「東洋一のダム」。アメリカの技術者を招聘して築かれたダムは、経済産業省の近代化産業遺産、土木学会の選奨土木遺産。ダム湖名は小牧湛水池 (こまきたんすいち)です。
近代化産業遺産、土木遺産にも選定の歴史あるダム
淺野財閥の総帥・淺野總一郎(あさのそういちろう/浅野総一郎)が郷里富山(現・氷見市の出身)の水利開発の目的(淺野家のセメント事業などに活用)で、大正8年に庄川水力電気会社を設立してダム建設が計画されたもの。
当時は庄川上流で伐採した木を川に流して運ぶ木材運搬が行なわれていたため、木材業者「飛州木材」とダム建設側との間で庄川流木争議も勃発、木材運搬用のコンベアが設けられています。
ダムにはラジアルゲート(表面が円弧状で、その曲線の中心を軸として回転することによって開閉する構造のゲート)と呼ばれる排水部が17門並んでおり壮観。
土木耐震学の草分けである物部長穂(もののべながほ)博士の「貯水用重力堰堤の特性並びに其の合理的設計法」による耐震設計理論を初めて取り入れたダムで、このことも土木学会選奨の土木遺産になっている大きな理由。
河川用ダムとしては初めて国の登録有形文化財に登録されています。
小牧ダム一帯の峡谷が庄川峡。
小牧ダムの完成とともにダム上流にあった集落は湖底に沈み、温泉宿「大牧温泉観光旅館」一軒だけが上方に移転して営業を続けています(大牧温泉はダム湖に沈みましたが、温泉宿は湖畔に移転し源泉を引湯して営業を存続)。
ダムサイトには大牧温泉行きの庄川峡遊覧船乗り場があり、船でしか行けない温泉として有名です。
中部山岳地域の電源開発の歩みを物語る近代化産業遺産群
経済産業省の近代化産業遺産では、「近畿の経済や中部のモノづくりを支えた中部山岳地域の電源開発の歩みを物語る近代化産業遺産群」のひとつ。
第一次世界大戦勃発後の工業生産の拡大による電力不足、石炭の価格が高騰を背景に、急峻な中部山岳の河川の電源開発が注目され、福沢桃介による木曽川、高峰譲吉の黒部川、そして淺野總一郎による庄川にダムが建設されたのです。
庄川の水力発電関連遺産には、小牧ダムのほか、祖山ダム(そやまダム/南砺市)、関西電力平瀬発電所(岐阜県大野郡白川村)が登録されています。
小牧ダム | |
名称 | 小牧ダム/こまきだむ |
所在地 | 富山県砺波市庄川町小牧 |
ドライブで | 北陸自動車道砺波ICから約10km |
駐車場 | 湖畔園地(10台/無料) |
問い合わせ | 砺波市商工観光課 TEL:0763-33-1111 |
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