御坂峠天下茶屋

御坂峠天下茶屋

山梨県富士河口湖町、富士吉田市と甲府を結ぶ旧国道137号の御坂(みさか)トンネル河口湖側に建つ昭和9年創業の茶屋が御坂峠天下茶屋(みさかとうげてんかじゃや)。 富士の眺めの素晴しさから富士見茶屋、天下一茶屋などと呼ばれていましたが、徳富蘇峰(とくとみそほう)が「天下茶屋」の名で新聞に紹介し、その名が定着したもの。

「富士山には、月見草がよく似合ふ」の地

昭和13年頃、作家・太宰治が滞在し、小説『富嶽百景』(ふがくひゃっけい)を執筆した場所でもあり、建物の前には『富嶽百景』の名文句、「富士山には、月見草がよく似合ふ」の文学碑も立っています。
太宰治は天下茶屋の2階に滞在して執筆。
郵便物を受け取りに河口局へとバスで下り、天下茶屋への帰りのバスで同乗した老婆が月見草を見つけたことから「富士山には、月見草がよく似合ふ」の名フレーズが生まれたもの。

現在の建物は3度目の再建ですが、2階には太宰の執筆当時を再現した太宰治文学記念室があり、愛用の机や花瓶などが展示されています(「天下茶屋」利用者は無料で見学可能)。
1階では、太宰治、井伏鱒二(いぶせますじ)、徳富蘇峰ら文豪たちも愛した名物のほうとう(自家製麺)や自家製の甘酒、いもだんご、太宰風地酒などで休憩可能。

国道137号沿いに支店である「峠の茶屋」がありますが、時間が許せば旧国道に入って、ぜひ本店の「天下茶屋」へ。

ちなみに、御坂峠は、日本武尊がこの坂を越えて甲斐の国に入ったことが名の由来で花水坂(北杜市)、西行峠(南部町)とともに「富士見三景」に数えられています。
ただし、実際の御坂峠は、御坂山系の稜線上にあります。
天下茶屋の建つ旧国道は、昭和6年11月に県道甲府吉田線として開通(昭和28年に国道昇格)。

『富嶽百景』太宰治

御坂峠天下茶屋

「昭和十三年の初秋、思ひをあらたにする覚悟で、私は、かばんひとつさげて旅に出た。
甲州。ここの山々の特徴は、山々の起伏の線の、へんに虚むなしい、なだらかさに在る。小島烏水といふ人の日本山水論にも、「山の拗すね者は多く、此土に仙遊するが如し。」と在つた。甲州の山々は、あるひは山の、げてものなのかも知れない。私は、甲府市からバスにゆられて一時間。御坂峠みさかたうげへたどりつく。
御坂峠、海抜千三百米(メエトル)。この峠の頂上に、天下茶屋といふ、小さい茶店があつて、井伏鱒二氏が初夏のころから、ここの二階に、こもつて仕事をして居られる。私は、それを知つてここへ来た。井伏氏のお仕事の邪魔にならないやうなら、隣室でも借りて、私も、しばらくそこで仙遊しようと思つてゐた」

「三七七八米の富士の山と、立派に相対峙(あひたいぢ)し、みぢんもゆるがず、なんと言ふのか、金剛力草とでも言ひたいくらゐ、けなげにすつくと立つてゐたあの月見草は、よかつた。富士には、月見草がよく似合ふ」

一部抜粋

名称 御坂峠天下茶屋/みさかとうげてんかじゃや
所在地 山梨県南都留郡富士河口湖町河口2739
関連HP 御坂峠天下茶屋公式ホームページ
電車・バスで 富士急行線河口湖駅から富士急行バス三ツ峠登山口行きで25分、終点下車、徒歩20分
ドライブで 中央自動車道河口湖ICから約16km
駐車場 10台/無料
問い合わせ TEL:0555-76-6659
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
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