氷河期の終焉とともに、石器を主な道具としていた旧石器時代は終わりを告げ、1万5000年ほど前に縄文時代が始まりました。世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産のうち、北東北には11遺跡があり、そのうち8遺跡が青森県、2遺跡が秋田県、1遺跡が岩手県です。
土器を作り、定住生活が始まったのが縄文時代
紀元前1万7000年〜紀元前400年(1万5000年前〜2400年前)という1万6000年以上も長きに渡って続いたのが縄文時代。
縄文時代は日本独自の時代区分で(ヨーロッパでは、旧石器時代から鉄器時代及び古代ローマ帝国の成立までの幅広い時代に相当)、寒冷な気候が長く続いた旧石器時代以降、温暖で「縄文海進」と呼ばれる海が現在の平野部の内部まで進出していた時代です。
北海道・北東北が縄文文化の中心的存在だったのは、ドングリ類やクリ・クルミが実る落葉広葉樹の森林が広がり、暖流と寒流がぶつかる海には豊かな漁場があり、河川にはサケ・マス類などの回遊魚が遡上する、恵まれた環境にあったのです。
1万年以上という長い時代なので、温暖化、寒冷化という気象の変化、それに伴う海進・海退にも巧みに対応し、採集・漁労・狩猟を基盤とした生活を継続しました。
弥生時代になって定住生活が始まったというのは大きな間違いで、縄文時代には早期に土器が生まれ、食物を煮るなどの加工(柔らかくする、アクを抜く)、保存が可能になり、定住が始まります。
さらに集落に墓地を築き、墓地と居住域を分け、やがて拠点となる集落が誕生します。
集落には祭祀・儀礼の場である捨て場や盛土、環状列石などを築き、祖先崇拝や自然崇拝とともに、豊穣への祈念や互いの絆の確認など豊かな精神性が育まれました。
時代区分は、
ステージⅠ(定住の開始)、ステージⅡ(定住の発展)、ステージⅢ(定住の成熟)
に分けられています。
青森県|8遺跡
大平山元遺跡/縄文時代の始まりを示す貴重な遺跡
所在地:青森県東津軽郡外ヶ浜町蟹田大平山元
時代区分:ステージⅠ(定住の開始)
史跡年代:紀元前1万3000年前=ステージⅠa(居住地の形成)
内容:旧石器時代の遊動から縄文時代の定住へと生活様式が変化する様子を示す重要な遺跡
ガイダンス施設:外ヶ浜町大山ふるさと資料館
田小屋野貝塚/古十三湖に面した貝塚を伴う集落
所在地:青森県つがる市木造館岡田小屋野
時代区分:ステージⅡ(定住の発展)
史跡年代:紀元前4000年~紀元前2000年/中心となるのは紀元前4000年~紀元前3000年=ステージⅡa(集落施設の多様化)
内容:縄文海進期に形成された内湾の古十三湖(こじゅうさんこ)に臨み、定住発展期前半の貝塚を伴う集落。集落内にはベンケイガイ製貝輪など貝輪製作の工房も
ガイダンス施設:つがる市縄文住居展示資料館(カルコ)
亀ヶ岡石器時代遺跡/芸術性豊かな土偶や多彩な副葬品が出土
所在地:青森県つがる市木造館岡
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前1000年~紀元前400年
内容:縄文海進期に形成された内湾の古十三湖(こじゅうさんこ)に臨んだ定住成熟期後半の集落。大規模な共同墓地(土坑墓が群集する墓域)からは高度な精神文化を示す副葬品が出土
ガイダンス施設:つがる市木造亀ヶ岡考古資料室
大森勝山遺跡/岩木山麓に築かれた大規模な環状列石
所在地:青森県弘前市大森勝山
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前1000年=ステージⅢb(祭祀場と墓地の分離)
内容:定住成熟期後半の環状列石を主体とする祭祀遺跡で、冬至には太陽が岩木山山頂に沈む
ガイダンス施設:弘前市立裾野地区体育文化交流センター(ガイダンス施設は弘前市が整備を検討中)
三内丸山遺跡/掘立柱建物がシンボル的な存在の拠点集落
所在地:青森県青森市三内丸山
時代区分:ステージⅡ(定住の発展)
史跡年代:紀元前3900年~紀元前2200年/中心は紀元前3000年~紀元前2200年=ステージⅡb(拠点集落の出現)
内容:定住の発展期に誕生した拠点集落。膨大な量の土器や石器が出土したほか、大規模な盛土からは、日本最多となる2000点を超える土偶が出土
ガイダンス施設:三内丸山遺跡センター
小牧野遺跡/三重の環を描くように配置された環状列石
所在地:青森県青森市野沢小牧野
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前2000年=ステージⅢa(共同の祭祀場と墓地の進出)
内容:定住成熟期前半の環状列石を主体とする祭祀遺跡。三角形岩版が400点以上も出土するなど、土偶やミニチュア土器、動物形土製品、鐸形土製品など祭祀的要素の強い遺物が多数出土
ガイダンス施設:青森市小牧野遺跡保護センター 縄文の学び舎・小牧野館
二ツ森貝塚 /環境の変化を表す海水性、汽水性の貝塚に注目
所在地:青森県上北郡七戸町貝塚家ノ前
時代区分:ステージⅡ(定住の発展)
史跡年代:紀元前3500年~紀元前2000年/中心は紀元前3500年~紀元前3000年=ステージⅡa(集落施設の多様化)
内容:定住発展期前半を中心とした大規模な貝塚を伴う集落で、縄文海進、寒冷化による海の後退と汽水化など気候の変化のわかる重要な遺跡
ガイダンス施設:二ツ森貝塚館
是川石器時代遺跡/竪穴建物・土坑墓・捨て場などを伴う集落
所在地:青森県八戸市是川
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前4000年~紀元前400年/中心は紀元前1000年~紀元前400年=ステージⅢb(祭祀場と墓地の分離)
内容:遺跡は一王寺遺跡、堀田遺跡、中居遺跡の3つで構成され、中居遺跡からは、居住域、墓域、捨て場、配石や盛土など多様な遺構を発見
ガイダンス施設:八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館
岩手県|1遺跡
御所野遺跡/墓域と祭祀場を中心とした拠点集落
所在地:岩手県一戸町岩舘御所野
時代区分:ステージⅡ(定住の発展)
史跡年代:紀元前2500年~紀元前2000年=ステージⅡb(拠点集落の出現)
内容:定住発展期後半の配石遺構を伴う墓域と祭祀場である盛土を伴う拠点集落で、集落の中央に配石遺構や墓などの墓域が造られ、その周囲に竪穴建物、掘立柱建物、祭祀に伴う盛土などが分布
ガイダンス施設:御所野縄文博物館(御所野縄文公園内)
秋田県|2遺跡
伊勢堂岱遺跡/4つの環状列石が集中した祭祀遺跡
所在地:秋田県北秋田市脇神伊勢堂岱
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前2000年~紀元前1700年/中心は紀元前2000年~紀元前1700年=ステージⅢa(共同の祭祀場と墓地の進出)
内容:定住成熟期前半の祭祀遺跡で、4つの環状列石を主体に、配石遺構、掘立柱建物跡、土坑墓、貯蔵穴、溝状遺構を発掘。隣接して4ヶ所もの環状列石が確認される唯一の例
ガイダンス施設:伊勢堂岱縄文館
大湯環状列石/規則的な構造を示す2つの環状列石
所在地:秋田県鹿角市十和田大湯万座
時代区分:ステージⅢ(定住の成熟)
史跡年代:紀元前2000年~紀元前1500年=ステージⅢa(共同の祭祀場と墓地の進出)
内容:万座環状列石(最大径52m)と野中堂環状列石(最大径44m)の2つの環状列石があり、それを取り囲んで掘立柱建物、貯蔵穴、土坑墓などが同心円状に配置
ガイダンス施設:大湯ストーンサークル館
世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」 北東北11遺跡 | |
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