慶応2年(1866年)、アメリカ、イギリス、フランス、オランダと結んだ改税条約(江戸条約)によって建設を約束した8ヶ所の条約灯台のひとつで、日本初の洋式灯台が県立観音崎公園に建つ観音埼灯台。現在の灯台は大正14年築の3代目。見学が可能な参観灯台で、「日本の灯台50選」にも選定されています。
初代の灯台はヴェルニー設計の日本初の洋式灯台


初代の灯台はフランソワ・レオン・ヴェルニー(François Léonce Verny )などフランス人技師が担当したレンガ造り。
明治新政府は、横須賀製鉄所首長・ヴェルニーに灯台建設を依頼しますが、ヴェルニーは製鉄所建設課長のルイ・フェリックス・フロラン(Louis-Felix Florent)に灯台建設を任せています。
洋式灯台建設の技術がないので、 フランスと英国に灯台建設の技術とレンズや機械の購入を依頼。
建設計画中に徳川幕府が崩壊、それでも改税条約第十一条の定めによる国際的な約束だったため、幕府から明治政府に引き継がれるかたちで工事は進んでいます。
箱館戦争さなかの明治元年9月17日(1868年11月1日)に起工し、明治2年1月1日(1869年2月11日)に初点灯というまさに激動の時代に灯った灯台。
旧幕府や新政府軍の軍艦が江戸湾から箱館(函館)を目指している時に、すでに設計段階にあったことになります。
「ヨコスカ製鉄所煉瓦」が使用されているのも、ヨコスカ製鉄所建設用のレンガを流用しているから。
当時の光源は、菜種や清国(中国)から輸入した落花生の油、パラフィン、石油などを燃やした光でした。
観音埼灯台の起工日が、明治元(1868年)の新暦で11月1日であることから、11月1日は灯台記念日にもなっています。
レンガ造りの初代の灯台は、大正11年4月26日の直下型となる浦賀水道地震(M6.8)で倒壊。
2代目がコンクリート造りで再建され、大正12年3月15日に初点灯しますが、大正9月1日の関東地震で、建築半年もたたずに倒壊してしまいます。


現在の3代目灯台は東京湾唯一の参観灯台

現在の3代目は大正14年6月1日に再建されたもので、塔高19m、面から灯火部分は56m、光達距離19海里(35km)で、毎15秒に2せん光。
映画『喜びも悲しみも幾歳月』(昭和32年公開/松竹/主演:佐田啓二・高峰秀子/監督:木下惠介)のファーストシーンに登場しています。
灯台資料展示室が併設され、貴重な資料が展示されているので、こちらもあわせて見学を。
灯台再建100周年を記念して2025年11月1日にリニューアルオープンしています。
世界屈指の海上ラッシュ、浦賀水道を見守る灯台ですが、航路の船は、海上保安庁東京湾海上交通センター(東京マーチス)によって航行管制がされています。
観音埼灯台のさらに高台側にあるのが東京マーチスのレーダー施設です。
浦賀水道は幅が3.5kmしかないため、交通管制が必要に。
また戦前は東京湾要塞の重要な拠点で、砲台がたくさん築かれていました。
現在、県立観音崎公園となった灯台一帯の高台にはその砲台跡が残されています。
また岬突端には、潜水艦を監視した水中聴測所跡も。


| 【見学ガイド】観音埼灯台 | |
| 名称 | 観音埼灯台/かんのんざきとうだい Kannonzaki Lighthouse |
| 所在地 | 神奈川県横須賀市鴨居4-1187 |
| 関連HP | 燈光会公式ホームページ |
| 電車・バスで | JR横須賀駅から京浜急行バス観音崎行きで35分、終点下車 京急浦賀駅から観音崎自然公園までバス利用も可能 |
| ドライブで | 横浜横須賀道路馬堀海岸ICから約3.5km |
| 駐車場 | 観音崎公園県営駐車場(312台/1月1日〜3日、GW、7月〜8月、土・日曜、祝日は有料、その他の期間は無料) |
| 問い合わせ | 燈光会観音埼支所 TEL:046-841-0311 |
| 掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 | |





























