国宝・通潤橋

通潤橋

熊本県山都町(やまとちょう)にある全長79m、石垣総面積1802平方という日本最大の石造アーチ式水路橋が、国宝・通潤橋。嘉永7年(1854年)、白糸台地の水不足解消のために矢部郷の惣庄屋(そうじょうや)・布田保之助(ふたやすのすけ)ら地元の住民が五老ヶ滝川に築いたもので、築造当初は「吹上台眼鑑橋」と呼ばれていました。

日本最大の石造アーチ式水路橋は令和5年、国宝に

導水管の継ぎ目を特殊な漆喰で繋いで漏水しないように密封し、サイフォンを逆さにした逆サイフォン(伏せ越し)の原理(幕末に兼六園に造られた噴水などもこの原理を応用しています)で通潤橋より標高の高い白糸台地に水を導水しています。
橋の前後100mに渡って、石樋が3列土中に埋め込まれています(現在鉄管を1列増設)。

江戸時代後期の肥後の石工の技術レベルをよく表し、今も現役で水を送る土木技術の最高傑作とされ、令和5年、国宝に指定。
6km離れた笹原川の上流から導水し、灌漑用の水路(通潤用水)の総延長は30kmにも及んでいます。
この通潤用水は農林水産省の疏水百選にも選定。

白糸台地は阿蘇カルデラの火砕流台地。
周囲の峡谷が深く、農業用水に困窮する地形条件から通潤橋と通潤用水が築かれ、白糸台地に棚田を築くことができたのです。
というわけで、通潤橋と白糸台地一帯の棚田景観は、「通潤用水と白糸台地の棚田景観」として国の重要文化的景観にも選定されています。

土・日曜、祝日の正午に橋の中央部から両側への放水が行なわれ(田植えや水不足の時期には放水を中止)、その豪快な水音は日本の音風景百選に選ばれています。
この放水、もともとは水管の掃除のために行なう行事だったもの。

近くには道の駅通潤橋があり、通潤橋見学は道の駅の駐車場を利用。
道の駅通潤橋内の「通潤橋史料館」では放水の様子を放映するほか、橋の歴史を詳しく解説しています。

通潤橋へと流れる通潤用水は、上流側に昭和31年に完成した小笹円形分水で、下流側の農地面積に応じて7:3に分水され、7割の水が通潤橋へと流れています。
時間が許せば、小笹円形分水もあわせて見学を。

通潤橋
名称通潤橋/つうじゅんきょう
所在地熊本県上益城郡郡山都長原
関連HP山都町公式ホームページ
電車・バスで熊本交通センターから矢部行き熊本電鉄バスで1時間30分、浜町下車、徒歩15分
ドライブで九州中央自動車道山都中島西ICから約14km
駐車場道の駅通潤橋駐車場(136台/無料)
問い合わせ山都町商工観光課 TEL:0967-72-1115/FAX:0967-72-1080
掲載の内容は取材時のものです、最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
通潤橋の放水

国宝・通潤橋の放水は、農業利用の終わった7月中旬~11月に

熊本県上益城郡山都町にある国宝・通潤橋(つうじゅんきょう)。幕末の嘉永7年(1854年)に建造された日本最大級の石造りアーチ水路橋で、今も現役。毎年、通水管に詰まった堆積物を取り除くための放水が、農作業の終わった7月中旬~11月に実施されて

五老ヶ滝

五老ヶ滝

熊本県上益城郡山都町、五老ヶ滝川に架かる国の重要文化財・通潤橋(つうじゅんきょう)の下流側に落ちるのが、五老ヶ滝。山都町は美しい滝が数多い「滝の町」にもなっていますが、最大の滝がこの五老ヶ滝。落差50mを誇り、歩道に架かる吊り橋から滝の全景

通潤用水・小笹円形分水

通潤用水・小笹円形分水

熊本県上益城郡山都町小笹、熊本県道141号(河内矢部線)沿いにあるのが、通潤用水・小笹円形分水(つうじゅんようすい・おざさえんけいぶんすい)。円形分水は、水を公平に分ける円筒分水のことで、小笹円形分水も昭和31年に完成。国宝・通潤橋とともに

岩本橋

岩本橋

熊本県荒尾市上井手を流れる関川に架る石造アーチ橋(眼鏡橋)が岩本橋。藩政時代の岩本番所が廃止された後、阿蘇凝灰岩の切岩を二重にして架橋された石橋で、熊本県の文化財に指定されています。江戸時代に霊台橋、通潤橋など、名橋を築いた八代の石工・橋本

薩摩の渡し

薩摩の渡し

熊本県宇城市を流れる浜戸川に架かるアーチ石橋が薩摩の渡し。薩摩の渡しという名は、街道時代、熊本・八代・水俣を結んだ薩摩往還(薩摩街道)に架橋されていることから。文政12年(1829年)の完成で、種山村(現・八代市東陽町の種山地区)出身の石工

道の駅通潤橋

道の駅通潤橋

放水で有名な石造アーチ型の水路橋、国宝・通潤橋(つうじゅんきょう)見学の拠点となる山都町にある道の駅が道の駅通潤橋。熊本県道180号(南田内大臣線)沿いですが高千穂峡や延岡と結ぶ国道218号、熊本に通じる国道445号の分岐点にも近いので便利

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