木村さんのルーツを探せ!

木村さんと聞いて真っ先に思い浮かべる有名人といえば、SMAPの木村拓哉だが、東京出身。
女優の木村佳乃も東京、銀座の木村屋總本店の創始者・木村安兵衛は婿養子で、奥方の出身は常陸国川原代村(茨城県龍ケ崎市)。
すしざんまい創業社長の木村清は千葉県野田市の出身。
ラーメンチェーン「天下一品」の創業社長・木村勉は京都府の出。
歌手でファッションモデルの木村カエラは、東京都足立区綾瀬の出身。
これでは、ルーツをたどるヒントにはならない。

木村さんのルーツは滋賀県で、紀氏につながる

相撲ファンなら、木村と聞けば、庄之助と答えるだろう。
行司の木村庄之助(現在は37代目)のルーツ、つまりは木村家の創設は寛永年間(1624年~1644年)の松代藩主・真田信之(さなだのぶゆき)の家臣・中立清重だといわれているのだが、一般的な木村姓のルーツははるか昔に遡れる。

まずは、木村氏の血筋は出雲神話から始まる「神氏」(じんし)一族ともいわれているし、木の国・紀伊の古代大姓「紀」氏に因んだ木村氏もあるようだ(紀氏が住んだ村が紀村、転じて木村=古墳がある木村は紀氏由来とも)。

木村さんのルーツとして重要なのは、近江国蒲生郡木村(滋賀県東近江市木村町)発祥の木村氏だろう。
『源平盛衰記』に記される湊川で平通盛を討ち取る木村成綱は、紀朝臣(きのあそん)成高の後裔。
また、同じ紀氏の流れを汲む近江源氏佐々木氏流の木村一族はつとに有名で、佐々木氏のルーツ・佐々木成頼(ささきなりより=源成頼)から6世の佐々木成俊が、近江国伊香(いか)郡木村(現・長浜市)に因んで木村と称したという。
豊臣秀頼を守り、真田幸村らと徳川の大軍に対し力戦奮闘した木村重成(きむらしげなり)や加藤清正の筆頭家老である木村正勝はこの一族の出といわれる。

近江にはもうひとつ、重要な木村さんのルーツが。
近江八幡市安土町常楽寺の木村城跡で、佐々木六角氏の家臣・木村氏の居城。
木村氏は六角氏の被官だったが、織田信長の近江侵攻後(観音寺城落城後)は信長に従った。

中世から近世にかけて栄えた「常楽寺港」と呼ばれた湊(琵琶湖の舟運を利用した)がここにはあったが、常楽寺港舟入跡近くに「木村」と呼ばれる小字が残った畑がある。
ここが木村城(館)跡との推定地で、木村一族は佐々木さんのルーツでもある沙沙貴神社(ささきじんじゃ)の神官を務めていたことがわかっている。
信長に仕え、安土城築城に携わった木村次郎左衛門尉もこの木村氏の一族。
常楽寺の水辺を公園化した常浜水辺公園となっているが、常浜水辺公園の西端に位置する畑が木村城跡(トップの写真は木村城跡)。
実は、銀座の木村屋總本店の創始者・木村安兵衛の母方の木村家のルーツは、ここにたどり着く。

木村城跡

木村城跡

2018年2月19日
常楽寺港舟入跡

常楽寺港舟入跡

2018年2月19日
沙沙貴神社

沙沙貴神社

2018年1月13日

全国に散らばる木村さんのパワースポット

また、下野国都賀(つが)郡木村(現在の栃木県栃木市都賀町木)を発祥とする木村氏は、藤原北家・藤原秀郷(ふじわらのひでさと)の末裔で、足利有綱の五男・足利信綱が木村姓を称したといい、ここから五戸館(ごのへだて=青森県三戸郡五戸町字館)を居館にした木村氏も生じている。

さらに、徳島県麻植(おえ)郡鴨島町山路に、平康頼(たいらのやすより)の流れを汲む木村氏が生まれている。
他にも、紀伊の名族鈴木氏流、古代名族日下部氏流、服部氏流、千葉氏流などがあり、それらの支流もきわめて多い。

広島県竹原市新庄町の安芸木村城も訪ねてみたい城だ。木村城跡は、国道432号線沿いにある和賀神社(小早川神社)の裏山に築かれていて、本丸、二の丸、三の丸にあたる曲輪のほか何段かの曲輪があり、見事な石組井戸が残っている。

安芸木村城
安芸木村城

福島県郡山市にも木村さんのルーツはある。
磐越自動車道の郡山東IC近く、磐越自動車道がすぐ北側に走る小高い古館山に、かつて築かれたのが木村館(福島県郡山市西田町木村)。
戦国時代の山城の跡で、木村の領主・木村越中守の居城。
天正11(1583)年、田村清顕によって攻められ、木村氏は滅亡している。
山頂部の本丸には木村神社があり、本丸北側の物見櫓風展望台が面白い。

神社としては、和歌山県海南市下津町大窪の木村神社は、領主・木村越中守の居城であったといい、御祭神は、宝暦3(1753)年に村人の困窮を救った紀州浅野家の代官・木村八郎太夫を祀る。

茨城県牛久市奥原町の鹿島神社の創建は正保3年(1647年)で、木村氏の氏神。祭神は、武甕槌命(たけみかづちのみこと)。

香川県三豊(みとよ)市の木村神社はいまも「木村さん」と呼ばれて親しまれている。木村神社は、船越八幡神社の境内地に鎮座し、祭神は木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)。

木村姓の家紋は、近江源氏佐々木氏流は隅立て一つ目や隅立て四つ目などの目結、藤原北家秀郷流は左三つ巴や五三桐、他に違い矢、松皮菱、木文字など。
大姓のベストテンに入っているのは、青森(4位)、茨城(6位)、滋賀(8位)、京都(8位)である。

協力/札場靖人(家紋と姓名研究家)

 

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