日本ループ橋総覧(4)雷電廿六木橋

ループ橋は、地形的な要因で生じた高度差を、道路をループさせること克服する橋で、全国各地にあります。埼玉県秩父市、滝沢ダムの建設で水没する秩父往還の架け替え道として造られたのが雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)。ダム湖の湖畔へと続く高度差を巨大なループ橋で克服しています。

4つの賞を受賞した美しい秩父ループ橋

雷電廿六木橋
雷電廿六木橋
巨大な谷に架かる雷電廿六木橋

雷電廿六木橋があるのは、場所は埼玉県の秩父市を流れる中津川の上流部。
平成11年に着工(平成19年に完成)した滝沢ダムの建設で水没する秩父往還(中山道熊谷宿を起点に秩父を通り雁坂峠を越えて甲州に入る旧道=現在の国道140号「彩甲斐街道」)の架け替え道として造られたのが雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)です。

土木学会田中賞(作品部門)、プレストレストコンクリート技術協会作品賞、グッドデザイン賞、日本コンクリート工学協会賞(作品賞)と様々な賞を受賞したループ橋で、「雷電」の名は、奥秩父地方の巨人伝説「でえだんぼう」(ダイダラボッチ伝説)をモチーフに平成10年に創作された『雷電坊物語』に由来。
「廿六木」は、ダム建設により集団移転した廿六木集落に因んでいます。

雷電廿六木橋は、滝沢ダムの工事着工に先立って400m下流に建設を開始。
ダムの上流と下流では125mほどの高低差がありますが、「もとの地形をできるだけ改変しない」ことを目ざして、大きな円を描くループ橋を架橋したのです。

遠くから見るとひとつの巨大な橋のように見えますが、実は大滝大橋(345m)、廿六木大橋(270m)の2つの橋と山を開いたアプローチ道路の3区間で形成されています。
景観に溶け込むように「優美なラインを強調したいことから、全体がひとつの橋に見えるよう景観設計」されているのです。
また「自分で自分の姿が見える橋」というのも設計者の自慢だとか。

設計・建設に携わった大成建設の話では、太さ6.5m、高さ30m~50mの橋脚もスリムに見せるため、下見板風(細長い板を横向きにし少し重なり合うように取り付けたもの)の凹凸を施すことで陰影を強調したそうです。
夜間の照明も従来の支柱型のライトではなく、両側の壁に内蔵されたおしゃれな間接照明が採用というこだわりです。
橋には空中散歩できる歩道も設けられ、歩道途中には展望台もあるので、歩いて渡ることも想定されています。

雷電廿六木橋
滝沢ダムから眺めた雷電廿六木橋
雷電廿六木橋
滝沢ダムのダム湖「奥秩父もみじ湖」
日本ループ橋総覧(4)雷電廿六木橋
所在地 埼玉県秩父市大滝廿六木地先・廿六木向地先
場所 雷電廿六木橋
ドライブで 関越自動車道花園ICから約50km
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
雷電廿六木大橋

雷電廿六木橋

埼玉県秩父市の国道140号(彩甲斐街道)、埼玉県道210号にあるループ橋が雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)。滝沢ダム建設に伴って付け替え工事の際、ダム上下流の高低差120mを克服するために架橋された橋です。廿六木(とどろき)はダム建設・

奥秩父もみじ湖(滝沢ダム)

奥秩父もみじ湖(滝沢ダム)

埼玉県秩父市、荒川水系中津川に建設されたダムが滝沢ダム、ダムによって誕生したダム湖は、奥秩父もみじ湖と名付けられています。滝沢ダムは、荒川の上流部に荒川の治水と東京都・埼玉県への利水を目的に築かれた多目的ダム。埼玉県内最大のダムで、下流

中津峡

中津峡

埼玉県秩父市を流れる荒川水系の一級河川・中津川の生み出した渓谷が、中津峡。旧塩沢地区から中津川地区間の10kmにわたる渓谷で、中津峡(峡谷)と呼ばれるように高度差100mにも及ぶ断崖が続いています。秩父古生層の固い岩盤を、中津川が長い年月を

日本ループ橋総覧(1)河津七滝ループ橋

「ループ橋フリーク」がいるほど、注目を集める存在がループ橋。英語ではspiral bridge、loop bridge、pigtail bridgeが正しい表現ですが、ここでは日本国内一般的な呼称であるループを使います。ループ橋総覧の筆頭は

奥出雲おろちループ橋

日本ループ橋総覧(2)奥出雲おろちループ橋

日本列島には高度差をループ橋で克服する場所が、全国至るところにあります。2回目は日本一の大ループ橋の奥出雲おろちループ橋です。「二重にとぐろを巻く姿がまるでヤマタノオロチ(八岐大蛇)のよう」というのが名の由来で、出雲神話の故郷らしい巨大ルー

音戸大橋

日本ループ橋総覧(3)音戸大橋

日本各地のループ橋を訪ねる日本ループ橋総覧。3回目となる今回は、広島県呉市の音戸の瀬戸に架橋された音戸の瀬戸です。昭和36年架橋の音戸大橋は、架橋当時は有料道路でしたが、昭和49年に無料化。歩道がない、通行量の増加などで平成25年に第二音戸

えびのループ橋(霧の大橋)

日本ループ橋総覧(5)えびのループ橋(霧の大橋)

ループ橋は、高度差をらせん状の道で克服する有効な手段です。九州では巨大カルデラによる高度差をループ橋で克服する場所があります。カルデラ(caldera)とは火山の爆発で生じた凹部のこと。スペイン語で鍋とか釜の意。鍋の縁(へり)の部分の高度差

人吉ループ橋&大畑ループ

日本ループ橋総覧(6)人吉ループ橋&大畑ループ

中九州と南九州を結ぶ幹線国道の国道221号(肥後街道・飫肥街道)。明治10年2月15日、西郷隆盛が交通の難所といわれた雪の加久藤峠(かくとうとうげ)を越え、熊本城の攻略に向かっています。加久藤峠は、加久藤カルデラ外輪山の一部。宮崎県えびの市

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ