松本さんのルーツを探せ!

めでたい木の代表格の松。その「もと」というめでたい名前の松本さんは、全国に約62万人。大姓15位でシェアは0.50%ほど。つまり「のぞみ」号で「松本さんはいませんか?」と声を掛けると6人〜7人が手を挙げる計算に。松本さんのルーツは、信州・松本で決まりといきたいところですが・・・。

松本さんのルーツは松本?

まずは有名人の出身地をチェック。
お笑いコンビ・ダウンタウンの「松ちゃん」こと松本人志は、兵庫県尼崎市出身。
作家の松本清張は福岡県企救郡板櫃村(現在の北九州市小倉北区/出生は広島で出生届が板櫃村)、「マツモトキヨシ」の創業者・松本清は、千葉県東葛飾郡湖北村(現・我孫子市)出身。

嵐の松本潤は東京、松本伊代も東京。
タレント松本明子は、香川県高松市で祖父は初代の丸亀市長。
なんと、誰も信州出身がいません。

松本城は源氏の末流で信濃守護代・小笠原氏が築いた深志城が前身で、小笠原貞慶(おがさわらさだよし)が松本城に改めています。
松本城の歴世の城主は石川、小笠原、松平、堀田、水野、戸田家など。
実は松本さんは登場してきません。

実はこんな古文書が残されています。
──「信濃國筑摩郡松本村発祥 源満快(みなもとみつよし)流伊那為扶(いなためすけ)後裔松本彦太郎公光祖」。
初代の松本氏である松本彦太郎が城を築き、その後、松本氏は松本の地頭となり、国府八幡宮(後の筑摩神社/つまかじんじゃ)の神官も兼ねたというのです。
つまりはこれが信濃源氏・松本氏のルーツというわけです。

保元平治の乱にもこの松本彦太郎が参戦、その後、信濃国筑摩郡松本郷に城を築城しているので、平安時代末のこと。
15世紀には松本兵部丞元実が上杉氏を頼って関東へ移る、さらに松本七郎次郎元吉、戦乱を嫌って伊勢国(三重県)へ去るなどと全国に散っていくのです。

同じ頃、松本忠元が出家して能登国七尾に常通寺を開基。
後裔の松本政能は、近江国大津に生まれ、伊予国周桑郡松尾城主となって豊後守を名乗っています。
伊勢商人・角屋家当主の角屋七郎次郎(かどやしちろうじろう)の本姓は松本。
伊勢国大湊に移住して廻船問屋を開始し、「角屋」と号する商人になり、本能寺の変直後には徳川家康の危機を救い徳川氏の御用商人となって発展しています。

どうやらこの松本が松本さんのルーツのひとつであるといっても間違いではないようです。

筑摩神社(長野県松本市筑摩2-6-1)は、延暦13年(794年)、石清水八幡宮より勧請を受けて創建。平安時代に信濃国府が上田から松本に移ってからは国府八幡宮と称していました。

現存する本殿は、永享11年(1439年)に小笠原政康が再建したもので国の重要文化財。
国宝の松本城天守より古い建築物で、実はこれが松本地方最古の建造物。
筑摩神社は、松本が松本さんのルーツである証なので、松本さんならぜひ参拝したいパワースポットといえるでしょう。

さてさて、天正18年(1590年)に誕生した松本藩の藩庁が松本城。
天守は国宝5天守のひとつですが、その北側に松本神社(松本城主・松平康長を祀る)が鎮座しています。
松本村の誕生は明治22年と案外新しいので、残念ながら松本神社は松本さんのルーツとは関係なく、松本藩の歴代藩主にも松本さんはいません。

筑摩神社・本殿
筑摩神社の本殿

三重県四日市市にも松本さんのルーツが!

ほかに松本さんのルーツは、伊勢国三重郡松本村(四日市市松本)を発祥とする桓武平氏伊勢氏流や近江国滋賀郡松本邑(大津市松本)発祥の佐々木氏流、下総国海上(かいじょう)郡松本邑(銚子市松本)発祥の桓武平氏千葉氏流など多岐にわたっています。

伊勢松本駅近くの松本神社は、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』にもその名が残る松本三郎盛光が築城した松本城の城跡。
松本三郎・四郎・九郎の居城ですが、伊勢は伊勢平氏発祥の地でもあるため、松本城も「三日平氏の乱」など源平の攻防の地となっています。

タレントの松本明子のルーツも実は三重県。
香川出身の彼女は、先祖は三重出身だと聞いていたのですが、NHKのテレビ番組『ファミリーヒストリー』が調べてみると、三重で薬の行商をしていたことが判明。
曾祖父の松本善六は、三重県度会郡滝原村(現・度会郡大紀町)出身。
このように三重県、旧伊勢国は、松本さんにとって重要なルーツとなっているのです。

松本さんは圧倒的に西日本に多い

歌舞伎の初代・松本幸四郎は千葉氏流の松本であり、鹿島神流の松本備前守政信は鹿島神宮の祝部(ほふりべ=神に奉仕する人の総称)。
さらに松本さんは京都伏見稲荷大社や石清水八幡宮、伊勢神宮の社家をはじめ各地の由緒ある大社の神職家にもその名があります。

そんな松本さんは圧倒的に西日本に多いのが特長。
日本を東西に分けて比較すると、西日本では大姓5位(0.64%)となるのが松本さんで、場所によっては松本さんだらけということに。
それでも松本さんが1位、2位、3位という県はなく、4位に熊本県(0.94%)、鳥取県(1.18%)兵庫県(0.79%)、和歌山県(0.77%)、5位に奈良県(0.68%)、大阪府(0.68%)、長崎県(1.04%)が食い込んでいます。

また鹿児島県では松本さんよりもはるかに松元さんが多い土地になっています。

代表家紋は松皮菱と三階松で、作家・松本清張家も三階松。
そのほか、一つ松、立ち若松、花菱、牡丹、釘抜、桔梗、三つ並び矢など。
神職には三つ巴が多いのが特長。

取材・編集協力/札場靖人(家紋と姓名研究家)
人口に関するデータは明治安田生命全国同姓調査による(2018年7月)推計値です

松本さんのルーツを探せ!
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
あなたのルーツ

あなたのルーツはどこの誰!? 大姓11位〜15位【吉田・山田・佐々木・山口・松本】

東海道・山陽新幹線の「のぞみ」は満席なら1300人もの乗客がいますが、〇〇さんと、声をかければ1編成16両で数人が手をあげるのが大姓11位〜15位の吉田さん、山田さん、佐々木さん、山口さん、松本さん。吉田、山田は見るからに田んぼ関連の地形姓

吉田さんのルーツを探せ!

 文字通り実りの良い田んぼを意味する、地形姓(地名姓)の吉田さん。吉田さんは案外多く、全国におよそ84万人、人口の0.68%を占め、日本人の名前の11位を占めています。豊作を祈願する縁起のいい名ということもあり、全国に広まったのか

山田さんのルーツを探せ!

全国12位、シェア0.65%の大姓が山田さん。山田さんのお仲間は全国に82万人を数え、山田太郎さんだけでも全国に200人ほど暮らしています。山田姓は典型的な地形姓で山の中を耕作して田んぼを開いたことに由来する名前です。文部省唱歌『案山子』の

佐々木さんのルーツを探せ!

佐々木さんは全国13位の大姓で、全国に70万人ほど、シェア率0.55%を誇っています。『鎌倉殿の13人』に登場した佐々木一族は、近江の出で、「元近江の豪族」と解説されていましたが、実は古代豪族がルーツ。というわけでそのルーツの地もピンポイン

山口さんのルーツを探せ!

全国47都道府県と同じ名前を持つ苗字はどのくらいあるのだろうか。石川さん、宮崎さん、千葉さんもいらっしゃるが、なんといっても多いのが山口さん。14位の大姓で、65万人(0.51%)の山口さんが暮らしています。地形姓としては聖なる山の入口を守

斎藤さんのルーツを探せ!

斎藤さんは、大姓16位で全国に60万人(0.48%)ほどだと推測され、目下ほぼ同数の井上さんと微妙な順位争いに(調査によってはもう少し下位の場合も)。その斎藤さんは、なかなか名門で斎藤の藤は、佐藤さん、加藤さん、伊藤さんと同じ、藤原姓で、そ

井上さんのルーツを探せ!

井上さんは、全国に60万人前後暮らしていて(国民の0.48%)、17位の大姓です。かつて、井戸というものは重要な生活拠点で、これを管理する職業の人が「井氏」。さらに、井戸の上手の場所に住む井上地区、井戸の下手の井下地区という地名から、それぞ

木村さんのルーツを探せ!

木村さんは大姓18位、56万50000人程度と推測され、国民の0.46%という数字です。「樹木が生い茂る村」を意味するので、集落周辺に森や林がある土地は身近にあり、有名人も多いことからもっと上位のイメージもあります。ただし、紀氏が住んだ村が

林さんのルーツを探せ!

林さんは大姓19位で、全国に53万6000人ほどが暮らしていると推測されます(国民の0.44%)。林とは文字通り木の茂っている所を指す言葉で、全国には大字(おおあざ)以上の林が30ヶ所以上もり、そのため、林姓も各地から発祥しています。林さん

清水さんのルーツを探せ!

清水さんは大姓20位で、全国に52万人ほどの清水さんが暮らしています。国民に占める割合は0.43%ほど。清い水の湧く所を意味する地形姓で、静岡市清水区(旧清水市)のように地名になった場所も多数。その清水を守る役割を担ったであろう清水さんのル

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!

よく読まれている記事

こちらもどうぞ