中島さんのルーツを探せ!

あなたが中島さんで、「なかしま」と濁らずに発音するのだったら、出身地は愛知県かあるいは九州、少なくとも西日本だろう。関西出身であれば、多分、中嶋と山偏の嶋を書くんではないだろうか?

全国に42万人近くいると推測される中島さんだが、もっとも有名なのは中島みゆきだろうか。本名は中島美雪。祖父の中島武市は、帯広では著名で帯広商工会議所会頭、帯広市議会議長などを歴任している。その中島家だが出身は岐阜県本巣郡土貴野村(現在の岐阜県本巣市)。先祖は大垣の藩士だったようだ。「全国まずいもの連盟」会長で小説家、戯曲家、随筆家、俳優、コピーライター、広告プランナー、ミュージシャンと幅広く活躍する中島らもは、本名中島裕之で兵庫県尼崎市出身だ。
年配の人なら中島知久平(なかじまちくへい)をご存じかもしれない。中島飛行機(のちの富士重工業)の創始者で、群馬県新田郡尾島村押切(現在の群馬県太田市押切町)の生まれ。

まずは中島さんの重要なルーツ、愛知県稲沢市へ

さてさて、そんな中島さんのルーツ探しの旅に出かけよう。まずは尾張国の国府があった愛知県稲沢市へ。
天下の奇祭『国府宮(こうのみや)はだか祭り(儺追神事)』は有名だ。だが、通称、国府宮と呼ばれる尾張国の総社「尾張大國霊神社」(おわりおおくにたまじんじゃ)から800m北、名鉄線の線路の西近くにある式内社の久多(くた)神社を知る人は少ない。愛知県稲沢市稲島町石畑、かつての尾張国中島郡(注・中島郡は安土・桃山期に尾張国中島郡と美濃国中島郡に分かれた)に鎮座する久多神社は、中島直(本家)、海部直(分家) を氏祖とする中島氏一族を祀っているのだ。悠久の歴史を今に伝える尾張の中島氏は、実は古代日本の大部族のひとりなのである。
古代の尾張国の中心が、中島郡。かつて久多神社の建つ地あたりにに尾張地方最古の寺院の一つ、白鳳時代創建の東畑寺があったという。
『国府宮記』よれば尾張大國霊神社(国府宮)は、中島直、海部直の一族が創祀したものという。地名の中島郡(なかしまのこおり)も「なかしま」と古音の清音で呼んでいる点に注目を。

尾張大國霊神社(国府宮)
尾張大國霊神社(国府宮)

さらに、尾張国中島郡中島(愛知県一宮市萩原町中島)にあった中島城は、鎌倉時代から戦国時代にかけて栄えた嵯峨源氏の末流中島氏の居城。が、この中島氏はやがて斯波氏や織田信長などに所領を奪われ、室町時代末に廃城となる。その後、中島氏は豊臣秀吉の家臣となり、中島氏種(なかしまうじたね)は大坂城に移り大坂七手組頭に任じられ、大坂夏の陣において奮戦するが落城を待たず自刃。この一族は全国に四散して中島姓を広げたという。大阪・枚方で江戸時代に栄えた旧家、中島九右衛門(なかしまくえもん)は、この中島氏種の子孫にあたる。
下の地図で中島小学校の南側一帯が中島城跡だが、とくに遺構は残されていない。

その他、古代の中島姓の発祥地としては、信濃に分布する諏訪神家を発祥とする滋野氏族、山城国の中島県主(あがたぬし)の鴨氏一族、清和源氏小笠原氏流伴野氏族などがある。戦国時代の中島氏としては播磨国佐用郡中島(兵庫県佐用郡佐用町中島)を発祥とする赤松氏族、また、因幡、備中、土佐などの中島氏もそれぞれの城に拠って活躍している。

ペリーに対面の中島三郎助も中島さんのルーツ

近世に名を馳せた中島氏としての代表として、江戸時代に、代々、相模国の浦賀奉行所で与力を勤めた中島氏がいる。黒船が浦賀沖に来航した際に、浦賀奉行所を代表して応接掛与力として最初にペリーとの交渉を試みたのは、この与力一族の中島三郎助永胤(なかじまさぶろうすけながたね)であった。永胤は、戊辰戦争で榎本武揚に従って箱館(函館)に転戦、大鳥圭介の撤退命令にも従わず、新政府軍の総攻撃を迎え撃って戦死する。墓は、浦賀港を見下ろす東林寺にある。この中島三郎助永胤も先祖は豊臣秀吉に仕えた中島氏種という。

城として現在まで名を馳せているものは、前出の愛知県一宮市の中島城の他は、大阪市淀川区の中嶋城、因幡中島城、近江中島城、三河中島城、備前中島城など多彩。また、美濃今尾城(岐阜県海津市平田町今尾)は、文明年間に中島重長によって築かれ、中島氏は4代にわたって居城したが、織田信長に攻められ滅亡した。
大阪市淀川区の中嶋城(堀城)は今の十三公園の東部。北野高校前交差点一帯と推測されている。

興味深いものとして、伊万里市にある伊萬里神社の社殿の隣に、歴史は浅いが、お菓子の神様、田道間守(たじまもり)を祀る中嶋神社がある。
垂仁天皇の命を受けた田道間守は、大陸から「非時香果」(ときじくのかぐのこのみ=柑橘類の一種。橘とも)の実を持ち帰り、伊万里に植えたと伝えられる。
兵庫県豊岡市の中嶋神社など田道間守命を祀る中嶋神社は各地に鎮座している。

中島姓は佐賀で大姓5位、群馬で9位、全国的には関東、東海、九州に多く分布している。
家紋は、筌(うけ)、九曜巴などという珍しいものや、亀甲に剣花菱、亀甲に二つ引両、団扇、三つ左巴、花沢瀉(おもだか)、六連銭、丸に桔梗など。小笠原氏系は九曜巴、羽団扇、三つ左巴、滋野系は花沢潟が多い。

 

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