大姓53位の小野さんは全国に29万人ほどが暮らし、シェアは0.23%ほど。歴史的には小野妹子(おののいもこ)、小野小町(おののこまち)、三跡のひとり小野道風(おののみちかぜ)、小野篁(おののたかむら)と飛鳥時代から平安時代の有名人がずらり。実はルーツ探しにはこの有名人がヒントに・・・。
近江・大津は小野さんのルーツ探しの筆頭
──山城国愛宕郡(おたぎぐん)小野(現・京都市左京区上高野)や山城国宇治郡小野(現・京都市山科区小野)は、後に遣隋使の小野妹子(おののいもこ)を輩出した小野氏の発祥地ですが、一族は後に近江国滋賀郡小野(滋賀県大津市小野)に移り住み、小野妹子もこの近江国滋賀郡小野で生まれたと伝えられているのです。
琵琶湖の西岸、JR湖西線・和邇駅(わにえき)から小野駅一帯にかけて、小野氏に関係する重要な遺跡が残されています。
和邇川沿いに湖西線を越えて行くと、やがて参道と鳥居が見え、鳥居をくぐれば欝蒼とした木立のなか、小野妹子の子孫で平安前期屈指の学者・歌人・官人であった小野篁(おののたかむら)を祀る小野篁神社(おのたかむらじんじゃ)に到着します。
小野篁は昼は朝廷の官人ながら、夜は冥官として地獄の閻魔大王に仕えていたといわれ、夜ごと井戸から地獄に通ったのだとか。
京都の六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)にその井戸が残されています。
小野篁神社の左手奥には、玉垣に囲まれた小野神社本殿が鎮座。
小野神社は小野妹子の出生地と推測されている神社で、祭神は小野妹子の祖先である米餅搗大使主命(たがねつきのおおおみのみこと)。
名前が米餅搗というだけあって、日本で初めて餅つきをした人物として知られ、また、菓子づくりの神様としても崇められています。
小野神社から南に行くと、小野篁の孫にあたる小野道風の小野道風神社が。
小野道風神社に向かう途中に石神古墳群があり、和邇川を越えた北には小野天皇社が鎮座。
さらに南に歩けば、住宅街に小野妹子神社と唐臼山古墳(からうすやまこふん)があると、なにやら小野さんだらけといった感じです。
唐臼山古墳の墳丘は流失し、破損した7世紀前半の石室が露出しています。
小野妹子の墓という説もありますが、定かでなく、大津市歴史博物館も「可能性は低い」としています。
小野妹子は遣隋使となり「日出ずる国の天子 日没する国の天子に書をいたす」と記された国書をもって渡海。
つまりは日本最初の重要な使命を有した外交官ということで、小野妹子神社にはこれにあやかろうと外交官、駐在員の参拝が多いのだとか。
小野さんなら、小野神社、そして小野妹子神社は必踏の地といえるでしょう。
小野さんのルーツを探し、小野小町ゆかりの地へ
この地には小野妹子、小野篁、小野道風という錚々たるメンバーが揃っているのですが、もう一人忘れちゃいませんかという人物が、ご存知、小野小町(一説には小野篁の娘とか)。
京都府京都市山科区小野御霊町にある真言宗善通寺派の大本山の随心院は、小野小町ゆかりの寺として有名。
随心院が建つのが小野で、一帯は小野一族が栄えた地。
小野小町もこの小野で生まれ、宮中に務め、晩年は再び小野で暮らしたとされています。
小野小町の邸宅跡の井戸という化粧井戸があり、『都名所図会』にも記される昔からの名所です。
小野小町の生誕伝説がある地域は、この随心院の建つ、京都市山科区小野御霊町のほかにも、秋田県湯沢市小野、宮城県桃生郡鳴瀬町、福島県小野町、彦根市小野町、福井県越前市、熊本市北区植木町小野など全国に点在。
誕生地が多彩ならば、終焉の地も色々あり、全国に小町の墓やら小町塚、供養塔が残されています。
さすがは絶世の美女といわれただけあって、伝承地も数多くあります。
滋賀県大津市大谷の月心寺の「小野小町百歳像」(小野小町作という乾漆の像)や、京都市左京区静市市原町の小町寺(補陀洛寺)に残る「小町老衰像」(小野小町が晩年をこの地で過ごしたという伝説に基づいて、造立されたと)もユニークで、ともに美人のイメージのない最晩年の小野小町の像です。
奈良県天理市には小野妹子の孫の小野毛野(おののけぬ=飛鳥時代から奈良時代にかけての公卿)が建てたという願興寺跡があります。
小野さんは大分県に多い
小野篁の裔(えい=子孫)には、武蔵七党の横山党・猪俣党があり、ほかに、常陸国那珂郡小野発祥の小野氏や、陸奥守の小野氏、塩釜社の小野氏、岩代国田村氏流の小野氏、陸前国清和源氏斯波氏流の小野氏、桓武平氏江戸氏流の小野氏、出羽・越後・下野日光・武蔵国・出雲国の小野氏などがあります。
小野さんは、古代に鍬が入り、早くに開拓された小さな野という意の地名をルーツにする地形姓ですが、小野さんが暮らしたことから小野という地名が生まれた場所もあるので、それほど古代から小野さんは闊歩していたということに。
小野さんはとくに大分県で大姓3位と圧倒的に多く、岡山県(11位)、東国では福島県(18位)などの東北南部にも多いのが特長。
代表家紋は梶の葉。
ほかに、左万字、笹の丸、雪持ち笹、柏、鷹の羽、二つ引両、三つ巴、立ち木瓜(もっこう)、丸に橘、茗荷、五三桐など。
取材・編集協力/札場靖人(家紋と姓名研究家)
人口に関するデータは明治安田生命全国同姓調査による(2018年7月)推計値です
小野さんのルーツを探せ! | |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |
最新情報をお届けします
Twitter でニッポン旅マガジンをフォローしよう!
Follow @tabi_mag